新型コロナ発生から1年――。関連する経営破綻は1000件に達し、解雇された人の数は8万4883人(厚労省発表2/1時点)に上る。その波は正社員にも及び、東京商工リサーチの調査によれば、’20年に早期退職希望を募った企業は93社と前年比で2.6倍に増加。コロナを旗印に強行される組織改革で、サラリーマンの社内サバイバルは激化。中高年会社員が苦境に立たされている状況を、専門家に解説してもらった。
3/5/2021
約7割が「定年まで働けない」と回答。ジョブ型雇用で中高年会社員は苦境に
撮影/杉原洋平
働き盛りであるはずの40~50代会社員の約7割が「定年まで会社で生き残れない」と感じている――。
週刊SPA!が実施した全国の40~50代会社員3000人アンケートのQ1「定年まで働くのは難しくなったと感じる?」の回答結果は驚くべきものだった。「はい」という答えが7割近くにも上ったのだ。
アンケート/パイルアップ
その理由(Q2)を紐解くと「業績の悪化」(54.3%)が最も多く、コロナ禍の影響を色濃く感じさせる結果となったが……。
「注目すべきは2位の『年功序列の廃止』(25.1%)です。働き方改革を推し進めていた企業に新型コロナが直撃。いよいよ抜本的な組織構造改革が必要になり、ジョブ型雇用の採用や管理職削減に舵を切る企業が増えているんです」
「業績の悪化」と回答した人が半数を超え、コロナ禍の厳しさを如実に表している アンケート/パイルアップ
そう語るのは、組織・人事戦略コンサルタントの麻野進氏だ。 ジョブ型雇用とは、取り組むべき職務内容(ノルマ)を明確に定義し、労働時間ではなく“成果”に応じた報酬が支払われる雇用形態のこと。バブル崩壊後も日本企業に根づかなかった欧米型の成果主義だが、今回のコロナで年功序列制度からシフトする勢いだ。 「日立製作所や富士通などの企業がすでにジョブ型への転換を表明。このトレンドは中小企業にも広まると考えられます」(麻野氏)
コスト競争にさらされ続けた企業が、いよいよ人材を抱えられなくなっている
勤続年数や役職にかかわらず、定められた職務できちんと成果を出せば報酬が得られる一方、ノルマ未達や貢献度不足という基準が明確化されるため、これまで年長者というだけで給与が約束されていた中高年会社員は給与減や、最悪の場合リストラに遭う。
ジョブ型雇用を取り入れた金融系の企業人事担当者は、企業側の思惑について匿名でこう明かす。
「年功序列は会社の成長拡大が前提の制度。この状況下で続けていくのは難しい。ただでさえ政府から『70歳まで雇用を守りましょう』とお達しが出ていて、どこかでコストカットしないと経営を維持するのに必要な人材の雇用さえ守れなくなってしまいます」
ジョブ型雇用の推進は、コスト競争にさらされ続けた日本企業が、いよいよ人材を抱えられなくなっていることを表しているのだ。
リモートワーク定着で発生した「管理職不要論」
そして、もうひとつ今の労働市場でトレンドなのが、Q2で3位に入った「管理職の削減」(17.3%)だ。今年1月、NHKが50代を対象に管理職3割削減を発表し、組織の最適化を目指すとした。
FeelWorks代表で人材育成のプロ、前川孝雄氏はこう語る。 「コロナ禍において最も働き方の変革を突きつけられたのが管理職。リモートワークが一気に普及し、職場で部下に命令し、サボらないか監視していただけの管理職は『いなくても大丈夫だな』とメッキがはがれてしまいました。
前述のジョブ型雇用と相まって、人と組織を生かすプロの管理職になれない40~50代は、企業のコストカットの標的にされています」
コロナで加速した社内サバイバル。会社員にとってかつてないほど厳しい闘いが巻き起こっている。 (アンケート調査期間:2021年1月25日~2月1日)