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19世紀のあたりまえ「ノアの洪水の証拠がある」「全生物は神の創造物だ」…じつは科学が示した真実に、賛成したのも反対したのもキリスト教徒だった

2025年04月06日 10時03分15秒 | 科学のはなし
 
 
19世紀のあたりまえ「ノアの洪水の証拠がある」「全生物は神の創造物だ」…じつは科学が示した真実に、賛成したのも反対したのもキリスト教徒だった(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース 
 
 
 
19世紀のあたりまえ「ノアの洪水の証拠がある」「全生物は神の創造物だ」…じつは科学が示した真実に、賛成したのも反対したのもキリスト教徒だった
3/7(木) 6:43配信




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現代ビジネス
科学者と聖職者の対立、じつは「正しくない」
illustration by gettyimages


 欧米でも日本でも、科学とキリスト教は対立してきた、というイメージが強い。そして、ダーウィンが生きていた19世紀のイギリスは、両者が対立していた典型な時代とされることも多い。ところで、そういうイメージは本当に正しいのだろうか。


【画像】まさか「こいつの子孫がクジラにつながる」とは…驚愕のクジラの始祖の姿


 たとえば、「大洪水の地質学的な証拠はノアの洪水を示している」とか、「すべての生物は神の創造物であって進化などしない」とかいった考えは、19世紀のイギリスではありふれたものだった。


 しかし、これらの主張を攻撃したのは科学者で、擁護したのがイングランド国教会の聖職者だった、というイメージは正しくない。実際には、これらの主張を攻撃したのも擁護したのも、イングランド国教会の聖職者だったのである。


ペイリーの『自然神学』
左・ウィリアム ペイリー(National Portrait Gallery)、右・『自然神学:自然界に観察される神の存在と特性についての証拠』のタイトルページ(1802年、アメリカ版、Philadelphia)

 

 ウィリアム・ペイリー(1743~1805)は、イギリスのノーサンプトンシャーで生まれた。父親が校長をしていたグラマースクールで学んだ後、ケンブリッジ大学のクライスツカレッジに入学し、1763年に優等卒業試験の最優秀合格者として卒業した。そして、1765年以降は、イングランド国教会のいくつかの聖職を歴任することになる。


 ペイリーにはいくつかの著作があるが、どれも明瞭でわかりやすいことで知られている。もっとも有名なのは1802年に出版された『自然神学:自然界に観察される神の存在と特性についての証拠』である。


 この本のタイトルになっている自然神学と言う言葉は、時代や場所によって少し意味が変わるのでややこしいが、19世紀のイギリスでは「理性や自然の事実に基づく神学」という定義でよいだろう。このペイリーの著作は、自然神学の標準的な教科書となり、ダーウィンをはじめ多くの著名人に大きな影響を与えたのである。


 この『自然神学』の冒頭には、有名な「時計の比喩」が書かれている。それはだいたい次のような内容である。


この世界は誰がデザインしたのか…造物主としての神
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野原に転がっている石について、どうしてそこに石があるのかと問われたなら、ずっと前から、ただそこにあったのだろうと答えるかもしれない。しかし、野原に時計が落ちているのを見つけたときには、そうは答えないだろう。なぜなら、時計の内部には、精密に作られた歯車やバネがあって、それらが複雑に組み合わされているからだ。時計は、あきらかに時を刻むという目的のためにデザインされている。つまり時計をデザインした者がいたということだ。
(『自然神学:自然界に観察される神の存在と特性についての証拠』William Paley著、筆者要訳)
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 そして、自然に目を向ければ、生物の眼や体の作りなど、特定の目的のためにデザインされたとしか考えられないものがたくさん存在している。しかも、自然界のデザインは測り知れないほど偉大で豊富である。こんなことを成し遂げたデザイナーは神しか考えられない、とペイリーは言うのである。


 もっとも、この「時計の比喩」はペイリーのオリジナルではない。共和制ローマの哲学者、マルクス・トゥッリウス・キケロ(紀元前106~紀元前43)や、イギリスの博物学者、ジョン・レイ(1627~1705)や、気体の体積と圧力は反比例するというボイルの法則で有名な化学者、ロバート・ボイル(1627~1691)なども「時計の比喩」を使っている(ただし、キケロの場合の時計は日時計や水時計である)。それでも、「時計の比喩」といえばペイリーが有名なのは、文章がうまくて印象的だったからだろう。


 このような、生物に見られる合目的的なデザインの他に、アイザック・ニュートン(1642~1727)によって示された天体の秩序だった運動なども含めて、造物主としての神の存在を感じる人が、当時のイギリスには多かったのである。
 
 
ノアの洪水伝説と地質学
ウィリアム・バックランド。肖像画かT. フィリップスの肖像画をS. カスンズが銅版画にしたものとされる photo by gettyimages


 19世紀のイギリスでは、地質学が盛んであった。最初はドイツやフランスの地質学に遅れを取っていたものの、1840年ごろからは世界の地質学をリードするようになった。このようなイギリスの地質学の基礎を築いたのが、ウィリアム・バックランド(1784~1856)だった。


 バックランドはイギリスのデヴォンで生まれ、オックスフォード大学のコーパス・クリスティ・カレッジで学んだ。それから、バックランドは同大学で教鞭を取るようになったが、後にはロンドン地質学会の会長も務め、また、ダーウィンの番犬といわれたトマス・ヘンリー・ハクスリー(1825~1895)と論争したことで有名なサミュエル・ウィルバーフォース(1805~1873)の後任としてウエストミンスター寺院の首席司祭にも就任した。


 バックランドは地質学によって神の英知が証明されるという自然神学の立場から講義を行った。オックスフォードの宗教教育に、地質学が役に立つと考えたのである。


 バックランドが重視したのは大洪水であった。彼は地質学的な証拠から、過去に世界的な大洪水があったという仮説を立て、それをノアが箱舟を作ったときの大洪水と解釈した。


 ところが、一つ困ったことがあった。


天地創造の6日間を何百万年の何百万倍も延ばした
イクチオサウルスの化石 photo by gettyimages


 それは大洪水の堆積物の中に、人骨が見つからなかったのである。


 もしも悪い人々を滅ぼすために神が大洪水を起こしたのであれば、その堆積物からたくさんの人骨が見つかるはずだが、いくら探しても見つからなかったのだ。


 そこで、バックランドは仮説を修正せざるを得なかった。彼の発見した世界的な大洪水は、ノアの伝説における大洪水ではなかったと結論し、人間はこの大洪水の後に創造されたと結論したのである。


 一方、バックランドは、中生代に栄えた魚竜のイクチオサウルスや恐竜のメガロサウルスを研究したことでも知られる。つまり、現在では存在しない生物がさまざまな生物が、人類の誕生よりはるか昔に生きていたというわけだ。


 しかし、聖書の『創世記』では、世界は6日間で作られたという。


 これでは、あまりに短いので、バックランドはこの部分の解釈を変えて、長い時間を捻出している。たとえば、「始めに神が天地を創造された」という一つの文が示している時間はとても長く、何百万年の何百万倍もの時間を表している、などと解釈したのだ。


 この解釈はバックランドのオリジナルではないけれど、バックランドの著作によって広く知られるようになったのである。


 19世紀のイギリスの地質学者の多くは自然神学者でもあったので、地質学の知見に矛盾しないように聖書を解釈した。


 しかし、その一方で、聖書を文字通りに解釈する人々もおり、そういう人たちはバックランドの地質学を容認することはできなかった。
 
 
激しさを増す聖職者の対立と、『種の起源』出版
『種の起源』(初版本、1859年 、ケンブリッジ大学セントジョーンズ校)


 もっとも激しくバックランドを攻撃したのは、ヨーク大聖堂の首席司祭ウィリアム・コウバーン(1773~1858)であった。彼はバックランドを名指しで非難するパンフレットを何度も刊行している。


 こういう状況の中で、進化論を主張するダーウィンの『種の起源』が1859年に出版された。



 ダーウィンの『種の起源』には、最初の生物は神が創ったと書かれている。したがって、『種の起源』も自然神学書と考えてよいだろう。


 しかし、ペイリーの『自然神学』とは結論がまったく異なる。


 生物の多様なデザインは、ペイリーは神が創ったと解釈したが、ダーウィンは進化によって作られたと解釈したのだ。


『種の起源』はいかに受け入れられたのか
ハクスリーと進化論争を繰り広げたサミュエル・ウィルバーフォース photo by gettyimages


 この『種の起源』は、大きな反響を呼び起こした。さきほど言及したサミュエル・ウィルバーフォースのように、批判した人もたくさんいた一方で、支持する人も結構いたのである。


 オックスフォード大学の教授で物理学者であったベイデン・パウエル(1796~1860)はデザイン論を否定して、自然の普遍的秩序に基づく自然神学を主張した。そして、イングランド国教会の牙城であるオックスフォード大学の中で、『種の起源』を支持したのである。


 また、イングランド国教会の司祭であり、後にケンブリッジ大学の教授となったチャールズ・キングズリーも『種の起源』を高く評価したことで知られている。


 つまり、『種の起源』を攻撃した人も擁護した人も、その大部分はイングランド国教会の聖職者だったのである。


更科 功(分子古生物学者)


 
 
 
 
 
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宇宙に始まりはなく過去が無限に存在する可能性が示される>改訂版

2025年04月06日 00時03分21秒 | 科学のはなし




宇宙に始まりはなく過去が無限に存在する可能性が示される - ナゾロジー (nazology.net) 

2022.07.19 TUESDAY
2021.10.14 THURSDAY


宇宙に始まりはなく過去が無限に存在する可能性が示される


宇宙はビッグバンによって始まり、それ以前は「無」だったというのが現在の定説となっています。
けれど、もしかしたら私たちの宇宙は常に存在していて始まりはなかった可能性が、新たな量子重力理論によって示されました。
イギリス・リバプール大学(University of Liverpool)の研究チームは、因果集合理論(causal set theory)と呼ばれる量子重力の新しい理論を使い、宇宙の始まりについて計算したところ、宇宙に始まりはなく無限の過去に常に存在していたという結果を得ました。
この結果に従うと、ビッグバンは宇宙が遂げた最近の進化の1つでしかないということになります。
この研究成果は、2021年9月24日にプレプリントサーバー『arXiv』で公開されています。




ナゾロジーチャンネル動画公開中
地球上で最も長く姿を変えずに残り続けている生物種とは?






目次
  • 物理学が未だに説明できていない問題
  • 時間と空間とはなんなのか?
  • ビッグバンは通過点に過ぎない



物理学が未だに説明できていない問題

現在、物理学にはまったく異なる2つの理論が存在し、どちらも大きな成功を収めています。

その2つの理論とは、量子力学と一般相対性理論です。

量子力学は、自然界を支配する4つの基本的な力のうち、3つの力(電磁気力、弱い力、強い力)を微小な世界で記述することに成功しました。
ただ、重力についてはまだうまく説明することができていません。

一方、一般相対性理論は、これまで考案された中でもっとも強力で完全な重力の記述方法です。

しかし、一般相対性理論にも不完全な部分があり、この世界で2つのポイントについてだけ理論が破綻しています。

それが「ブラックホールの中心」と「宇宙の始まり」です。

ここについては、一般相対性理論でも計算が破綻してしまい、信頼できる結果を得ることができません。

そのため、これらの領域は「特異点」と呼ばれていて、現状の物理理論が及ばない時空のスポットとされています。

これは、一般相対性理論が数学的につまづいているポイントでもあります。


ブラックホールの質量は時空の曲率が無限大になる特異点に集中している / Credit:京都産業大学,Catch Up WORLD

この2つの特異点で、一般相対性理論がうまく機能しない理由は、この場所では重力が非常に小さなスケールで非常に強くなっているためです。
一般相対性理論はマクロな世界を記述する古典物理学の理論のため、微視的な世界の重力をうまく取り扱うことはできていません。

一般相対性理論は重力を時空の曲率として表現しています。
投げたボールが地面に落ちるのは、地球が歪めた空間に沿って、ボールが軌跡を曲げ、それが地面と交わるためです。

しかしあまりに微視的な世界では、空間が歪むだけでは重力を記述できません。アインシュタインも生涯この問題に悩んでいました。
そのため、この微視的な世界の強い重力を記述するための新しい理論が必要となります。

そこで、現在考えられているのが「量子重力理論」です。
ただこの理論も「超ひも理論」や「ループ量子重力」など、さまざまな候補が存在していますが、まだ完成されていません。

しかし、そのすべてが同じような方向から問題のアプローチをかけています。
それが「時間と空間というものがなぜ存在するのか?」「どこから生じているのか?」「そもそも時空のもっとも基本的な構造とはなんなのか?」ということです。

量子重力理論を考えたとき、いずれの候補理論も、時間と空間がもっと根本的な何かから生じているということを考慮しないとうまく話が進まないのです。

そして、この疑問に対処する、新しいアプローチが登場しています。
それが「因果集合理論」です。


時間と空間とはなんなのか?

今回の研究チームの一人、英国リバプール大学の物理学者ブルーノ・ベントー氏は時間の本質について研究を行っています。
彼は宇宙の始まりを考えるという今回の研究において、「因果集合理論」と呼ばれるものを採用しました。

あまり聞き馴染みのない理論ですが、「因果集合理論」とはどのような理論でしょうか?

現在の物理学では、時間や空間はなめらかに連続した布のようなものとして捉えられています。

こうした連続した時空では、2つの点は空間的に可能な限り近くに存在し、2つの事象は時間的に可能な限り近くで発生します。
しかし、「因果集合理論」では空間と時間をなめらかな連続につながったものとは考えていません。

この理論では、時空を極限まで分解していくと原子のような離散的(飛び飛びの値で変化する)な塊になると解釈しています。

つまり、時空には最小の基本単位が存在するというのです。

映像が小さな画素の集合であるように、時空間も最小単位が因果で結ばれた集合かもしれない / Credit:canva

今この記事を読んでいる画面も、なめらかな一枚の画像に見えるでしょうが、当然虫眼鏡などで拡大すれば、それは小さな1ピクセルの画素が並んでいるものだとわかります。

空間も同様に分割されていて、その最小単位以上にはお互い近づくことができないかもしれないというのです。


この考え方の何が重要なのかというと、この理論に従った場合、ビッグバンやブラックホールのような特異点の問題がきれいに取り除くことができるからです。

なぜなら、この理論では時空を無限に小さく圧縮することが不可能だからです。

時空には最小単位の「時空の原子」があり、その大きさを超えて小さくなることはありえないため、特異点が存在しなくなるのです。
では、ビッグバンに特異点がない場合、宇宙の始まりはどのようなものになるのでしょうか?


ビッグバンは通過点に過ぎない

ベントー氏は、因果集合理論が宇宙の最初の瞬間をどのように表現するか、インペリアル・カレッジ・ロンドンのスタブ・ザレル氏と共同で研究を勧めました。

従来の因果集合理論では、因果集合は無から生じて現在の宇宙まで成長したとされています。

しかし、彼らは、そもそも因果集合に始まりが必要かどうかということを検討しました。

すると、彼らの研究では、因果集合は過去に向かって無限に続き、常に前に何かがある状態となり、ビッグバンという始まりは存在しないことがわかったのです

彼らの理論によれば、私たちがビッグバンと認識しているものは、この常に存在する因果集合の進化における特定の瞬間に過ぎず、真の始まりではなかった可能性があるとのこと。

ビッグバンは進化の通過点に過ぎず、宇宙の過去は無限に続いている可能性がある / Credit:NASA,ナゾロジー編集部

ただ、この理論はまだ少数の物理学者が注目する理論でしかなく、論文も査読付き科学雑誌への掲載はまだ決まっていません。

宇宙の過去が無限にあるということが、物理的に何を意味しているのかも、まだよくわかりません。

とはいえ、宇宙に始まりがないということは、少なくとも数学的には可能なことなのです。







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『頭脳流出』を逆転させるチャンス!>トランプ米政権に不満の研究者を採用へ 独政府に学者ら提言

2025年04月02日 23時03分38秒 | 科学のはなし


米国の「研究と学問の自由の世界的な中心地としてのかつての揺るぎない評判に亀裂が生じ始めている」として、「ドイツと欧州は今、『頭脳流出』を逆転させ、世界クラスの研究者を自国の機関に迎えるチャンスがある」と述べた。



トランプ米政権に不満の研究者を採用へ 独政府に学者ら提言(AFP=時事) - Yahoo!ニュース 



トランプ米政権に不満の研究者を採用へ 独政府に学者ら提言
4/2(水) 9:19配信




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AFP=時事
米ニューヨーク市のコロンビア大学のキャンパスで行進する親パレスチナ派のデモ参加者(2024年10月7日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News


【AFP=時事】ドイツの経済学者たちは1日、同国政府に対し、ドナルド・トランプ大統領の政策に不満を持つ米国在住の研究者を対象とした採用活動を呼び掛けた。欧州の主要経済国であるドイツが「頭脳流入」の恩恵を受けることができるとしている。


【字幕】仏政治家「自由の女神像返せ」 米国はもはや価値観体現せず


著名なキール世界経済研究所のモリッツ・シュラリック所長ら8人が独誌シュピーゲルに寄稿し、現在米国を拠点とする優秀な学者のために独国内で最大100の教授職に資金提供するよう政府に求めた。


学者たちは米政府が学問の自由を損なっていると非難し、コロンビア大学とジョンズ・ホプキンス大学での資金削減や「学生の強制送還の脅威」を指摘した。


米国の「研究と学問の自由の世界的な中心地としてのかつての揺るぎない評判に亀裂が生じ始めている」として、「ドイツと欧州は今、『頭脳流出』を逆転させ、世界クラスの研究者を自国の機関に迎えるチャンスがある」と述べた。


トランプ政権は特に、ガザでのイスラエルとハマスの戦闘に抗議する大規模デモが行われた機関を標的にしており、数百人の学生が親パレスチナのデモに関与したためにビザを取り消された。【翻訳編集】 AFPBB News





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おまじない」「迷信」女性が非科学的な物事を信じるのは男性より直感を信頼しているためという研究結果 コロンビア大学

2025年04月01日 09時02分36秒 | 科学のはなし
おまじない」「迷信」女性が非科学的な物事を信じるのは男性より直感を信頼しているためという研究結果 コロンビア大学
 
研究はコロンビア大学のサラ・ウォード氏らによるもので、
 
論文はJournal of Research in Personalityの2020年6月号に掲載されました。
 

合計2545人の被験者を対象にして行われた4つの実験により、

1:女性は男性に比べ、非科学的なものを信じる傾向がある。
2:女性は男性と比べて直感を信頼している傾向があり、認知反射テストのスコアが低い。
3:直感の信頼性を高めると、男性も非科学的なものを信じるようになる。
ということがわかりました。

従来、女性が非科学的なものを信じることについては「思考の合理性が低い」「知性が低い」と理由がつけられることもあったとのことですが、ウォード氏は、推論能力や知能について性別による違いはデータには現れなかったとして、こうした意見を否定。「直感や自分の勘を信じる人は非科学的なものを信じる傾向にある」とまとめました。

一方で、物事を自分の思い通りにしているという「征服感・支配感」があると、人は非科学的なことを信じないこともわかっています。一般に、男性は女性よりも征服感が強い傾向にあるため、女性の方が非科学的なことを信じる傾向にあるという調査結果とも符合します。

しかし、ここでウォード氏は「スポーツとギャンブル」に関して疑問を呈しています。この2つは、非科学的な思考に満ちた領域であるにも関わらず、女性よりも男性が好むものだからです。問題のあるギャンブル的行動の根底には「自分は特別な存在であり、ランダムなことですら支配できる」という非科学的な考え方が存在しています。
 
このように、男性がギャンブル的行動の時だけ非科学的な考え方に走ることについて、ウォード氏は、勝利や金銭的・個人的な利益を得られる状況では、男性も非科学的なものを信じるのではないかと推測。他方、女性は男性に比べてリスク許容度が低いと考えられていて、このことがスポーツやギャンブルをあまり好まない理由なのではないかと考えているとのことです。
 
03032022
 
 
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なぜ人類は〈神〉を生み出したのか? 

2025年04月01日 03時01分03秒 | 科学のはなし
 
なぜ人類は〈神〉という概念を生み出したのか? 著者は認知科学、考古学、歴史学などの最新知見を踏まえて、その難問に挑んだ。

  考察の出発点には、進化心理学が唱える「心の理論」が据えられている。それは人類が進化の過程で獲得した、人やモノ、出来事の背後にある意図や動機を推察する能力だ。
神のイメージ
 
 『人類はなぜ〈神〉を生み出したのか?』(レザー・アスラン 著/白須英子 訳)文藝春秋
 なぜ人類は〈神〉という概念を生み出したのか? 著者は認知科学、考古学、歴史学などの最新知見を踏まえて、その難問に挑んだ。
 考察の出発点には、進化心理学が唱える「心の理論」が据えられている。それは人類が進化の過程で獲得した、人やモノ、出来事の背後にある意図や動機を推察する能力だ。
米国のクリスチャンが描く神のイメージ
 
「人類は宗教的衝動を持つことで子孫を残すのに何かしらの優位性を得たはずだ、という前提に立って、学者たちは200年以上に亘って、宗教の起源を探ってきました。しかし、認知科学者、進化生物学者は、宗教的衝動は子孫を残すのに何らの優位性ももたらさないどころか、資源とエネルギーを浪費するので不利に働く、という結論に達しました。ゆえに多くの専門家は、宗教的衝動は人類が進化の過程で得た『心の理論』などの能力から偶然生まれた副産物であるとするのがベストの仮説だと考えています」
 
 
「心の理論」がもたらす能力によって、人類は天変地異、巨木、巨石、森で出遭う動物など身の回りのありとあらゆるものの背後に意図や動機を感じ取り、それらを擬人化する。それらが自分たちの集団に恩恵や災厄をもたらすものだと認識され、共有されれば、崇拝や畏怖の対象となっていく。〈精霊〉が生まれ、やがては〈神〉が出現することになるだろう。
 
 
 本書は定住と農業と宗教の関係についても驚きの考察を展開する。
「長い間、定住は農業を始めたことの結果だと考えられてきました。人類は穀物を育てる必要があるから定住したと。しかし、その説はまったくの誤りであることがわかりました。その強力な証拠は、農業革命よりも数千年前から存在していた大規模な定住遺跡です。トルコ南東部で発掘されたギョベクリ・テペのような神殿遺跡は、人類が宗教的理由から定住を始めたことを示唆しています。定住の結果として、人類は農耕と牧畜を始めたと考えられるのです」
 
 
 レザー・アスランさん
 定住革命以後、〈神〉の概念に革命をもたらしたのは、ユダヤ民族の離散である。その歴史的経験から〈一神教(モノセイズム)〉が生まれた。一神教の〈神〉は唯一の神であり、善と悪、愛と憎しみ、創造と破壊など擬人化された神が担っていた相反する概念をすべて引き受けるため大きな矛盾を抱えることになり、非人格化されていった。かくして〈一神教〉の世界は、偶像崇拝と偶像破壊、擬人化され親しみやすい〈神〉と非人格化され親しみにくい〈神〉の間で揺れ動くことになった。この葛藤を見事に調停したのが、キリスト教だと著者は語る。
 
「キリスト教が世界史において最も広がり、成功した宗教となりえた理由がここにあります。キリスト教は〈神とは何か〉という問いに最もシンプルで多くの人を納得させる方法で答えました。〈神とは完全な人間である〉と。それは心に響く答えであるだけでなく、元来、人類の脳に組み込まれている思考法なのです。私たちは無意識のうちに人間に引き寄せて神を考えるように仕向けられています。つまり、擬人化された神を唯一の〈神〉として心に思い描くように」
 
 今、世界では宗教を持たない人々が増える一方、宗教紛争も絶えない。人類と宗教の関係は今後どうなっていくのだろうか。
「確かに人類は宗教に関心を寄せなくなっています。しかし、それは宗教を通して自分が何者であるかを確かめなくなっただけで、〈スピリチュアリティ〉と言われるものへの関心は高まっています。人類はやはり〈宗教的動物(ホモ・レリギオスス)〉なのです」
 
Reza Aslan/1972年、テヘラン生まれ。カリフォルニア大学リバーサイド校創作学科終身在職教授。イラン革命時に米国に亡命。カリフォルニア大学で宗教社会学の博士号を取得。著書に『イエス・キリストは実在したのか?』など。
 
 
05102021
 
 
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