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6300万円、渋谷区のタワマンを退職金で買った“上昇志向夫婦”が青ざめた「10年後の後悔」

2024年12月22日 09時03分05秒 | 不動産と住環境のこと


6300万円、渋谷区のタワマンを退職金で買った“上昇志向夫婦”が青ざめた「10年後の後悔」


12/26(月) 5:03配信2022
37コメント37件

タワマン建設ラッシュ!

photo by iStock

 筆者は1990年代、アトランタにあった36階のタワマンに一週間滞在したことがある。 

【写真】離婚して実家に戻った41歳娘に破壊された、71歳母親の「余生」

  ガラス張りの天井を見上げれば青空に雲が流れていき、ベランダでは庭の高い木々が戸建の住宅を覆い隠すので、見下ろせば一面の緑の海のような眺めで、空飛ぶ鳥のような爽快さに感激した。住人のビジネスマンは「犯罪多発地域だけど、窓が高過ぎて侵入されず、武装ガードマンが24時間常駐する最も安全な生活空間だから需要がある」と言うが、「警護費用」だけで月に15万円の出費だという。治安のいい日本ではこの高さは無用の長物と、“昭和人間”の私たちは決めつけていた。

  しかし現在、日本では超高層マンション(以後、タワマン)が林立している。特にリーマンショック以降に企業が都心部や駅近の土地を売却した結果、タワマンは増加している。2021年12月時点では国内に1427棟、37万5152戸が建設され、現在も年間40棟前後が竣工予定だという。タワマンは首都圏や関西圏に集中しているが、アメリカ都市部と違って、「強盗から身を守るための最後の砦」といった悲愴感は無い。 

 単に低くて横広だった箱物を縦にして積み上げてみたら、見栄えはするし、戸数は稼げるし、小洒落た共用施設も追加できる。そこに集う住人達も「成功者のトロフィーとしてのタワマンを持つ人」や「近い、早い、便利をめざす省エネ大好き人間」「プライバシー重視のプチ引きこもり」「老人ホームより自由に、マイペースに暮らしたい高齢者層」など、バラエティーに富んでいる。


  当然、一種の“憧れ”をもってタワマンに飛び込んでくる人もいる。だが、タワマンは良くも悪くも従来のマンションとは全く別物だ。期待を抱いてタワマンという「魔窟」に住んでみた結果、思わぬ苦痛を味わうことになる人もいるということを忘れてはいけない。


夫と妻の「領土問題」


 八木夫妻(仮名)は約10年前、優雅で便利な暮らしを夢見て退職と同時にタワマンを購入した。

  「海外勤務と東京の商社での役職とを繰り返してきたので、ずっと借り上げ社宅住まいでした。だから初めてのマイホーム購入に舞い上がっていたんです」と八木さんは自嘲する。株の売却益と退職金とで購入できて、後で売っても目減りしない資産価値のある住まいが欲しい…という視点から、渋谷区内のタワマンの11階の部屋を総額6300万円で購入した。

  しかし夫が74歳、妻が70歳になった現在、二人は深い後悔の念を抱いているという。いったいなぜなのか。 

 そもそも予算内で買えたのは、小ぶりの2L D Kだった。住み始めた直後、悩んだのが60平米という狭さである。高層ビルの強度の関係なのか、梁がやたらと多く出っ張り、窓の開口部が小さくて圧迫感や密閉感がある。 

 一部屋は内廊下側で窓無しなので、どうしても開口部のあるリビングに居たくなる。定年後の在宅夫と、趣味に没頭し「自分ワールド」を持つ妻とで「領土問題」が勃発。試行錯誤の末、「午前の部」「午後の部」で家の滞在時間とLD Kの使用権を分けあうことにした。 


 時間を分けて家を使うというルールを決めたことで、しばらくは夫婦喧嘩もせずに乗り切ることができた。だが、新型コロナウイルスの流行が始まってから、状況が変わった。  

夫は「外出制限によって二人が同時に家にいる時間が長くなり一触即発。やたらと口喧嘩をするようになった。なんでこんな狭いタワマンを買ったのよ! もっと安くて広いマンションはたくさんあったでしょ! と妻から罵られたこともありました」と振り返る


オシャレ外国製家電の「罠」


 夫は「映画、美術館、大学の聴講、行きつけの小料理屋、スポーツジム、どこへ行くのも30分の都心のタワマンは、定年後の楽しみを満たすはずだったんですが、コロナが……」とため息をつくなど、愚痴は止まらない

  さらにタワマンを買った後悔に拍車をかけたのが、備え付けの豪奢な電化製品だった。  

入居当初に故障したのがゴミを粉砕して流せるディスポーザーで、異物が紛れ込んでしまったからか、ガーガーと異音をあげて動かなくなってしまった。修理をしようにも、海外からの部品の取り寄せは高額だし、メーカーの技術者の派遣料が3万円もかかる。便利な住宅設備のはずが、修理する手間とカネの問題があって無用の長物と化している

  妻は「外国製の食器洗い機も、一度故障した際に15万円の修理代がかかると言われました。直すのはあきらめて、食器入れとして使っています」と嘆く。

換気空調システムの修理に70万円!

写真:現代ビジネス

 洗濯乾燥機も怪しげな音を立てはじめたが、給水や排水設備などのサイズに合うのはドイツ製の一種類だけ。値段も60万円と聞いて躊躇した。今は小物類を手洗いし、あとは週1回、大物の洗濯物をリュックに詰めて外のコインランドリーに通っている。 

 換気空調システムの修理交換は機種が製造中止のため自主的な機種変更をするよう勧告がきて、70万円という高額な見積もりも届いた。次は天井の間接照明の修理も必要になるだろうと思うと、ため息が出るという。 

 憧れを抱き背伸びをして買ったタワマンは、内装や設備は豪華絢爛そのものだが、維持費を甘く見ていた。実用性や2人の暮らしぶりを考えれば、「宝の持ち腐れ」になるのは確実だが、それに気づいたところで引っ越す資金も体力も残っていない。 

 「古い公団住宅の生活の方が精神衛生上良かったね」といった愚痴をたびたび口にしながら、八木夫妻は暮らしている。

  一方、

『1億6000万円タワマンで「優雅な晩年」を過ごそうとした78歳男性が驚愕した「ヤバすぎる出費」』に続く…




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日本の不動産はバーゲンセール」 中国人投資家が“爆買い”する大阪・京都の物件 

2024年12月01日 11時03分31秒 | 不動産と住環境のこと
日本の不動産はバーゲンセール」 中国人投資家が“爆買い”する大阪・京都の物件 その裏にある中国の政策と「紅船襲来」



国交正常化から50周年を迎えた日中関係。 中国人投資家による、民泊物件への問い合わせが今、増えているそうだ。不動産価格が、先進国の中で一番安いと指摘される日本。さらに、今回の円安で、まさに"バーゲンセール"のようだという。経済規模の「逆転」を象徴するような出来事が、関西でも起きている。

10/21/2022

【画像】「日本の不動産はバーゲンセール」 中国人投資家が“爆買い”する大阪・京都の物件

中国人投資家が熱視線 円安で"バーゲン状態"の京都・大阪の不動産


華森社 金澤宏樹 代表取締役: 海外の投資家向けの投資用の民泊物件です 外国人観光客に人気の大阪・黒門市場から歩いてわずか30秒の場所でそう紹介されたのは、11階建て30室、1棟7億5000万円の新築マンション。現在、購入を検討している中国人10組ほどとやり取りをしているということだ。


 華森社 金澤宏樹 代表取締役: 2025年の万博と2029年からのIR、大阪すごく注目されています。長期の目線で考えたら、絶対将来的に価値が上がります こうした投資用物件への問い合わせが、今、とても増えているそうだ。アフターコロナを見据え、「民泊」物件を中国の投資家向けに建築・販売している華森社では、オンラインで中国の購入希望者と部屋の内覧動画を見ながら商談を進める。 

華森社 金澤宏樹 代表取締役: 10月また観光客が入れるようになるので、ホテル・民泊関係の利用施設が多くなりました。一般の収益物件と比べると民泊は収益率が良くなります。自分の民泊物件なので、来日のとき自分でも使える施設になりますので、すごく喜んでもらえます 

なぜ中国人の、日本の不動産に対する熱が高まっているのか。中国人の投資家と日本の不動産をマッチングするプラットホームの運営会社に聞いた


先進国の中で最も不動産が安い!それが今の日本 


神居秒算 趙潔社長: 日本という国は先進国なので。ただ、先進国の中で不動産価格が一番安い。今回の円安で、まさにバーゲンセールみたいな感覚で  

中でも、京都の物件は人気が高いそうだ。 神居秒算 趙潔社長: 京都のメリットとしては、中国の昔の文化のようなものが見られる。中国の中にも唐や宋の時代のものそんなに残されていないんですけど、京都で全部見られるんですね。

民泊・旅館が人気ある。町家とか  また、こんな指摘も…

 神居秒算 趙潔社長: (日本の経済)成長が鈍い反面、中国の経済成長は早いので。30年前、日本人が中国行くときの感覚は、今は中国人が日本に来るような感覚になっている、逆転になってる 

中国人投資家の「バーゲンセール」について、中国問題に詳しいジャーナリストの近藤大介氏は、中国の政策の影響を指摘する。 

ジャーナリスト・近藤大介氏: 2021年8月から習近平政権が「共同富裕」という政策を打ち出しました。

富裕層の財産・資産を調整するということで、焦った富裕層が海外に資産を移そうとしています。日本はその移動先として最適の場所のようです また、日中関係の次の10年は「紅船(あかふね)襲来」とし、双方向の時代になると話す。 

ジャーナリスト・近藤大介氏: これからは、日本企業が一方的に中国に進出していたこれまでの50年と違って、双方向の時代になります。

中国企業も日本に進出して、日本に工場を建て、東京や大阪のオフィスビルに会社を構え、日本人を雇用する時代がやってきます。それは日本市場を見据えているということもありますが、米中対立の時代に日本を避難地にして、日本からアメリカ・EUへということにすれば、ほとんど関税がかかりませんから。そういった意味でも日本市場を重視してくると思います 

(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月29日放送)



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なぜか同じ場所で繰り返し事件や事故が発生している物件。偶然という言葉で片付けようにも、どこか説明しきれない>

2024年12月01日 00時03分51秒 | 不動産と住環境のこと
住人が1人ずつ消えていく…大島てるが語る「平凡な一軒家が“恐怖の事故物件”に豹変するまで」


8/16/2020

事故物件の調査をしていると、ときに不可解な物件と出会うことがあります。私が特に気になるのは、なぜか同じ場所で繰り返し事件や事故が発生している物件。偶然という言葉で片付けようにも、どこか説明しきれない“何か”が残ってしまう……。そんなケースに遭遇することもあるのです。 【写真】この記事の写真を見る(5枚) 

 今回はそうした事例から、少し背筋が寒くなるような事故物件をご紹介しましょう。(全2回の1回目/ 後編に続く )


三世代同居の一軒家で起きた悲劇
 今から10年ほど前、神奈川県の新興住宅地からほど近い一軒家に、20代の男とその母親、そして祖母の3人が同居していました。他に父親や兄弟はいなかったものの、3人とも血がつながっている、いわゆる三世代同居の形でした。  

その一軒家で最初に“事件”が起きたのは、年末も近づいた冬のこと。まずは家の中で、男の母親が亡くなっているのが見つかったのです。何か病気を患っていて、医師に看取られながら亡くなった……というわけではなく、40代での突然死だったこともあり、事件性がないかを確認するために、警察が捜査を始めました。  

すると、同居していた男と連絡がとれないことが判明し、警察はその行方を追いました。しかし、それから数日後、男は姿をくらますことなく、自宅に帰ってきました。そこで警察が事情を聴いたところ、男は突如「自分が首を絞めて殺した」と話し始めました。母親と口論になり、思わず首を絞めてしまった、と……。  

突然の“自白”に、その場にいた警官も騒然としたのではないかと思います。ただ、妙なことに、数日前に亡くなった母親の死体には、首を絞められたような跡など見当たらなかったのです――。
母親は病死として片付けられた


 たとえ「私が殺しました」と名乗り出る人がいたとしても、遺体に他殺の痕跡がなければ、警察も動きようがありません。その後、司法解剖も行われましたが、やはり母親の死因は急性心不全と判断され、男の奇妙な供述は謎のまま、この一件は神奈川県警によって病死として片付けられたのです。  

しかし、それからわずか1週間後。その男が、今度は駅前の交番を訪れ、「口論になり、首を絞めて殺した」と再び警官に告げました。しかし、今回は母親ではなく、祖母を殺したと言うのです。


警察が自宅に向かうと、そこには……
 すぐに警察が自宅に向かうと、そこにはマフラーで首を絞められ、殺された祖母の遺体がありました。今度は紛れもない窒息死で、男はすぐに逮捕されました。 

 その後の供述によると、母親の死のあと、祖母と2人でどう暮らしていくかを話し合っているうちに意見が対立し、将来を悲観した男が祖母を殺害した……との経緯だったことが判明しました。  

しかし、なぜ母親が病死した際に「私が殺した」と嘘をついたのか、そして、その場で口にした「口論の末に首を絞めた」という“供述”を、なぜ1週間後に現実のものにしてしまったのか、という点は、謎のままで終わってしまいました。

事故物件は思わぬ“結末”を迎える
 こうした、非常に特殊な形で2人の住人が相次いで亡くなった事故物件は、一体どんな家なのか。事件後、私自身も実際に現場に行ってみようと思いながら、タイミングを見つけられないでいました。 

 すると、1カ月もしないうちに、驚くべきニュースが飛び込んできました。その家が火事に遭い、焼け落ちてしまったというのです――。  

原因は放火の疑いが強いとのことでした。確かに、母親と祖母が亡くなり、男も逮捕されてしまったことで、その家は空き家状態でした。放火魔にとっては、絶好のターゲットだったのかもしれません。  少し話が逸れますが、放火というのは、実はけが人も死者も出ないケースが多いのです。かつて、ある無職の男が、建設中の木造住宅ばかりを狙って火を付ける、という事件がありました。

「こんな幸せそうな家に引っ越すなんて許せない」という嫉妬心からの犯行だったようですが、どれも作りかけの家ですから、当然誰も住んでおらず、犠牲者はいませんでした。
 

これはある種、放火魔の典型例と言えると思います。放火魔の心理は理解したくありませんが、燃えやすいものに火を付けて、メラメラと火柱が上がる光景をみることでスカっとする……といったことなのでしょうか。彼らにしてみればモノが燃えれば十分で、物理的に誰かを傷つけてやろう、といった意志は案外ないのかもしれません。 

 そう考えると、空き家になった一軒家はまさに狙い目です。新聞やテレビで事件のことを知れば、今はそこに誰も住んでいないこともわかります。その後、私が訪れたときには、すでに家は取り壊され、現場は完全に更地になっていました。






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「ここは以前、殺人があった部屋でして」聞いたら知る前の気持ちには戻れない…事故物件に「住みたくない」と思ってしまうワケ

2024年11月24日 03時03分40秒 | 不動産と住環境のこと

「ここは以前、殺人があった部屋でして」聞いたら知る前の気持ちには戻れない…事故物件に「住みたくない」と思ってしまうワケ 



11/13/2024

〈 「先祖のたたりがある」と脅して数百万の壺を買わせ…“霊感商法”を信じてしまう人の心の中では何が起きているのか 〉から続く


 事故物件、あなたは住めますか? どれほど綺麗な部屋であっても、そこが事故物件であると判明した途端、住みたくなくなってしまうという人はかなり多いでしょう。直接的な影響があるわけではないのに、どうしてそう思ってしまうのでしょうか。


 愛知淑徳大学の心理学部教授である久保 (川合) 南海子さんは、自分の認識が世界の見え方に影響を与える「プロジェクション」という心の動きについて指摘します。


 ここでは、そんなプロジェクションについてさまざまな事例を紹介しながら解説していく『 イマジナリー・ネガティブ 認知科学で読み解く「こころ」の闇 』(集英社新書)より一部を抜粋して紹介。事故物件に抵抗感を抱く、その心理学的な理由とは……。(全4回の4回目/ 続きを読む )





© 文春オンライン
◆◆◆


殺人があった部屋には住みたくない
 私にはいわゆる「霊感」というものがないらしく、これまで幽霊のようなものを見たこともなければ、どこかの場所でなんだかゾッとするような感覚をおぼえたこともありません。そんな私でも、住む場所を探している時に「ここは以前、殺人があった部屋でして」と言われたら、どんなに条件が良くて気に入ったとしても、やはりそこで生活することを躊躇してしまうと思います。そしておそらく、たいがいの人は同じように思うのではないでしょうか。


 いまの例のように不動産取引や賃貸借契約の対象となる土地・建物や、アパート・マンションなどのうち、その物件の本体部分もしくは共用部分のいずれかにおいて、なんらかの原因で前居住者がいわゆる「悲惨な死に方」をした経歴のあるものを「事故物件」といいます。



 不動産を含む売買契約に関する民法では、業者には「契約不適合責任」があります。売主や貸主には物件の欠陥を担保する責任があると定められており、事故物件は「心理的瑕疵(欠陥)」に相当するとされています。


 2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」で、いわゆる事故物件について、不動産業者が入居予定者らに伝えるべきかどうかの指針案をはじめてまとめました。告知が必要でない事案は、病死、自然死、日常生活にともなう事故死です。告知すべき事案は、他殺、自殺、階段からの転落や入浴中の転倒・不慮の事故(食べ物を喉に詰まらせるなど)以外の事故死、事故死か自然死か不明なばあい、長期間放置され臭いや虫が発生するなどしたばあいとなっています。


自分に関係ない殺人や事故のことが気になるのはなぜ?
 このガイドラインを読むと、心理的瑕疵とされる事故物件の「心理的」の部分がいずれもプロジェクションによるものであることに気づかされます。事故物件の部屋はきれいにリフォームされているはずですから、見たところではもちろん殺人や事故の痕跡など跡形もなく、説明されなければまったくわかりません。けれど、一度でも事情を知ってしまったら、もう知る前の気持ちには戻れないのです。


 動物がある場所や物を回避するばあいは、それがその動物にとって危険であるからです。ところが事故物件のばあい、自分はそこでの事故や事件にはまったく関係ないのですから、物理的にはもちろん、人間関係的にも事故物件を回避する理由はありません。しかし、ふだんは幽霊や死者の怨念などを信じていなくても、「悲惨な死に方」をした人が最後にいた場所で、毎日暮らしていくのはなんだか嫌なのです。そこには、うまく説明はできないながら、悲惨な死への漠然とした忌避感がプロジェクションされています。



 この部屋に住んでいたら、なにか不可解な現象が起こって怖い目にあうのではないか、死者の霊が見えてしまうのではないか、自分のこころや身体になにか不調が起こるのではないか、考えだしたらキリがありません。それはなんの根拠もなく、合理的な説明でもなく、そんな経験をこれまでにしたわけでもないのですが、場所と事情を起点にして私たちの想像力は無限に広がっていきます。


 プロジェクションは表象と対象が必要なこころの働きですから、事故物件という場所(対象)と悲惨な死という事情(表象)がそろったことで、止めようとしても自動的にプロジェクションがなされてしまい、悲惨な死への漠然とした忌避感がさまざまな具体例として顕在化したといえるでしょう。


 悲惨な死への漠然とした忌避感や恐れが事故物件という部屋と結びついたなら、死者の生命感(これは大いなる矛盾であり、非合理的だからこそ不気味なのですが)を事故物件の部屋で感じてしまうともいえます。


 部屋にまつわる事情を知ったことで、ドアがうまく閉まらないとか湿気がたまってカビ臭いなど、住居としての物理的な不具合について、「もしかしたら死者の怨念が…?」というアブダクション(編注:説明のつかない問題について、仮説を立てて考えることで新たな結論を導きだす推論法)で推論することによって、部屋に霊の存在をプロジェクションしてしまうのです。


 ふだんは霊など信じていないような人でも、事故物件となるとあまり気持ちが良いものではないと思うのも無理はありません。私たちは案外、ちょっとした情報ひとつから、手軽に幽霊を出現させてしまうのです。


殺人犯が着ていた服は洗っても着たくない
 環境に対する清潔感や嫌悪感の感覚には、かなり個人差があるといえます。自宅以外の洋式トイレでは、誰が座ったかわからない便座に自分も直に座るわけですが、まあそういわれてみればそうだけどあまり気にならないという人もいれば、それがどうしてもできないという人もいます。


 洋式トイレの例は、自分が対象に物理的な接触があるばあいですが、物理的な基盤を持たなくても性質や価値が事物に伝わるとする信念を「魔術的伝染(magical contagion)」といいます。魔術的伝染は、原始宗教や儀礼に関する文化人類学の分野で最初に注目されましたが、近年では認知科学や発達心理学でも研究されるテーマになっています。



 たとえば、有名な歌手がライブで着用していた服がオークションにかけられ、高値で取引されるのは魔術的伝染によるものです。このような魔術的伝染には、ポジティブな伝染とネガティブな伝染があります。有名な歌手の服のような例は、ポジティブな伝染のひとつで「セレブリティ伝染」といいます。


 セレブリティ伝染では、有名な歌手の価値が服という事物に伝わっていると考えているからこそ、物理的な服としての価値以上の意味がそこに見いだされているわけです。これはまさに、プロジェクション以外のなにものでもありません。


 セレブリティ伝染は、子どもにも見られます。発達心理学のポール・ブルーム先生らは、イギリスの6歳児を対象に同じおもちゃを見せて、片方はエリザベス二世がかつて所有していたもの、もう片方はそのコピーだと説明しました。すると子どもたちは、まったく同じおもちゃであるにもかかわらず、コピーよりもエリザベス二世がかつて所有していたほうを高い価値があると判断しました。


 おもしろいことに、この傾向は幼い頃に毛布やぬいぐるみなどの愛着対象を持っていた子どもでより顕著に見られました。このことから、自分の内的世界を外部の対象に投射するプロジェクションの働きの強さが、魔術的伝染の傾向と関連していることがわかります。


「床に落とされた(かもしれない)クッキーは見たところ汚れてはいないけれど、汚れている(ような気がする)から食べたくない」と思うのは、ネガティブな魔術的伝染によって形成された表象がプロジェクションされた結果であるといえます。


 このように、ネガティブな性質が伝わるばあいには「汚染(contamination)」という用語が使われます。ネガティブな伝染は、セレブリティ伝染のようなポジティブなものに比べて伝染力が強く、効果も長く続きます。


 ネガティブな性質が伝わるばあいとしては、たとえば、殺人者が着ていたセーターは、それがもし完璧にクリーニングされていたとしても、手を通したくないという忌避がとても強いことがわかっています。


 先ほどの事故物件へ感じる恐怖や嫌悪も、まさにネガティブな魔術的伝染であるといえます。事故物件の問題は、部屋がすっかりリフォームされていても、悲惨な死に関する性質や価値が部屋という事物に伝わるという信念が関係しているからです。


(久保(川合) 南海子/Webオリジナル(外部転載))





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練炭自殺の現場にマンションを建てたらやっぱりヤバかった 大島てるが語る“あるオーナーの悲劇”――2019年 BEST5

2024年10月10日 03時03分29秒 | 不動産と住環境のこと
過去に文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第2位は、こちら!(初公開日 2019年8月10日)。

練炭自殺の現場にマンションを建てたらやっぱりヤバかった 大島てるが語る“あるオーナーの悲劇”――2019年 BEST5
【写真】この記事の写真(5枚)をすべて見る

*  *  *

 私は平成17年(2005年)から、事故物件の情報提供サイト「 大島てる 」を運営しているのですが、こうした仕事をしていると、ときには事故物件のオーナーから「サイトでの掲載を取り下げろ」と強く抗議されることもあります。数年前、都内某所のあるマンションのオーナーからも、何度かそうした抗議がありました。しかし、その一件は後に予想もしていなかった結末を迎え、不幸な形で“解決”してしまうことになるのです――。(全2回の1回目/ #2 に続く) なぜ私は「大島てる」を立ち上げたのか?
 
 そもそも、私が「大島てる」を立ち上げたのは、不動産業において「告知義務」を果たさない業者が少なくないからでした。告知義務とは、宅建業法で定められた義務の一つで、借り主(買い主)にとって心理的瑕疵となる事項がその物件にある場合、貸し主(売り主)は必ずそれを事前に告知しなければならない、とされているものです。

  たとえば、前の入居者がそこで自殺していたり、あるいはその部屋が殺人事件の現場になっていたとしたら、業者は契約が成立する前に、必ずその旨を伝えなければなりません。しかし、なかにはそうした事実を隠して部屋を貸し出したり、売り出したりする酷い業者がいるのです。私が「大島てる」というサイトを作ったのも、そのような被害を防ぎたい、との思いからでした。そのため、たとえ事故物件のオーナーから抗議が来たとしても、掲載を取り下げることはまずありません。
有料駐車場で起きた練炭自殺
 
 しかし、今回ご紹介する都内某所の物件は、少々特殊な経緯を辿っていました。マンションが建設される前、そこには有料の駐車場があったのです。マンションを建てるつもりで土地を手にした所有者が、建設工事が始まるまでの間、そこを駐車場にして日銭を稼ぐ、といったことは特段珍しくはありません。むしろ、土地の有効活用の例としてはよくある話でしょう。ただ、そのオーナーが不運だったのは、土地を遊ばせまいと駐車場にして貸し出している間……そこに停められていた車の中で、練炭自殺が起きてしまったことでした。


私のサイトには、事故物件の所在地だけではなく、その外観写真も掲載されています。「ここがその事故物件である」ということを明示するため、スタッフと手分けして写真を撮っているのですが、その駐車場にはたまたま、私が直接足を運ぶことになりました。

 私は、サイトに掲載する事故物件の写真は、あえて晴れた日の明るい時間帯に撮るよう心がけています。しかし、そのときは情報を得てからすぐに現場に向かったものの、着いた頃にはもう夜になっていて、一応写真は撮りましたが、これは改めて撮り直さないといけないな、というような仕上がりでした。ただ、もう一度その駐車場を訪れる時間がなかなか作れず、ようやく再訪できたときには、そこにはもう、新しいマンションが建っていたのです。 マンションのオーナーから内容証明が届く
 
 先程も述べましたが、マンションを建てる前に、その土地を駐車場として貸し出しておく、というのはよくある話です。私も新しいマンションを見上げながら「それはそうだよな」と納得しましたが、それでも「この私有地で自殺があった」という事実は変わらないので、そのマンションの外観を撮影し、サイトに掲載したのです。

 すると後日、マンションのオーナーから「写真の掲載をやめてほしい」と抗議がありました。弁護士を通じて、「この新しいマンションで自殺があったと勘違いされてしまうではないか」という趣旨の内容証明が送られてきたのです。正直なところ、そのオーナーの言い分にもわかるところはありました。ただ、私としては、「直前にこの場所で自殺があった、そんな歴史を持つマンションである」ということを、入居を検討する人たちに伝えたかったわけです。だからこそ、抗議に応じて掲載をやめるわけにはいきませんでした。

  しかし、その後も相手側からのクレームは続きました。そのうちに「訴えるぞ」という強い抗議も届くようになりました。もしかしたら、今回は掲載を取り下げたほうがいいのではないか……。それは、そんな風に悩み始めた頃のことでした。何気なく点けていたテレビに突如、そのマンションの姿がパッと映ったのです。


今度は小さな子供が……
 
「あれ? このマンションは……」と思った瞬間、私はニュース番組に釘付けになりました。まさに抗議を受けていたそのマンションにおいて、小さな子供が突然心肺停止に陥り、そのまま帰らぬ人となった――。テレビは、そんな痛ましいニュースを伝えていました。

  駐車場時代の自殺から何年も経たないうちに、まったく同じ場所で、2人目の死者が出てしまった……。報道によると、後に司法解剖を行っても、その子の死因は不明に終わったそうです。それ以降、オーナーからの抗議はピタリと止まりました。
 事故物件がまったくないエリアで、なぜか連鎖した「死」
 
 この一件で不思議なのは、そのマンションの周りには、こうした事故物件がまったくない、ということです。周辺に事故物件が一切ないのに、その土地、その座標では、時を置かずに2人も死者が出てしまった。このことをどう解釈すればよいのか……私にはわかりません。

 しかし、2回であれば、それは単なる偶然として片付けることも可能かもしれません。ただ、これが3回、4回と続いていくと、そこには“何かがある”と言わざるを得ません。

  次は、私が「事故物件の聖地」と呼んでいるアパートをご紹介しましょう。それは今回取り上げたマンションから直線距離でおよそ10キロメートル、川を挟んでちょうど反対側に位置する3階建ての住宅です。そこでは全く違う死に方で、4人もの人が――。



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