ニュースなはなし

気になるニュースをとりあげます

私大の5割強が定員割れでも日本社会に根付く「学歴至上主義」…もはや「4大卒」はブランドでもなんでもない

2025年01月21日 11時03分23秒 | 教育のこと








私大の5割強が定員割れでも日本社会に根付く「学歴至上主義」…もはや「4大卒」はブランドでもなんでもない
1/5(日) 9:10配信




186
コメント186件




みんかぶマガジン
(c) Adobe Stock


 大学の新設と少子高齢化が進み、日本は「大学全入時代」に突入した。新進気鋭の学歴研究家・じゅそうけん氏は、「四年制大学を卒業したというだけでは全く価値を見出せない時代になった」と話す。大学受験の現状と、そんないまだからこそ考えたい大学進学の意義について、じゅそうけん氏が語る。全4回中の2回目。


※本記事はじゅそうけん著「受験天才列伝――日本の受験はどこから来てどこへ行くのか」(星海社新書)から抜粋、再構成しています。


学生に「きていただく」ための入試
 私大バブル期は、受験生人口に対して大学の募集枠が少なく、「入りたい大学より入れる大学」とすら言われていましたが、平成・令和の時代になると状況が一変します。


 少子化で受験生人口が頭打ちになるのは目に見えているにもかかわらず、大学の新設が相次ぎ、受験者数を大学定員が上回る「大学全入時代」が到来したのです。


 今や学力選抜(一般入試)で一定以上の学力を持つ学生を確保できるのは、国立大学と一部の私大のみではないでしょうか。偏差値がある程度下がってしまうと、「学生に来ていただく」ための入試となり、事実上形骸化しているというのが現状でしょう。


 文部科学省はこの30年、大学の新設を次々と認可してきました。第二次ベビーブーム(1971年~1974年)以降、日本の出生数は減少の一途を辿り、少子化が進んでいくのは目に見えていたのに、そんな流れに逆行するかのように大学の数は増えていきました。2024年現在では約800の四年制大学が存在しています。


 1989年(平成元年)の大学数は499校でしたが、2023年には810校となっているので、平成から令和の30年あまりで約300校が新たに開校したことになります(年間10校ペース)。


 こうした大学乱立の主因として、「大卒資格」の需要が急激に増加したことが挙げられるでしょう。


 給料が高く、安定した会社に勤めるためには、「大卒であること」が必要であるという共通認識が生まれ、平成以降に大学入学の同調圧力が一気に高まったと言われています。


 企業側も積極的に大卒者を求めるようになり、大学の本来の目的から乖離した「就職予備校」としての機能が大学に求められるようになっていきます。実際、私が以前勤めていたM銀行もそうでしたが、大企業のエントリー欄は四年制大学卒業見込み者でないと入れないところがほとんどです。


 こうした民間企業側の動きもあって、大学であればどこでも良いと考える層も一定数発生してしまい、名前を書けば入れると言われる「Fランク大学」*の乱立を招きました。大学によっては、入学後に分数や漢字の書き取りのおさらいテストを20歳前後の学生にさせるところもあるようです。これでは一体なんのための大学なのかわからないですし、こうした「とりあえず四大」派の人は専門学校などで手に職をつけた方が良いと感じるのは私だけでしょうか。


*大手予備校が作成する偏差値表において、偏差値35未満に位置する「ボーダーフリー大学」のこと

「高卒・短大→寿退社→専業主婦」ルートの崩壊
 とはいえ、「大学進学者数」に目を向けてみると、ここ数十年で減っているどころか徐々に増えていることがわかります。


 子供の数が減っているのにしばらく大学進学者数が伸び続けていた理由は、ズバリ「女子進学率の大幅上昇」です。


 男女共同参画社会に向けて男女雇用機会均等法が施行され、1990年代半ば以降、女性も学歴をつけて男性と対等に働こうという流れが加速しだしたのです。


 こうした流れを受けて、短大で家政学や文学などを学んでいた学生が、四年制大学に進むケースが増え始めました。短大はそこから約25年で250校以上減少し、その分だけ女子の四年制大学進学者が増加しました。以前は男子学生がメインであった社会科学系、理工系などの分野においても、女子学生数の上昇が目立ち始めました。


 つまり、ここ数十年は同世代人口の減少を女子の大学進学率の増加によって補い、「見かけの大学進学者数」を保ってきたという実情があります。


 ただ、現在では男女で大学進学率にほとんど差がなくなってきており、大学進学率はこのまま頭打ちとなり、受験者数は同世代人口の減少に対応して減っていくはずです。今後、定員割れとなる大学はみるみる増えていくことが予想されます。


 実際、近年ではボーダーフリーで名前を書けば入れるとも言われる「Fランク大学」の増加が問題視されるようになってきています。大学に入ること自体は誰でも可能となり、昭和の時代に重宝されていた「四大ブランド」はすっかり威光をなくしてしまったのです。


 その結果、現在はなんと私立大学の5割強が定員割れという由々しき事態が起こっています。


「四大卒」だけではもはや価値はない
 いまだに日本人の学歴信仰は根強いですが、昭和の時代と比較するといくらか弱まっているように見受けられます。その理由として、日本社会が必ずしも学歴があれば報われる社会とは言えなくなってきているという背景があります。


 1960年代の高度経済成長期には、一度大企業に入社さえしてしまえば、終身雇用制のもとで事実上一生安泰という状況になっていました。そのため、良い企業に「就社」するための切符としての「学歴」が重要視されることになっていたのです。


 しかし、1990年代以降にバブル崩壊、リーマンショックなどを経験したことで、高学歴になって大企業に入れば将来安泰とは言っていられなくなりました。欧米のような成果主義・能力主義型の企業も増え、学歴にあぐらを掻いて窓際社員を謳歌していれば、年収1000万円が確約されていた時代は過去のものになろうとしています。


 それこそ、以前は「四大卒」というだけでブランドになったところが、現在ではボーダーフリーの「Fランク大学」が乱立する事態となり、四年制大学を卒業したというだけでは全く価値を見出せない時代になってしまいました。むしろ、一定のライン以下の四大に行くくらいなら、高校卒業後そのまま社会に出たり、専門学校などで簿記やプログラミング等を学んで手に職をつけたりした方が良いのではないかと感じます。



それでも根強い“学歴至上主義”
じゅそうけん著「受験天才列伝――日本の受験はどこから来てどこへ行くのか」(星海社新書)


 実際、難関大学と言われる大学を出ても、特に文系などは就職活動に失敗し、ニートやフリーターといったワーキングプアに陥ってしまう人も少なくなくなりました。私が以前副店長を務めていたイベントバーでは、高学歴フリーターのような人たちの憩いの場と化しており、そうした人たちの苦境を数多く目にしてきました。


 特に文系においては、コミュニケーション能力や社会性などが伴っていないとたとえ高学歴であっても民間就職は厳しく、そうしたところからこぼれ落ちてしまって浮上できなくなってしまっている人たちはかなり多いのです。


 ただ、学歴があれば必ずしも報われるとは言えなくなってきているものの、依然として学歴至上主義的な価値観は蔓延しています。Xなどを見ていると、「偏差値が高い大学の方が偉い」「一般入試受験者が偉い」といった主張が今でも多く見られます。


 学歴がキャリアに関係なくなってきているとはいえ、学歴というのは人生における大一番の結果であり、個々人の思い入れが最も大きいものの一つになっています。学歴至上主義的な価値観は、当面消えることはないでしょう。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不登校で通知表「オール1」〝負け犬のレッテル〟に心かき乱される生徒

2025年01月16日 20時03分25秒 | 教育のこと


不登校で通知表「オール1」〝負け犬のレッテル〟に心かき乱される生徒

1/24(火) 18:03配信2023

1869コメント1869件
小中学校で不登校だった田中さくらさん(仮名)

 横浜市の編集者、田中さくらさん(29)=仮名=はかつて不登校だった。きっかけは小学6年でのいじめだ。中学でも復帰できず、通知表は「オール1」。授業に出ていないから当然なのかもしれないが「学校って、分かってくれないんだな」と当時は思っていた。 

 小中学校の不登校児童生徒の数は2021年度に24万4940人。10年前のほぼ2倍で、過去最多だ。通知表はこうした生徒にも発行されている。ただ、不登校の子どもは通知表を「学校に『負け犬』のレッテルを貼られた」と受け止め、心をかき乱されている。中学生にとっては入試の結果も左右し得るため、その後の人生への影響も無視できない。  

さくらさんは一度、学校を見限った。それでも前に進もうともがき続けた結果、自分を見守ってくれていた教師の存在に初めて気付くことになった。学校の中には、立ち直ろうとする生徒を後押ししようと、独創的な通知表で工夫し始めた例もある。(共同通信=小田智博)

見たことのない数字


田中さんの中学2年の通知表
 さくらさんは小学6年の夏休み明けから学校に行けなくなった。クラスの中心にいた女子のターゲットにされ、仲間はずれにされたり、悪口を言われたりするようになったためだ。

「中学校からは復帰しよう」と決心。「友達に再会したら、どんな風に話しかけたらいいだろう」と頭の中でシミュレーションを重ねた。

  迎えた中学入学の日、思いとは裏腹に体が反応しなかった。ベッドから起き上がることさえできず、「無理だ」と悟った。近所の同級生が制服姿で中学校に向かう様子が窓越しに見えて、涙がこぼれた。

「私はもう『普通』にはなれない」。その夜、学校には行けないと両親に伝えた。「両親が『分かった』と言ってくれたのが救いだった」 

 小学校時代は優等生で、5段階評価の通知表は「5」ばかり。算数と図工が「4」になるぐらいだった。それが中学1年になって暗転。2学期制の前期の通知表は、評定が全て「1」だ。見たことのない数字に「逆に面白いかも」とさえ思った。  

通知表には欠席の日数も記されている。

「登校していない現実をリアルな数字で突きつけられた」と感じた。でも、どうして通えなくなったのかという理由は一言も書かれていない。一方で表紙には、学校の目標として「人を思いやる心を大切にする」とも印字されている。あのいじめっ子は何事もなかったかのように同じ中学に通っているだろう。そして彼女は、きっと良い評定なのだろう。 

 「こうなったのは私のせいじゃないのに。学校って、分かってくれないんだな」

  欲しいと言ったわけでもないのに一方的に届けられる通知表。

「何の価値もない」と感じるようになった。その後は通知表が届いても見なくなった。不登校も続いていたが、徐々に心の健康を取り戻し、フリースクールには通い始めた。


おしゃべりでジャージ姿の教師
田中さんが受け取った中学2年の通知表の記述

 一方、2年時に担任になった教師は毎月1回、自家用車で自宅にやってきた。定年間近の男性。親と会話をして帰って行くが、さくらさんは自室にこもり、一度も会わなかった。  

3年になり、通信制高校に進学しようと決意したが、そのためには受験の前に一度、担任教師に会う必要がある。2年の時と同じ人だ。気は進まなかったが、カウンセラーと母、さくらさんの3人で会いに行った。 

 教師とはこの時が初対面。

「よく来たね」と穏やかな表情を浮かべていた。さくらさんは「学校には行きません」とぶっきらぼうに返した。「分かった。君はそれでいいんだよ」。教師はそれっきり、登校に関する話はしなかった。

  さくらさんは「自分の意思を尊重してくれる人だ」と感じたという。不登校を受け入れてくれた両親の姿とも重なり、こう思った。「この人は信用できるかも知れない」。それからは毎月、自宅にやって来た教師と少しずつ話をするようになった。 

 ジャージ姿の教師はおしゃべりで、車やバイクの改造が趣味だと言いながら、細かいこだわりを楽しそうに語った。

「変な人だなあと思っていました。先生っぽくなくて」。さくらさんは当時を振り返り、顔をほころばせる。

  その年の秋。自宅の玄関先で、教師は通知表を手にしていた。3年の前期の成績だ。

「ここには君を評価することが書いてある。制度上、必要だから書いたけれど、君の全ての評価ではない。一番悪い数字が並んでいるけれど、これは君の価値じゃない」。静かにそう言って、書類を差し出した。 

 「この先生の通知表だったら、読んでみてもいいかもしれない」。 中を開くと、やはり「オール1」だったが、気にならなかった。担任教師が文章で記す欄に目をやった。すると、本来であれば学校生活の様子を書く場所に、受験に臨むさくらさんを励ます言葉が連ねられていた。


1年後に気付いた、担任教師の思い

田中さん

 「先生は、2年の通知表にはどんなことを書いていたのだろう」 

 急に知りたくなったさくらさんは、両親に尋ねた。自宅に保管されていた2年の前期と後期の通知表を見ると、「1」ばかりだった一方で、こんなことが記されていた。  

「(フリースクールに)通い出したとの報告を受けました。とっても嬉しいです。君にとってはじめの一歩です。頑張ろうとしていることは必ず形となって表れてくると思います。いい結果を信じて、挑戦していってください。君の成長を楽しみにしています」(前期)  

「とうとう君に会えないまま1年が過ぎようとしています。残念です。でも、うれしいことがありました。君自身の考えで動き出したことです。

(フリースクールでの)活動です。君が動けば、必ずやワクワクすることに出会えるはずですよね。そんな出会いを大切に、いっぱい動いてくださいね。3年生での成長を楽しみにしています。応援していますよ」(後期) 

 一度も会ったことがなかった2年生のさくらさんに対し、エールを送ってくれていた。しかも学校に戻るよう促すこともなく、これから歩んでいく道だけに目が向けられている。「1年後に届いた手紙」を受け取ったような気持ちになった。  

「ほかの人と比較するような言葉は一つもなくて、私のことだけ。それがすごくありがたかった。学校からの通知表なんだけど、そうではないように思えた」 

 その後は通信制の高校に進学。卒業後は海外の短大を経て編集者になった。手元には今も、中学2年の通知表がある。一度も授業を受けたことはないけれど、自分の価値は「オール1」なんかじゃないと言い切ってくれたあの教師に、心から感謝している。


以下はリンクで、



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

産んでよかったの」不登校の子を持つ親の自責

2025年01月15日 22時03分04秒 | 教育のこと

産んでよかったの」「欠席の電話連絡が苦しい」 不登校の子を持つ親の自責〈AERA〉

12/11(日) 8:00配信
189コメント189件

全国ネットのアンケートでは、子どもの不登校で約92%の家庭が「支出が増えた」と答えるなど、家計への負担が増えていることも明らかになった(photo gettyimages)


 不登校の子どもの数が24万人超と、過去最多になった。不登校の子を持つ親は、追い詰められてしまうことが多いという。AERA 2022年12月12日号から。 【写真の続きはこちら】


*  *  * 

 この子を産んでよかったの。

  関東地方に住む女性(40代)は長男が不登校になった時、自分を責めた。  昨年9月、当時中学1年だった長男は心身のバランスを崩し、不登校になった。女性は長男に学校に行ってほしくて、車で送迎し、どうにか登校させていた。

  だが、やがて長男は車から出られなくなり、そうしたことを繰り返すうち、家の玄関からも出られなくなった。女性は長男を無理に登校させない選択をしたが、長男は壁に頭をぶつけるなど自傷行為を始めた。

 「死にたい」「生まれてこなければよかった」「どうして俺を産んだんだよ!」  

毎日のように大声で叫び、女性に詰め寄った。2階のベランダから飛び降りようとしたこともあった。長男が苦しむ姿を見るうち、女性は自分を責めるようになった。 

■追い詰められていた  

親になってよかったのか、この子を産まなければこの子は苦しまずに済んだのでは……。自問自答を繰り返した

「当時の記憶がほとんどありません。それだけ、追い詰められていたのだと思います」 

 文部科学省の調査で、2021年度に30日以上登校せず「不登校」とされた小中学生は前年度から2割以上増え、24万4940人と過去最多となった。新型コロナによる行動制限などで、人間関係や生活環境が変化したことが影響したと見られている。 

 同時に、不登校の子を持つ親もまた、社会的に追い詰められ、孤独を感じている。

  NPO法人「登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク(全国ネット)」が10月、不登校の子を現在または過去に持つ保護者を対象に不登校に関するアンケートをネットで実施し、574人から回答を得た。

 「不登校がきっかけで、保護者に変化があったか」の問いに、約65%が「自分を責めた」と回答。他にも、約54%が「子育てに自信がなくなった」、52%が「孤独感・孤立感を覚えた」、約45%が「落ち込んだ、消えてしまいたいと思った」など、不登校の子の親の心身の負担が大きいことがうかがえる。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「学校に無理して行かなくてもいいよ」→親に不登校を放置された子どもの行く末は?

2025年01月14日 00時05分55秒 | 教育のこと

「学校に無理して行かなくてもいいよ」→親に不登校を放置された子どもの行く末は? 





写真はイメージです Photo:PIXTA
© ダイヤモンド・オンライン


小・中学校時代に不登校を経験した子どもたちの多くが高校に進学しており、学校にもっと行っていればよかったと思っていることを考えると、不登校になった時点で早々に学校復帰を諦めずに、まずは学校への復帰を全力で支援することが重要なのではないだろうか。


「嫌だったら無理して学校に行かなくてよい」と考える大人が増えている。しかし、不登校児の中には、実は登校を望んでいる子どもや、登校しなかったことを後悔している子どもも多いのだという。不登校状態を安易に放置することで、成人後の引きこもり問題にもつながるなど、かなり深刻な問題を引き起こすおそれもある。本稿は榎本博明『学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。


文部科学省の方向転換が


不登校を増加させた?


 このところ不登校に関しては、無理に学校に通わなくてもいいのではないか、という意見もみられるようになってきた。


 かつては不登校への対応としては、校門までの登校、放課後の登校、保健室などの別室登校など、工夫をしながら学校に戻れるように支援していくのが一般的だった。もちろん今でもそうした支援が主流ではあるが、何も無理をして学校に戻らせなくてもいいのでは、と考える人も出てきている。


 それには、学校が個人の個性に対応した教育ができていないなど、一斉教育に対する批判に代表されるように、学校に対する不信感が根底にあるように思われる。



 だが、きっかけとしては、2016年に文部科学省により「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が公布され、この法律に則って不登校の児童生徒の教育機会の確保を推進するために、2017年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」が公表されたことがあげられる。


 その基本指針では、「不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮」する必要があるとし、また支援に際しては「登校という結果のみを目標」にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえて、社会的に自立することを目指す必要があるとしている。


 そして、不登校の児童生徒が教育を受けられるように、教育支援センターや特例校、夜間中学などの設置の促進を訴えている。


 不登校の子どもたちに多様な教育機会を保障するのは大事なことである。だが、このような文部科学省の方針転換が不登校を増加させているとの指摘もある。


 無理して学校に行かなくてもよいと考える親が増えていることは以前から指摘されてきたし、そうした文部科学省の方針転換がこのところの不登校の急増をもたらしているのかどうかはわからない。


 だが、無理して学校に行かなくてもよいのではないか、という保護者がさらに増えるきっかけになったといえそうである。


学校に行かなかったことを


後悔している不登校児たち


 不登校の児童生徒の人数が増加し続けているだけでなく、成人後のひきこもりも増えており、2019年の内閣府による調査では、15歳から39歳よりも、40歳から64歳の中高年のひきこもりの方が多いことがわかり、深刻な社会問題とみなされるようになった。その後もひきこもりは増えており、2022年に内閣府により実施された調査では、15歳から64歳のひきこもり人数は約146万人と推定されている。


 このように不登校から成人後のひきこもりへの移行が懸念されるため、安易に、学校に行かなくていいとも言い難い状況になってきている。



 小・中学校時代に不登校を経験した子どもたちの多くが高校に進学しており、学校にもっと行っていればよかったと思っていることを考えると、不登校になった時点で早々に学校復帰を諦めずに、まずは学校への復帰を全力で支援することが重要なのではないだろうか。


 たとえば、文部科学省が2021年に実施した、前年度に不登校であった小学6年生と中学2年生を対象とした「令和2年度不登校児童生徒の実態調査」によれば、学校を多く休んだことに対して、小学6年生では、「もっと登校すればよかったと思っている」という者が25.2%であるのに対して、「登校しなかったことは、自分にとってよかったと思う」という者が12.8%というように、不登校を後悔している者の比率が不登校を肯定している者の比率の2倍となっている。


 中学2年生にいたっては、「もっと登校すればよかったと思っている」という者が30.3%であるのに対して、「登校しなかったことは、自分にとってよかったと思う」という者が10.3%というように、不登校を後悔している者の比率が不登校を肯定している者の比率の3倍となっている。


 このような不登校経験者を対象とした調査データからも、不登校に陥った際には、まずは第一に学校への復帰に向けて支援すべきであろう。


「学校に行きたくない」生徒の


8割以上が高校には進学している


 また、文部科学省による「不登校に関する実態調査~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査」では、中学3年生在籍時に不登校であった生徒に対して5年後に追跡調査を行っている。





『学校 行きたくない 不登校とどう向き合うか』 (榎本博明、平凡社新書)
© ダイヤモンド・オンライン

 その結果をみると、不登校だった生徒の85.1%が高校に進学している。さらに大学・短大・高専に進学した者も22.8%となっている。こうしたデータをみると、たとえ中学生時に不登校であっても、その後ほとんどの者が高校に進学していることがわかる。


 学校に通うことを軽視する風潮があるが、このような不登校経験者の意識やその後の進路についてのデータをみると、学校に行かなくてもいいと安易に考えるのは早計であるといってよいだろう。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不登校の小中学生が19万6千人に登り過去最多 特に中学進学時に急増、人間関係のストレスが原因か

2025年01月05日 23時03分10秒 | 教育のこと
不登校の小中学生が19万6千人に登り過去最多 特に中学進学時に急増、人間関係のストレスが原因か 


小・中の不登校過去最多「無理やり登校」避けるワケ
全国に特例校17校、オンライン活用した支援も

2021/11/24(水) 04:01



小・中学校における不登校の児童生徒数が2020年度、ついに20万人近くに達し、過去最多を記録した。しかも8年連続で増加している。その事実だけを取り上げれば深刻な事態のようにも見えるが、背景には、無理やり登校させようとすると自殺などにつながりかねないという理由で、登校を強制しないほうがいいという考え方が広がっていることもある。オンライン学習など不登校児童生徒を支援する手だても増えており、独自の取り組みをする自治体もある。なぜ学校に行きたくないのか、行けないのか、個々の児童生徒の思いに寄り添った取り組みが必要である。



2020年度、小中学校における長期欠席者の数は28万7747人、そのうち不登校の児童生徒数は19万6127人に及ぶことが文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で明らかになった。



この調査によると、不登校の児童生徒数が全児童生徒数に占める割合は、小学校で1.0%、中学校で4.1%で、全体との比較で見ればごくわずかという印象もある。だが、最近5年間でその割合は増える傾向にある。不登校児童生徒の人数そのものも8年連続で増えている。しかも、その約55%は年間90日以上欠席しているという。そうした子どもたちが学習の機会からシャットアウトされたままでいいはずはない。

不登校の児童生徒数の時系列的な推移を見ると、12年度までは小・中学校ともに横ばい的な動きだったが、13年度以降は増加傾向にある。1000人当たりの不登校児童生徒数の推移を見ても同様のことがいえる。

不登校の状況を詳しく見ると、事態の深刻さが浮き彫りになってくる。

欠席日数が30日から89日の児童生徒数は小・中学校の合計で45.1%だが、90日以上欠席した児童生徒数は54.9%にも及ぶ。小・中学校の年間授業日数はおおむね200日前後のところが多い。したがって不登校の児童生徒の半数以上は、授業日数の半分近くを欠席していることになる。1日も登校していない児童生徒数も、小学校で約2000人、中学校では約6000人いる。

また、学年別の不登校児童生徒数を見ると、小・中学校ともに高学年になるほど増えている。とくに小学校から中学校に進学すると、一気に増加していることがわかる。20年度の場合、小学6年生の不登校児童生徒数は1万9881人だが、中学1年生だと3万5998人で、実に1万6000人強も多い。中学校に進学した途端、不登校の子どもが増えるのはなぜか。



以下はリンクで>


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする