今は昔の物語>
2021年を迎えるにあたり、私たちはwithコロナでの新年の過ごし方を心がけることになる。そうした中、コロナウイルスの感染拡大が収まらないことを受け、全国8万社を包括する神社本庁は「三が日を避けた分散参拝を」といったアナウンスを出した。
これにより、例年であれば三が日に初詣に出かけていた人からは戸惑いの声も挙がっており、中には「ご利益がなくなってしまうのではないか」という心配もあるようだが、神社本庁は「ご利益は変わらない」として理解を呼びかけている。
写真はイメージです(以下同じ)
本当に、密を避けた三が日以外の初詣にご利益があるのか? 神社に聞いてみた。
ご利益に変わりはないのか
毎年300万人以上の初詣客を集める明治神宮の担当・平尾さん(男性)は、「来年は三が日を避けていただくようにお願いしております」と、明治神宮でも同様の見解であるということを話してくれた。また「その他、土日など混み合うと思われる日も避けてご参拝くださいますようお願いします」とのことだ。
それでも三が日を外れると、ご利益が薄れるかもしれないという心配の声についても聞いてみた。
そもそも“ご利益が目的”ではない
「そもそも、参拝はご利益が目的ではないんですよ。日々、生かされている感謝をお伝えしにきていただいて、その上でお願いごとなどをなさるのがいいかと思います」(同氏)。
普段はご利益を求めて初詣に出かける人も、今回は「この世界的厄災の只中で、なんとか生かされている」ことへの感謝の参拝にいくのもいいのかもしれない。
また、込み合う時間帯については「ホームページにも記載しておりますが、午前10時以降は参拝される方が比較的多い時間帯となります」と教えてくれた。さらに、例年であれば大晦日から元旦にかけて夜通し開いているが「今年は、大晦日は午後4時に閉門しまして元日の午前6時に開門する予定です」(同氏)と、異例の対応となるようだ。
年内の参拝でも問題なし
初詣を三が日以降ではなく、年内に済ませようという動きも広がっている。密を避けることを目的に、福岡神社庁から始まったと言われる「幸先詣」がそのひとつだ。2016年に人気を博したNHKの大河ドラマ「真田丸」のゆかりの地としても有名な真田神社に話を聞いた。
まず、いつまでのことを初詣というのか聞いてみると、担当の荻原さん(男性)は「通常は三が日に、ということですね」と話す。年内にお参りを済ませる幸先詣と初詣に、ご利益の差はあるのかについては「ご利益ということではないですね。
これまでも年内に一年の感謝をお伝えに来られる“お礼参り”をなさる方もいらっしゃいました」といい、幸先詣は「年内に神様へ今年一年間の神恩を感謝し、新たな年のご加護を混雑を避けてゆったり願い、新年の『幸(さち)』を『先(さき)』に戴くという意味のものです」とのこと。お礼参りと初詣がハイブリッドになった新しい生活様式下での新しい参拝の形のようだ。
密を避けた参拝を
神社などに訪れる人は「新しい参拝方法」と言われると、歴史が浅く無意味に感じるかもしれない。しかし、現在の形での初詣は明治時代にはじまったという説もあり、歴史ある神社の参拝方法も時代とともに変わっていくものなのだ。
密を避けるという、初めてのスタイルでの新年を迎える。新しい参拝タイミングとともに、ご利益を受け取りにではなく、日々生かされている感謝を胸に新しい心持ちでの参拝をしてみるのもいいかもしれない