トランプ関税に米国民が激怒!アメリカで急速に広まる「反トランプ」機運と、暴動発生までのカウントダウン(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース
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トランプ関税に米国民が激怒!アメリカで急速に広まる「反トランプ」機運と、暴動発生までのカウントダウン
4/11(金) 7:03配信
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現代ビジネス
誰が関税のツケを払うのか
by Gettyimages
アメリカでは、4月2日の大統領令によって、総計で年間8000億ドルに近い輸入関税が課せられることになった。2023年のGDP(購買平価)は約28兆ドルだったから、その2.8%という巨額の関税をいったい誰が払うのか。
それはアメリカの消費者だ。まず輸入業者が税関(財務省)に関税を払う。それを輸入品にかけてくるから、最終的にそのツケは全米の消費者に回ってくる。
消費者に響くようになるのは、遅くてもこの秋。その前に消費者が我慢できなくなるかもしれない。暴動が起こりやすい今年の夏の末、大都市では高関税撤廃の要求が爆発する可能性も小さくない。
1戸当たりにすると、税額は年間6300ドルに及ぶ。1戸当たりの平均年収は7万8500ドルだから、年収の8%がいわば税金として徴収される、というのが生活実感だろう。
日本も含め他国にとっては、関税のため高価になった輸出品を買ってくれなくなり、輸出額が減って大変なのは確かだ。そのためそちらに関心が偏ってしまっている。
だが、その前にまずアメリカの消費者が直接の被害を蒙る。この動かしがたい根本的事情が、とかく他国では、経済の専門家も含めて、頭に入っていない。これでは大局を読み損ね、むら気のトランプに振り回されるだけだろう。
誰がデタラメで勝手放題なトランプの手を縛るか
トランプが関税強化の大統領令に署名した翌日の4月3日、共和党と民主党の上院幹部議員が「2025年貿易検討法(仮訳)」を共同提案した。
法案によれば、関税強化の影響を大統領から議会に報告させ、議会が60日間に承認しなければ、大統領令は無効になる。つまり、トランプの手を議会が縛るというわけだ。
だが、議場では賛成が得られず、とりあえずは廃案になった。とは言え、両党共同提案という点が肝心だ。反トランプの機運は、政党の勢力争いを超えて、広範な社会的要求として形成されていくことを予想させる。
事態はそちらに向けて、急速に、そして確実に動きだしている。第一は株価だ。アメリカの株価指数のS&P500は、4月の1日と2日に10.8%の下落を記録した。時価総額にして5兆ドルあまりが消えた。
業界でも、四方八方、聞こえるのは悲鳴ばかり。全米製造業者協会はコスト高を、米商工会議所は物価高を挙げて、アメリカは経済的に大打撃を受けると声明を発表した。
米連邦準備理事会のパウエル議長は、講演会で「失業率の上昇とインフレ率の上昇という双方のリスクが高まる非常に不確実な見通しに直面している」と述べ、高関税の影響がどのようにして現れるかを予想して見せた。
そして、予想された通りに、4月5日の土曜日、首都ワシントン、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、アトランタの大都市を中心にして、全米の50カ所以上で、1200あまりの反関税集会が繰り広げられた。参加者の合計は何十万にも達したと伝えられる。共通スローガンは「hands off(手を引け)」だった。
トランプの手を縛るのは、消費者大衆しかないのは明らかだろう。言論界も学界もトランプからの弾圧におびえているから、彼らには期待できそうにない。
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高関税の元凶は貿易赤字、貿易赤字の元凶は財政赤字
かいつまんで大筋を言うと、票を集めるための税収を上回る財政支出、その結果の財政赤字が諸悪の根源になる。赤字を埋めるため、国債(TB, 米財務省債権)を増発する。
TBが売れるように、金利をやや高めに設定する。他国よりも利率がよいため、より高利潤をもたらす米ドルが買われ、ドル高を招く。
ドル高になると、他国の輸出品が安く買えるので、国内の工場を閉めて(産業の空洞化)、他国からの輸入品を買いすぎて、貿易赤字が大きくなる。
こうしてドル札とTBを輸出して、製品を輸入する――紙片と実物との交換(金融が主導するグローバライゼーション)を続けると、紙片の信頼性が問われるようになる。最後は信頼性をつなぐアメリカの支払い能力、ドルの流動性(交換の容易性)、世界的決済にドルが占める率にかかってくる。
ちなみに全世界の取引の決済で、現在ドルが占める率は49%、ユーロが31%、人民元が5% だ。ドルの占有率が30%台に低下すると、世界はいくつかの経済圏に分裂するだろう。
累積した貿易赤字をへらすには、戦争による踏み倒しは別として、高圧的な度合いが強いのから穏やかなのへと、順番に挙げると、債務国(アメリカ)のインフレ、債務の塩漬け、関税の一方的釣り上げ、債権国と債務国の協調介入(前例は1985年のプラザ合意、日本とドイツがドルを買った)などが並ぶ。
協調介入を飛ばし、いきなり関税の一方的大幅引き上げに打って出てきたトランプは乱暴極まりないが、それだけでなく自分で自分の足をピストルで撃つ愚挙を犯した。というのは、トランプは何をするか分からず、不安定だという印象を強め、ドルへの信頼性を著しく低下させてしまったからだ。そもそもドル防衛の筈が、逆にドル毀損になってしまった。
ドル防衛のウルトラCが考えられないわけではない
ドル防衛のためには、財政を黒字にしなければならないが、アメリカの財政赤字は深刻だ。3月25日、格付け機関のムーディは「米財務証券の格付け(最上位のトリプルA)を維持するには、アメリカの借り入れ力は、他の最上位国にくらべて低い」と、分析結果を発表した。
この時期にこのように警告しなければならないのは、先行きが暗くなるばかりだからだ。
財政赤字の対GDP比率は、2025年100%から2035年130%へと膨れ上がる。TBへの利払い費が税収に占める率は、2021年9%だったが、2035年30%へと高まる。その結果、2025年から先は、予算のなかでTBへの利払いに宛てられる額のほうが防衛費よりも大きくなる。防衛よりも借金払いに追われるようになってしまう。
国家予算を黒字にするウルトラCとして、1)医療保険と年金の公営一本化、2)国内工業生産の再建、3)防衛体制の抜本的合理化――海外駐留よりも本土防衛、宇宙から衛星とミサイルで敵を抑制する――の3本柱が一部で論じられてきた。
だが、政治課題とならないのは、まさにこれら3本の柱が、金融主導のグローバライゼーションを支えてきた政策――経済格差・産業空洞化・海外派兵――に対して真逆だからだ。
そこに突破口を開くのは、政治家の政見などではなく、民主主義の回復のもとでの消費者の要求、国民多数の一貫した強い願い、それしかないだろう。
それも時間との競争だ。もつれると全人類を滅亡させる第3次大戦しかない。
赤木 昭夫(評論家)