和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

あとがき。

2010-06-02 16:24:10 | いつもの日記。
ストレス発散のため、脊髄反射小説【SS】を書いてみたよ!
取り敢えず、さくっと3作。
今日のところはこの辺でカンベンしといたる。

えーと、例によって、読み返したりしてません。
そんなわけで、今読み返しながらあとがきを書いていこうと。
そういう企画。

◆子猫を拾う
1作目ということで、軽く。
取り敢えず、猫、という単語だけで書き始めてみました。
で、ひとりごとってのもアレだなーと思い、猫に喋らせてみた次第。
何というグダグダな世界観だろうか。
しかし、アレですね。
これ、意外とこのまま何作か続きが書けそうですよね。
猫が自在に変身できる設定にすれば、立派なエロコメの出来上がり。みたいな。
でも、そうはならない。
それが和泉作品。

◆死神が来りて
これは・・・何だろう。
都市伝説から入ったのかな。魂の重さ、っていう。
で、魂→死神、という連想から1作出来上がり。
死神のキャラがサラリーマン風なのは、僕がサラリーマンだからでしょう。
今はニートだけどな!
名刺差し出してやたらペコペコする死神って、なんかいいなーと。
そんな感じで書きました。
悪魔エンドになったのは、なんでだろう。
何となく、としか言いようがない。

◆涙
前2作が軽いノリだったので、ヘビーなものが書きたいな。と。
そうして書き上がった作品は、ヘビーというよりただのキチガイ小説に・・・。
いや、ほら、温度差の違う人っているじゃない?
あれがウザいなーっていうのと、自分がウザい方の立場だとしたら辛いなーと。
ま、今やそんな熱量もないんですけどね。
おじさん、枯れてますからー。えへへ。
作中のバンド「TRUST」は、同名のバンドとかありそうですよね。
取り敢えずググってあんまり有名なものはないというのを確認しましたけど。
あくまでも本作に登場する名称や事件は全てフィクションですのであしからず。

以上、3作でした。
何も考えずに書く小説は楽しいねえ。
ちょっと虚しいけども。
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【SS】涙

2010-06-02 16:00:31 | 小説。
「これ、超泣けるって」
そう言って友人は1枚のCDを差し出した。
「何これ」
「TRUSTってバンドの新曲。ヤバイって。マジ泣く。号泣する」
言いながら、既に友人の目は軽く潤んでいた。
・・・オイオイ、正気かこいつ。
音楽を聞いて泣くなんて、僕にはイマイチ想像できなかった。
別に、音楽自体が嫌いなわけではない。むしろ好きだ。
だけど、泣く・・・ねえ?
それは悪いけど理解できない。
影響を受けやすいこいつの方が特殊なんじゃないかとさえ思う。
僕は、部屋のプレーヤーにCDを入れ、再生ボタンを押した。

なるほど、それは確かにキレイな曲だった。
キレイで、切なくて、悲しい曲だった。
「うん、普通にイイんじゃね?」
僕は頷きながらCDジャケットを眺める。
なるほど、TRUSTか。ノーマークだった。今後、チェックすることにしよう。
「え、いやいや、お前ちょっと待てって。何でそんな冷静なのさ?」
友人を見ると、目を腫らしてボロボロ涙を流していた。
うわ、ガチだこいつ。
「そんなことないぞ、ちゃんと感動してる」
嘘は言ってない。
本当に、良い曲だと思うのだ。
ただ、やっぱり泣くほどではないと思うし、実際全く泣きそうになんてならない。
「ちょ、お前、それはないって。もう一回聞いてみろよ!」
やたら必死に友人は訴えてくる。
その迫力に押され、僕は再度その曲を再生した。
今度は歌詞カードをしっかりと追いながら、じっくりと聞く。
ボーカルのメロだけでなく、ギター、キーボード、ベース、ドラムも極力捉える。
うん、聞けば聞くほど――良い曲だ。こんなバンドがあったなんて、知らなかった。
だけど、それでも、泣くのは何か違うというか。
歌詞は、死んだ親友を追想するというものだった。
悲しい、寂しい、辛い。
序盤はそういうネガティブな思いに満ちている。
しかし、中盤から後半にかけて、それでも自分は生きなければならないと考え始める。
死んだ親友の分も生きるという思いと、このまま落ち込んでいても誰も喜ばないという思い。
親友を忘れるのではなく、ただ人間らしく前を向いて生きるべきなのだというメッセージ。
割とありふれた内容ながらも、ストレートに感情を揺さぶる歌だった。
良い、曲だ。
それは間違いない。
万人に勧められる、名曲だ。
「確かに泣ける感じっていうのは分かるけど、僕自身は泣かないかな」
それが、率直な感想だ。
名曲だからって、100人中100人が涙を流すとは限らないだろう。
受け取り方は様々だし、感受性も様々だ。
「・・・は?」
だけど。
友人には、それが納得行かなかったらしい。
「マジで言ってんの、お前?」
「え・・・いや、まぁ、マジ・・・だけど」
すると、涙でグシャグシャになった顔を、今度は怒りに歪めて言った。
「信じられねぇ! お前、本当に人間かよ。まともな人間だったら泣くだろ絶対!」
・・・これにはさすがにカチンときた。
別に、こいつが泣こうがどうしようがそれは本人の自由だし、本人の感覚だろう。
だけど、それを強要される謂れはないし、まして人間じゃないとまで言われる筋合いはない。
「僕は別に悪いとは言ってねーよ。ただ、琴線には触れなかったってだけで」
「それがおかしいんだよ。真人間だったらゼッテー泣くはずだね!」
「ちょ、お前それ言い過ぎじゃね? 別にお前の感覚が全てってことねーだろ!」
「いいや、これに関しては泣かない方がおかしいに決まってる」
どうも譲る気はないらしい。
駄目だ、全く話にならない。
こんなくだらないことでケンカなんかしたくはないのだけど。
僕は、どちらかというと感情を表に出さないタイプだ。
だから、この怒りをどう表現し、どうぶつければいいのか、よく分からない。
結果、沈黙するだけだった。
・・・そして、それがまた彼を苛立たせる結果となったらしい。
「わかった、お前、人が死ぬってことが分かってねーんだよ」
「・・・は?」
何の話だ、と思って、この曲の歌詞についてだと思い至る。
「人の死が理解できてないから、この曲のメッセージが伝わらねーんだろ?」
人の死。
理解できているかと言われれば、それは厳密に理解しているとは言い難い。
高校生の若造に何が分かるのだ、ということもある。
それ以前に、身内や近しい人が亡くなった経験もない。
「だったら」
立ち上がると、彼は自分の鞄からペンケースを取り出した。
「分からせてやんよ」
更に、ペンケースから大きめのカッターナイフを取り出す。
何をする気だ――と思った刹那。

彼は、自らの首を、掻き切った。

飛び散る鮮血。
部屋は一瞬にして赤く染まった。
カッターナイフは、迷いなく、激しく首を切り裂いたらしい。
慌ててその首を押さえるが、血が止まる気配など全くない。
――親友が、死んだという内容の曲。
それを、理解させるためだけに、こんなことを?
「・・・ありえねーよ! お前、絶対おかしいよ! 僕なんかより絶対!」
信じられない。信じられない。信じられない!
何が彼をそうさせるのか。
そもそも、今思えば最初からおかしかったのだ。
いくら感動したと言っても、押し付けるように聴かせてきたのも変だったし。
僕が泣かなかったからと言って激昂するのも不自然だ。
今日、ここに――僕の部屋に遊びに来た時から、ずっと。
血は、止まらない。
想像もできないほどの量の血が、ドクドクと流れ続けている。
意識はもうない。
血が抜けているからなのか、体温は急速に下がっていくように感じられる。
死――。
そこで僕は、ようやく救急車を呼ぶことを思いついた。
僕自身、相当混乱している。何が何だか分からない。
慌てて救急車を呼んだが、目の前には血溜まりが広がるばかり。
とても、助かるようには思えなかった。
一体、何だと言うんだ――。
血塗れの友人を抱きかかえて、僕はその日ようやく涙を流した。
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【SS】死神が来りて

2010-06-02 15:22:41 | 小説。
魂には、重さがあるという。
人が死んだ瞬間、その人の身体は僅か数グラムではあるが、軽くなるのだそうだ。
それが、魂の重さ。
魂というモノの存在の照明。
人の身体の中には、魂が確かに存在し、それは死を持って消滅するのだ。

さて、今僕の目の前にはスーツ姿の男が立っている。
僕に向かって差し出すその手には、小さな名刺。
『死神』
カード状のその紙片には、そんな現実離れした単語が印刷されていた。
死神。
黒いローブを見にまとい、大きな鎌を持った異形の者。
架空の、想像上の存在。
バカバカしい――いつもの僕ならそう一笑に付していたことだろう。
しかし。
「信じられませんかね?」
自嘲気味な笑みを浮かべながら、死神を名乗る男はそう言った。
「いや――そんなことは、ないですけど」
僕は、その存在を信じることができていた。
「おお、信じて頂けますか」
だって。
「だって、そこに――僕の身体がありますから」
そう。
僕は、僕の身体を見下ろす形で宙に浮いていた。
幽体離脱という言葉を聞いたことがある。今経験しているこれがまさにソレなのだろう。
男はなるほどという顔で言った。
「それもそうですね。ご自身の目で確認されているのですから」
「で、その死神――さん? が、僕に何か用ですか」
恐る恐る、訊ねてみる。
「ええ。実はですね、大変申し上げにくいのですが」
やたらペコペコと頭を下げながら、死神は言う。
「貴方は、あと10分程度でお亡くなりになります」
「あー・・・」
驚かなかったわけではない。
だが、それほどの動揺はなかった。
それは――この状況を認識した時点で既に覚悟していたことだったから。
「それで?」
「はい。それで、貴方の魂をですね、我々にお譲り頂けないかと」
是非ご検討のほどを――と、丁寧にお辞儀をする。腰の低い死神である。
いやいや、僕としては強制的に奪われるものかと思っていたのだけれど。
「その口ぶりだと、他に魂を欲しがってる人が・・・組織が? いるんですかね」
「そうですね、我々死神以外にも悪魔がいます。また、誰にも渡さない方もいらっしゃいます」
「誰にも渡さないっていうのは、もしかして――」
「ええ、そういう方は幽霊として留まることになりますね」
ああ、やっぱりそうなるのか。
つまり、僕としては3つの選択肢があるわけだ。
死神に魂を譲る。
悪魔に魂を譲る。
誰にも譲らず幽霊になる。
ふむ。これではまだ情報が足りないな。
「それで――貴方に僕の魂を渡すと、具体的にどうなるんでしょうか」
「あまり具体的なことは機密事項ですのでお教えできないんですが――」
「そう言われても・・・判断基準がないので、どうしたものか」
「そうですね、一般的には、魂を初期化して現世に戻す・・・ということになります」
それはつまり、生まれ変わりとか転生とかいうことだろう。
だとすればそれは僕にとって理解しやすい流れだ。
死んだ人間は、違う人間に生まれ変わる。
取り立て確立した宗教観を持っているわけではないが、漠然とイメージを掴める。
「では、悪魔に魂を渡した場合は?」
「その場合、悪魔と契約することになります。契約内容は千差万別ですが」
「魂と引き替えに願いを叶えてくれる的な?」
「そうですね、概ねその認識で間違っていません」
なるほど。
それだったら――
「願いを叶えてくれるだけ、悪魔の方が得なんじゃないですかね?」
「いえ、一概にそうは言えないのですよ」
慣れた口調で、諭すように反論してきた。
多分、みんな考えることは同じなのだろう。
「悪魔に魂を渡した場合、現世に戻ることができません。同じ悪魔になります」
「なるほどね」
細かい部分は分からないけれど。
人間に生まれ変わりたければ死神に魂を渡せば良い。
願いを叶え、悪魔として生きたければ悪魔に魂を渡せば良い。
「じゃあ、僕は悪魔の方に魂を渡そうと思います」
「本当ですか? 悪魔として生きる・・・と」
「ええ。別に、生まれ変わりたいとも思いませんし」
「それは――今回の生が満足なものでなかったということでしょうか」
「そうですね、まぁ正直なところ満足ではなかったですね。あまり執着もありません」
「なるほど。しかし、今回がそうだったからと言っても次は分かりませんよ?」
「確かにそうですが――にしても、僕はもう人間として生きたいと思えない」
「そうですか・・・」
少し残念そうに、死神は俯いた。
「そうなると、今後は競合相手となってしまいますね」
「あー・・・そうか、そうなるのか」
死神と悪魔は、魂を巡る競合相手。
悪魔に魂を渡すということは、そういうことだ。
「まぁ、狭い業界ですから。またどこかでお会いすることもあるでしょう」
死神は、何だか妙に世俗的なことを言って手を差し出した。
握手・・・だろうか。
僕はおずおずとその手を握る。
「では、今後も頑張ってください」
「あ、は・・・はい」
頑張れ、と言われても。
今の僕には、今ひとつ実感が湧かないのだけれど。
「それでは・・・」
握手の後、死神は早々に立ち去ろうとする。
「あ、ちょっと良いですか」
僕は、それを慌てて引き止めた。
「はい?」
「ええと・・・こういうこと聞いて良いのか分かりませんけど」
「ええ、何なりと」
「悪魔・・・も、こうして待ってれば向こうからやってくるんですかね?」
「そうですね、いずれいらっしゃると思いますよ。この契約は自由競争ですから」
「なるほど」
「それでは、今度こそ」
「はい。色々ありがとうございます」
お互いに一礼。
これもまた妙に世俗的というか、現実的で何だかおかしかった。

そして僕は、悪魔を待つ。
人間としての生を捨て、自らも悪魔となるために。
さっきの死神を見る限り、死後の世界とやらも現世とそう変わらないようだ。
心配することもないだろう。
そして、同時に少しがっかりもしていた。
人間を辞めて、それでも世界は変わり映えせず。
僕はきっと同じような不満を持って過ごすのだろう。
明日も。
明後日も。
それもまぁ、仕方ないか。
僕にできることは、これ以上何もないと理解していた。
それよりも。
今は、悪魔と契約したときにどんなことを願うか、考えておくことにしよう。
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【SS】子猫を拾う

2010-06-02 11:22:17 | 小説。
子猫を拾った。

ウチのアパートはペット厳禁だ。とはいえ、路上に捨てられた子猫を放置するのも忍びなく。
まぁ、少しの間ならバレないだろう。そして何事もバレなければ問題はない。
取り敢えず、牛乳を温めて飲ませてやる。
最初は恐る恐る舐める程度だったが、無害と分かると勢い良く飲み始めた。
「うまいかー?」
平坦なトーンで語りかけてみる。
「うまいにゃー」
顔を上げて答えた。うまいらしい。
「取り敢えず、缶詰も買ってきたけど食う?」
「あ、頂きますにゃー」
缶を開け、さすがにそのままだとマズイだろうと思って皿に移す。
牛乳を入れた皿の横に置くと、
「ありがとうございますにゃー」
と言ってもくもくと食べ始めた。

「ってか、お前さ」
一通り食べ終えたところを見計らって、問いかける。
「にゃ?」
「その語尾の『にゃー』ってのは何なの? 猫ですよアピール?」
「いや、こうするとご飯が貰えると母から・・・」
「嫌な処世術だな! とにかく、無理してる感がミエミエなんだけど?」
「あー、やっぱ分かります?」
てへ、と照れる子猫。
可愛い。そこがまた癇に障る。こいつ、自分が可愛いこと自覚してやがるな。
「ぶっちゃけ、あたしも違和感はあったんだー」
「じゃあヤメとけよ」
「んー、でも、母の遺言だし? 実際、こうしてご飯も食べられたし?」
「ああ、お母さんは亡くなってたのか・・・」
悪いことを言ったかもしれない。反省。
「いや、正確には失踪? あたしを放ったらかしにして、違う人間のところに」
「まじでー」
何だか猫社会も十分に世知辛いようだ。
幼い俺を放置して浮気相手のところへ行った母を思い出して、失笑した。
「で、お前これからどうする気?」
「ん? できれば末永くお願いしたいところだけど」
「あー、ムリムリ。ここペット禁止なんだわ」
「猫差別だー」
「なー。イマドキ流行んないよなー。大家が頭固いんだよ」
ちなみに、犬も兎も小鳥も駄目だ。だから厳密には猫差別ではない。
「うーん、それは困ったにゃー・・・」
語尾が復活していた。
今のは違和感なかったし、本当に口癖なのかも知れない。
「はっ。ていうか、あたし今既にこうして部屋にいるんだけど?」
今頃気付いたのかこいつは。
まぁ、子猫だしな。それも仕方ないか。
「大丈夫、1日2日くらいならバレないさ」
「・・・1日2日経ったら、追い出す?」
「おう」
「酷い! 鬼! 悪魔! 鬼畜! 猫差別!」
「冗談だ」
こいつは結構からかうと面白いかも知れない。
ま、喚かれても困るからほどほどにするけど。
しかし。
実際、どうしたもんかね。
新しい飼い主を探すか、保健所に連絡するか。
保健所は・・・多分、殺処分だな。
この選択はさすがにダメだろう。まさに鬼畜である。
となると。
「明日にでも、新しい飼い主を探してみるよ」
「おお。それはありがたい」
「あんま期待すんなよ? 友達を何人か当たってみるだけだから」
「いやいや、それだけでも十分デス」
畏まって、ぺこりとお辞儀する。なかなか礼儀正しいじゃないか。
「・・・ま、最悪黙ってここに居つけば良いわけで」
「テメェ今ぼそっと凄いこと言ったな?」
「何のことかにゃー?」
あーこの野郎! その可愛さにイラッ☆とくるネ!
「まーまー、そんなに怒らないで。あんたにとっても悪い話じゃないよ?」
悪い話じゃない?
どういうことだろう。
「上手いこと長く匿ってくれれば、あたし猫又になれます」
「あー、聞いたことあるな」
「そして、あたしは雌です」
「まぁ、何となく気付いてはいた」
「猫又は人間に変身できます」
「ほう。で?」
「あたしがあんたの理想の嫁にへ~んしん☆」
あー・・・。
ちょっと良いかも知れない。
そう思った直後、自分の情けなさに頭を抱える。
えーえー、そりゃーもう長いこと彼女もいませんよ。
でも、猫に慰められるってどうよ・・・。
「だから、今のうちにあたしに恩を売っとくと良いよ? 猫は義理堅いのだ」
「へいへい・・・」
そこで、ふと気になることが。
「お前さ」
「にゃ?」
「猫又になるまで・・・どれくらいかかるの?」

「あと10年かな」

「無理だー!」
どんだけ気ィ長いんだよ!
俺もう今年で20なんだけど!
10年後って、30かよ! うわ、おじさんじゃん!
っていうか、何で俺はショックを受けてるのかな?
マジで猫又を嫁にする気だったのか?
二重にショックだ。
「まぁまぁ。実際、10年後でもあたし10歳だよ? 児童ポルノだよ?」
「猫に言われたくねぇよ!」
確か、猫の10歳って人間換算で50歳とか60歳じゃね?
むしろ熟女じゃねぇか!
そっちの趣味もねぇよ!
「・・・えー、そんなわけでお前は明日保健所へ連行することに決まりました」
「保健所!?」
「大丈夫、今はガス室とかの設備が充実してるらしいぞ」
「ガス室!?」
「個室完備、豊富なガス量、順番待ちの間は高級ミルク飲み放題」
「おー・・・って、やめて!」
「ちなみに、ミルク飲み放題は嘘だ」
「・・・ガス室は?」
「そこは本当」
「最低!」
まだ幼い爪と牙で襲いかかってくる。
しかしそんなものはくすぐったい程度だった。
「ふはははー。効かんなー」
つんつん額をつつきながら悪の親玉っぽく言ってみた。
あー、楽し。

しかしなー。
10年は無理にしても、大家に見つかって怒られるまでは面倒見てやっても良いかも。
そんなことを考える。
ま、明日友達に聞いて回って、ダメだったらこっそり飼ってやることにしよう。
暴れ疲れてタオルにくるまり眠る子猫を見ながら、そう結論づけた。
――取り敢えず、今のうちに名前を考えておいてやろうかな。
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