和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

もったいない。

2010-06-11 18:15:34 | いつもの日記。
昨日言った通り、取り敢えず書いてみました。
このまま日の目を見ずに消え去るのも勿体無いと思って掲載してみます。

タイトルは「すくえあ。」。
これは多分、変えません。
でも、中身は大幅に変える可能性あり。

取り敢えず、キャラの喋り・考え方に重きを置いてキャラを固めながら書いてみました。
2話分書いたものの、実は次の3話目が一番気に入ってる箇所だったり。
もう1話頑張って書けばよかったかな。
でも、そこまで頑張れませんでした。

今回のコンセプトと言うか、書きたかったのは、
ボクっ娘・男の娘・百合っ娘・ガチホモの4人が織り成す四角関係
という何ともアレな話。
みんなが変だと一周して普通だよね。みたいな。
ちゃんと最後まで書けるといいな。
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すくえあ。(2)

2010-06-11 17:06:49 | 小説。
「じゃ、行こうか」
「は・・・はい」
昼休み。
誠と雅美は、昼食後にバスケ部の部室へと向かった。
昨日佐由理に言われた、村雨という3年生からの呼び出しの件である。
「でも、本当に何の用なんだろうね?」
「うーん・・・ぼく、心当たりないですよ」
顔も名前も知らない人間からの呼び出し。
不思議だったし、ちょっと怖かった。
待ち合わせ場所には不良が待ち構えていて、暴行・カツアゲ――
なんてのは誠の妄想だけども。
部室棟は、昼休みに使われることはあまりない。
特に運動部の部室は完全に物置と化しているため、そこで昼食を取るということもまずないのだ。
人気のない場所に呼び出しておいて――
と、また妄想が繰り広げられるのを、頭を振って追い払う誠だった。

バスケ部の部室は、部室棟2階にあった。
そのドアを、雅美ではなく誠がノックする。
「すみません」
一瞬ののち、
「おう、入れー」
野太い、大きな声が中から聞こえた。
恐る恐るドアを開く。
誇りっぽい空気の中に、バスケットボールやネット、ユニフォームなどが乱雑に置かれていた。
そして、中央のパイプ椅子にどんと座っている男子生徒が、ひとり。
――村雨充。
「あれ、ふたりで来たのか?」
「ええ、僕はつきそいで」
誠は、雅美をかばうように前へと乗り出しながら答える。
村雨はそんなふたりに少し困ったような表情を浮かべた。
「用があるのは――その、東城・・・だけなんだが」
「それでも」
小さな怯えを、ぐっと胸の奥に押し込んで。
誠は堂々と言った。
「心配だから、僕も同席します。僕は――マサミの彼女ですから」
「か、かかかか彼女ォ!?」
ガタン!
椅子から立ち上がりながら素っ頓狂な声を上げる村雨。
「か、彼女・・・そうか、彼女、いたんだな」
雅美を見ながら、だけど目を泳がせながら、村雨は腹から声を絞り出した。
「え、あ、はい。彼女の夏目誠さん、です」
何故か紹介をする雅美。
ああ、これはどうもご丁寧に――とはならない。当然。
いまいち空気の読めていない雅美だった。
「だ、だが!」
そんな空気を打ち破る叫び声。
「そんなことで、俺は負けねえ! 東城、いいかよく聞け!」
「は、ははは、はい!?」
その迫力に、雅美はすっかり萎縮している。
誠はそんな雅美をさらにかばうべく、後ろ手で自分の陰へと追いやった。

「東城、俺は――お前が好きだぁぁぁぁ!」
「何だと!?」
「ええええええ!?」

衝撃の告白。誠的には、昨日の後輩女子からの告白よりも更に衝撃的だった。
「いやいやいや、意味が分からない! 先輩、マサミは男子ですよ!?」
「知っている!」
「お、おおおお男同士ですよ!?」
「俺は一向に構わん!」
「こっちが構うわぁぁ!!」
誠の警戒レベルが一気に最大値に達する。
危ない。この男は、最悪に危ない。
ちらりと雅美を見やると、少し泣きそうな顔をしていた。当たり前のリアクションだ。
「東城! 体育館で初めてお前を見て以来、お前のことが忘れられない!」
「病気だそれは!」
「愛らしい瞳、白い肌、ふわりとした髪、美しい声、まるで天使のようだ!」
「男に対する褒め言葉になってない!」
「そこの男女とはすっぱり別れろ!」
「誰が男女か! 僕はれっきとした女だ!」
「そして俺と付き合ってくれぇぇ!」
もはや、村雨の目には誠など写っていない。
最愛の人――雅美へ向かって、突撃してきた。
「マサミに近づくなホモ野郎ォォォ!」
迫り来る村雨に、豪快な右ストレート一閃!
誠の拳は、村雨の顔面を見事に捉えた!
完璧なカウンターが決まり、村雨は後ろへ回転するように吹き飛んだ。
ゴン、と地面で頭を打つ鈍い音が、確かに聞こえた。
「あ、あのぉ・・・ぼ、ぼくは、マコトせんぱいと付き合ってるので、そういうのはちょっと無理です」
恐らく気絶しているであろう村雨に、雅美は律儀に答えた。
「マサミ、逃げるよっ!」
「あ、ま、マコトせんぱいっ」
そして、誠に手を引かれながらその場から逃げ出すのであった。

村雨が気を失っていたのはほんの5秒くらいだった。
見事なまでの一撃に、何が起こったのか今ひとつ認識できていない。
ただ、鼻の辺りが異常に痛かった。
「彼女・・・か。だが、俺は諦めん。諦めんぞッ!」
去り際の雅美の言葉が聞こえていない村雨は、ぐっと拳を握りしめる。
「大丈夫、村雨君?」
「ん・・・おお、粂か」
村雨がゆるゆると起き上がると、そこには佐由理が立っていた。
「見ていたのか」
「ええ、仲介した手前、さすがに気になっちゃって」
「そうか・・・恥ずかしいところを見られたな」
後輩の男子に振られたことだろうか。それとも後輩の女子に殴られて気絶したことだろうか。
どっちも死ぬほど恥ずかしいことだな、と佐由理は思ったが、敢えて口にはしなかった。
「しかしまさか、男子に愛の告白とは思わなかったわぁ」
「ふ・・・引いたか?」
「ふふ・・・男子に、男子が、愛の告白。ふふふ、リアルBL・・・ふふ」
「お、おい、粂・・・?」
「あ、ああ、ごめんなさい。軽くトリップしちゃった」
「そ、そうか」
「とにかく。私は、応援するわよ?」
「おお、本当か!?」
「ええ、東城君、可愛いものね。是非頑張って、落としちゃってちょうだい」
とても良い笑顔で、佐由理はそう言い放った。
――これは、凄く面白いことになってきたかも知れないわ。
無邪気に喜ぶ村雨を尻目に、佐由理はいやらしく微笑むのだった。
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すくえあ。(1)

2010-06-11 17:04:32 | 小説。
――放課後。
帰宅部の生徒は早々に帰宅し、部活動に勤しむ生徒はそれぞれの部室やグラウンドで励んでいる。
そんな時間の、人気のない校舎裏。
そこに二人の生徒が立っていた。

ひとりは、1年生の初島はつしま美紀みき
ゆるくウェーブのかかった栗色の髪は肩まで伸びており、背は低め。どことなく気品漂うお嬢様である。

ひとりは、2年生の夏目なつめまこと
細身だが背は高く、鋭い目付きと相まって精悍なイメージ。知的でクールな様から、後輩から人気だ。

美紀は、今日この場所に誠を呼び出していた。
誠の方も慣れたもので、今から何を言われるのか概ね予想が付いている。
衝撃的な告白でありながら、どこか予定調和な、不思議な光景だった。
「誠先輩」
意を決して、美紀は震える唇を開いた。
イメージトレーニングは何度も重ねた。大丈夫、言える。大丈夫、大丈夫、大丈夫。
瞳を閉じて、繰り返し念じる。
「誠先輩・・・す、好きですっ。あたしと付き合って下さい!」
――言えた。
お嬢様育ちであまり異性と触れ合うことのなかった美紀にとって、初めての告白。
だが。
「ごめん、僕、恋人がいるから」
誠はあっさりと、冷たくそう言い放った。
バッサリと、一刀両断である。
「そ――そう、ですか」
一大決心をして臨んだ初めての告白は、見事に散った。
視界がぼやける。美紀は、うっすらと涙を浮かべていた。
しかし、それを見ても誠は眉ひとつ動かさない。
「ごめんなさいッ・・・!」
吐き捨てるようにそう言って、美紀は走り去った。
悔しかった。悲しかった。切なかった。
美紀の想いは、全く届いていなかった。
そして、残された誠は。
「・・・ふぅ」
少女の小さな背中を眺めながら、小さく溜息を吐いていた。
誠も、何も感じ入るところがないというわけではない。
ただ、慣れていた。
女の子から呼び出されて愛の告白。対面でなくても、電話で、メールで、手紙で。
ひと月に3回程度のペースで行われる告白を全て丁寧に断っていれば、嫌でも慣れる。
どこか心苦しくもあったが、それ以上に解せなかった。
どうして自分のことなど好きになるのだろう。おかしい。間違っている。
基本的に、誠はそんな風に考えていた。
ここまで冷徹な対応ができるのも、そういう考えがベースにあるからかも知れない。

「さて」
美紀が走り去ってたっぷり3分は経過した。
「僕も、そろそろ行かなくちゃ」
鞄を小脇に抱えて、校門へ向かう。
今日もいつも通り、恋人と待ち合わせをしていた。
高校生であるふたりにとって、それは数少ない逢瀬であり、コミュニケーションであった。
自由になるお金も時間も限られているから、そうそう遊びまわることもできない。
だけど、それでも十分に楽しいと思えた。
一緒にいることが、何よりも幸せなことだった。
「マコトせんぱいっ!」
校門で、誠に向かって手を振る小さな人影。
「お待たせ――」
先程の冷たい様子はどこへやら。誠は優しく微笑んで、手を振り返した。
「ちゃんと、断ってきたよ」
「そうですか。いつものことだけど・・・相手の娘、可哀想だったかなぁ」
「じょ、冗談じゃない! 僕には、マサミがいるからね」
「・・・えへ」
嬉しそうに微笑み、照れるマサミ。
何て可愛らしいんだろう!
思わず抱きしめそうになるのを、ぐっと堪える。
「で、でもっ。やっぱりちょっと、心配・・・カモ」
「何がさ?」
「だってほらっ、マコトせんぱい・・・モテるから」
「なっ・・・」
「うちのクラスにも、マコトせんぱいイイよねって言ってる娘いっぱいいるんですよ?」
「へ、へぇ・・・」
あんまり嬉しそうではなかった。
むしろ、面倒臭いなぁ、などと考えている誠である。
「大丈夫、僕は、マサミ一筋だから!」
「本当・・・ですかぁ?」
「うん、約束する」
「・・・はいっ」
不安そうな顔から、一気に満面の笑みへと変わる。
ころころと変化するその様子が、誠の動悸をますます早めた。
「はいはい、そこ、校門でイチャつくのやめて頂けます――?」
そこに、第三者の声。
独自の世界に入り込んでいた二人は、飛び上がるほど驚いた。
「こんにちは。今帰り?」
「・・・姉さん」
げんなりしたような、だけど他人じゃなくてちょっとほっとしたような、複雑な表情の誠。
誠の従姉妹で3年生のくめ佐由理さゆりである。
「誠君、今また1年のコ振ったでしょ」
「え」
何で知ってるんだ、と狼狽える。
「あのコね、私の後輩なの」
「あー・・・」
佐由理の人脈はなかなかのものである。変なところで変な人物と繋がっているから侮れない。
それも、彼女の容姿と人柄のお陰だ。
特に年下から人気があるあたり、誠と血が繋がっている証左と言えた。
「ごめんなさいね、誠君。あのコには、誠君に迷惑かけないように言っておいたのだけど」
「構わないよ、そんなの」
「そう? さすが誠君。カッコいいわ」
「・・・からかわないでよ、姉さん」
「でも、ちょっと安心ね」
「何が?」
「だって、あのコに誠君取られちゃったら、お姉ちゃん悲しいもの」
くすっ、と笑ってごく自然に腕を絡めてくる佐由理。
「ちょ、やめてよ姉さんっ! 僕にはちゃんと恋人がいるっていつも言ってるじゃないか!」
言って、腕を振りほどく誠。
「ぶー。お姉ちゃん認めないもんっ。誠君は、私と結婚するのよ!」
「姉さんはイトコだろ!」
「あら、イトコは結婚できるのよ?」
「っていうか! それ以前に!」
誠は、怒りと煩わしさと恥ずかしさから、叫ぶように言った。

「女同士は結婚できないってば!」

これが目に入らぬか、と自らのスカートの裾をつまみ上げる誠。
・・・どこからどう見ても、女子生徒の制服だった。
当然、隣で苦笑するマサミ――東城とうじょう雅美まさよしは男子生徒である。
外見は、可憐な美少女なのだけど。
「・・・私、誠君と東城君は絶対生まれてくる性別を取り違えたんだと思うの」
「僕は、身も心もれっきとした女だっ!」
「ぼ、ぼくもれっきとした男ですぅ!」
悲痛な叫びは、しかしいつも佐由理には届かない。
「ふたりの制服、換えっこしても全然違和感ないわよ? というかその方が自然かも」
「す、スカート・・・いやっ! 絶対おかしいですよぅ!」
「うーん、東城君、そんな瞳うるうるさせて可愛く言っても説得力ないわよ?」
これでむさい男だったらぶん殴ってるところね、と付け加える佐由理。
基本おしとやかで麗しい佐由理も、その辺には容赦なかった。
「そういえば、そんな東城君に伝言――」
「え、ぼくにですか?」
「うん。明日の昼休みに、バスケ部の部室まで来てくれって」
「どなたから・・・?」
「私のクラスの村雨むらさめみつる君。知ってる?」
「いいえ、しりませんねぇ・・・」
「えっとね、背が高くて、ちょっといかつい感じ? まぁ悪い人ではないんだけど」
「はぁ。そんな人が、何の用でしょう?」
「さあね。何か怒ってる風だったけれど・・・東城君、何かしたの?」
「ええ!? そんなぁ、ぼく何もしてないですよ?」
ぶんぶんと首を振って否定する雅美。
そんな彼に、誠が助け舟を出す。
「じゃあ、僕が付いて行ってあげるよ。1年生ひとりで3年生に会いに行くのは気がひけるだろ?」
「い、いいんですか?」
「うん。だって、僕は・・・ほら、マサミの彼女だし」
「マコトせんぱい・・・」
ぽっ、と頬を染める誠と雅美。
間に入れない佐由理は、そんなふたりが面白くない。
「ふたりともっ、早く帰りますよっ!」
「あ、ああ、うん」
「は、はいっ」
佐由理に引き摺られるようにして、ふたりだけの世界から戻ってきた。
どこか子供じみた上級生のあとを、上気したまま追いかけるふたりだった。
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