もうすぐ文化祭。
それにしても。
「去年と同じ演目って、意味あるのかね?」
演劇部としての意味。
同じ演目を、ただリピートするだけの退屈。
俺はそんな文化祭、認めない。
「私は、高校初の文化祭なんで楽しみにしてますけどね」
演劇部期待の1年生、杵柄愛菜がそう言った。
「っていうか、何で去年と同じ演目なんでしょう?」
「新入生に配慮したんじゃね?」
「それはそれは、ありがたい限りですね」
ちょっとした嫌味にも一向に動じない。
新人・杵柄はなかなか太い神経をしていた。
同じ演目とはいえ、先輩たちは引退している。
つまり、演者は変わるということだ。
俺も去年――1年生の時とは別の役を演じることになっている。
しかし、正直気が乗らない。
「いいじゃないですか、別の役なんですから。新鮮でしょ?」
あー、こいつは、俺の気持ちなんぞ微塵も分かってくれないのだな。
「同じ話をやるんだぞ? つまらないに決まってる」
「古典なんだから、そんなもんでしょー」
むう。一理あるような気がする。
そもそも、ウチの演劇部に専属の脚本家がいないのが問題なのだ。
「なあ杵柄、お前脚本とか書けないの?」
「書けませんよ。それを言うなら、堀越先輩こそどうなんですか」
「書けるわけねぇだろぉー」
つくづく、役者な二人だった。
まあ、仮に新しい脚本があったとしても、今からでは遅い。
既に今回の演目については練習を重ねてきた。
重ねてきてしまった。
セリフも全部頭に入っている。
ここから完全に別の演目に切り替えるのは不可能だ。
「そういうことは、演目決定の打ち合わせで言うべきでしたね」
やや呆れ顔の杵柄。
こいつは多分、俺のことを先輩だと思っていない。
同級生か、下手したら後輩だと思っている。
舐められたものである。
「俺はさ」
と、ここで話をあさっての方向にブン投げる。
「RPGの経験値稼ぎとかが、嫌いなタイプなんだよね」
「はあ、私は割と好きな方ですが」
「こう、大きな目標に向けてちまちまと作業を積み重ねるのが我慢ならねぇ」
魔王の城が見えてるのに、大きく迂回していくのが辛い。
目的地が海の向こうにあるのなら、迂回するんじゃなくて船で突っ切れよ。
カギが必要な扉は破壊しろよ。
そんなことを言いたくなる。
「確かに堀越先輩はそんな感じですね」
アクション系が好きなタイプでしょ、と見透かされた。
その通りである。
「要するに、飽きっぽいんですよ。ダメ人間ですね」
「ダメ人間ゆうな」
仮にも先輩に対してその口ぶりはいかがなものか。
ともかく、である。
「同じ演目を、同じ文化祭というタイミングでやるってのがなぁ」
「さっきも言いましたけど、決まっちゃった以上仕方ないじゃないですか」
「小言か。お前は俺の母ちゃんか」
どっちかと言えば俺が子供っぽすぎるんだろうけども。
「さ、練習ですよ」
杵柄が言う。
「最後まで確認しておかなきゃですからね」
「えー、もういいだろー」
「よくありません。私、高校初舞台なんですからね」
「何とかなるってー。セリフ飛んでもアドリブでごまかすってー」
「そんな無茶ができるのは堀越先輩だけですから」
アドリブ楽しいのにな。
仕方なく椅子から立ち上がると、所定の立ち位置へと移動する。
読み合わせだけでいいんじゃないかなぁ。
と、言いかけたがやめた。
決して杵柄の目線によるプレッシャーに負けたわけではない。
こうして、最後の通し練習を行って。
さあ、文化祭が始まる――。
それにしても。
「去年と同じ演目って、意味あるのかね?」
演劇部としての意味。
同じ演目を、ただリピートするだけの退屈。
俺はそんな文化祭、認めない。
「私は、高校初の文化祭なんで楽しみにしてますけどね」
演劇部期待の1年生、杵柄愛菜がそう言った。
「っていうか、何で去年と同じ演目なんでしょう?」
「新入生に配慮したんじゃね?」
「それはそれは、ありがたい限りですね」
ちょっとした嫌味にも一向に動じない。
新人・杵柄はなかなか太い神経をしていた。
同じ演目とはいえ、先輩たちは引退している。
つまり、演者は変わるということだ。
俺も去年――1年生の時とは別の役を演じることになっている。
しかし、正直気が乗らない。
「いいじゃないですか、別の役なんですから。新鮮でしょ?」
あー、こいつは、俺の気持ちなんぞ微塵も分かってくれないのだな。
「同じ話をやるんだぞ? つまらないに決まってる」
「古典なんだから、そんなもんでしょー」
むう。一理あるような気がする。
そもそも、ウチの演劇部に専属の脚本家がいないのが問題なのだ。
「なあ杵柄、お前脚本とか書けないの?」
「書けませんよ。それを言うなら、堀越先輩こそどうなんですか」
「書けるわけねぇだろぉー」
つくづく、役者な二人だった。
まあ、仮に新しい脚本があったとしても、今からでは遅い。
既に今回の演目については練習を重ねてきた。
重ねてきてしまった。
セリフも全部頭に入っている。
ここから完全に別の演目に切り替えるのは不可能だ。
「そういうことは、演目決定の打ち合わせで言うべきでしたね」
やや呆れ顔の杵柄。
こいつは多分、俺のことを先輩だと思っていない。
同級生か、下手したら後輩だと思っている。
舐められたものである。
「俺はさ」
と、ここで話をあさっての方向にブン投げる。
「RPGの経験値稼ぎとかが、嫌いなタイプなんだよね」
「はあ、私は割と好きな方ですが」
「こう、大きな目標に向けてちまちまと作業を積み重ねるのが我慢ならねぇ」
魔王の城が見えてるのに、大きく迂回していくのが辛い。
目的地が海の向こうにあるのなら、迂回するんじゃなくて船で突っ切れよ。
カギが必要な扉は破壊しろよ。
そんなことを言いたくなる。
「確かに堀越先輩はそんな感じですね」
アクション系が好きなタイプでしょ、と見透かされた。
その通りである。
「要するに、飽きっぽいんですよ。ダメ人間ですね」
「ダメ人間ゆうな」
仮にも先輩に対してその口ぶりはいかがなものか。
ともかく、である。
「同じ演目を、同じ文化祭というタイミングでやるってのがなぁ」
「さっきも言いましたけど、決まっちゃった以上仕方ないじゃないですか」
「小言か。お前は俺の母ちゃんか」
どっちかと言えば俺が子供っぽすぎるんだろうけども。
「さ、練習ですよ」
杵柄が言う。
「最後まで確認しておかなきゃですからね」
「えー、もういいだろー」
「よくありません。私、高校初舞台なんですからね」
「何とかなるってー。セリフ飛んでもアドリブでごまかすってー」
「そんな無茶ができるのは堀越先輩だけですから」
アドリブ楽しいのにな。
仕方なく椅子から立ち上がると、所定の立ち位置へと移動する。
読み合わせだけでいいんじゃないかなぁ。
と、言いかけたがやめた。
決して杵柄の目線によるプレッシャーに負けたわけではない。
こうして、最後の通し練習を行って。
さあ、文化祭が始まる――。