和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

僕たちの文化祭(4)

2015-12-27 17:28:52 | 小説――「僕たちの文化祭」
もうすぐ文化祭。

僕、真鍋真司は、その時を待っている。
文化祭当日。
それこそが復讐の日。
いや――開放の日、か。

「僕は悪くない」
そんなことを思っていた。
理不尽は空から降ってきて、決して避けられるものではないと。
不条理は足元から湧いてきて、泥濘は両足を捕らえて離さないと。
全て降って湧いたものだと。
僕以外の何かが、誰かが悪いのだと。
――そんなことを、思っていた。

僕が間違っていた。
全くもって、ずれていた。
理不尽も不条理も、悪いのは僕なのだ。
弱い僕が悪いのだ。

人生は戦争だ。
理不尽と感じるならば、不条理と感じるならば。
理想は勝ち取ることでしか得られない。
僕は今まで、負け続けてきた。
だからこんなに苦しいのだ。
こんなに哀しいのだ。

強者は容易く弱者を蹂躙する。
それはこの世界において当然のこと。
だから、弱者はいつだって生きていけない。

隙を見せれば攻められる。
逆に言えば、隙を見つけたなら攻めずにはいられない。
それが僕ら――人間の性なのだ。

だったら話は簡単だ。
勝てばいい。
強くあればいい。
僕を攻撃すればただでは済まないと、思い知らせればいい。

負け犬の汚名を雪ぎ、勝利をつかめ!
いつだって、戦争のルールはそれだけなのだ。

さあ、そうなれば、あとは準備だ。
万端の準備をもって、彼らを出迎えるのだ。

ここにきて、教室から――クラスの展示の準備から逃げ出したことが活きた。
迎え撃つのは、自分のテリトリーがいい。
教室にさえ居場所のない僕の、唯一の居場所。
そこで、彼らを待てばいい。
弱者である僕を、強者である彼らは見逃さない。
必ずこの場所へ現れる。
そこを突く。

僕は、弱かった。
それは多分、今でもそうだろう。
だから、変わらなければならない。
強くなって、勝たなければならない。
いつまでも惨めな敗者ではいられない。

戦うぞ。

戦争が悪いのではない。
敗戦が悪いのだ。

やるからには勝たないといけない。
負けた時、人は初めて悪となる。
そこが、分かっていなかった。
しかし、僕は気づいたのだ。
だから負けない。
負けるわけにはいかない。
いかなる手を用いても――僕は勝つのだ。
この絶望的な状況を、覆してやるのだ。

僕は正義だ。
正義となるのだ。

そのためには、ヒトゴロシだって厭わない。

崇高なる理想を掲げて。
負け犬の汚名を雪げ。
絶望を覆せ。
正義となれ。

さあ、文化祭が始まる――。
コメント
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