和泉の日記。

気が向いたときに、ちょっとだけ。

ある日記

2024-08-24 21:21:01 | 小説。
ネットで、僕が生まれる前に書かれたある日記を読んだ。

年齢性別不詳の日記の主は、髪が緑色だったそうだ。
血筋で代々そうだったという。

当然のように迫害を受けていた。

僕はそんな人がいるなんて聞いたこともなかった。
緑の髪なんて、目立つから見聞きすることくらいあるはずなのに。

読み進めると、どうも緑の一族はこの地の先住民だという。
あとからやってきた我々の先祖に奴隷として扱われた。
そして、様々な差別を受け、ついには主ただ一人になったのだ。

主は我々を強く恨んでいた。
先祖代々差別を受けていたのだ、当然だろう。
何より、歴史から緑の一族の存在が消されたことが最も屈辱だという。
歴史は勝者が作る。

先住民などいなかった。
差別などなかった。
我々の先祖は何も悪いことはしていなかった。

確かに、今この地に生きる僕らは緑の一族など知らない。
義務教育にも、人々の噂の中にもいなかった。
完璧な隠蔽がなされていたのだ。

そんな中、ネット上の日記だけが生き残っていた。
アクセスカウンターは127。
誰も見ていないに等しい。
故に、これまで放置され、残っていたのだろう。

僕は、キレイな血でできていると思っていた。
こんな外道の血が流れているなど、考えたこともなかった。

日記は、日常生活について書かれたどうでもいい投稿で終わっていた。
――主がそこで書くのをやめたのか、死んでしまったのか。

ともかく、緑の一族は絶滅した。
我々は、その復讐を受けることもなく、これからも平和に過ごすだろう。
夥しい犠牲の上で。

腐った血が流れる僕は、脳味噌まで腐っていくような気がした。

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