ださいたま 埼玉 彩の国  エッセイ 

埼玉県について新聞、本、雑誌、インターネット、TVで得た情報に基づきできるだけ現場を歩いて書くエッセー風百科事典

「桜の園」 さいたま市 その1

2012年04月11日 16時53分36秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物
「桜の園」 さいたま市 その1

4月9日から11日まで、2012年の3日間。埼玉県の“桜きち”にとって最高の日々だった。

前日の強烈な春の嵐と打って変わって、20度超と初夏のような陽気に恵まれ桜が一斉に満開になったからである。

桜狂いだから、全国の有名な桜はたくさん見てきた。しかし、満開の桜を見たのは数えるほどしかない。

この日々の当地の桜は、本当の満開だった。

満開とは何か。七分咲き、八分咲き、いろいろな表現はある。私には、その細かな違いは分からない。

だが、満開は違うのである。感性に訴える何かがある。

この3日間、ほとんど風がなかった。満開の花が、ゆらぎなく咲き誇っているのに、なぜか花びらは落ちない。この自然界の微妙な静かな均衡が満開なのだろう。それに、素面ながら酔いしれた。

もし落ちている花があれば、それはムクドリなどが蜜を吸いたさに花びらの下を食いちぎったのだと、最近知った。

その至福の時間が極めて限られているのを知っているだけに、いっそう、いとおしい。花期の短いソメイヨシノならなおさらのことだ。

「花の命が短い」ことを自ら知っているから、あれほど豪華に咲くのだろう。ボッテリといつまで咲く八重桜との違いだ。

この3日間、ママチャリにまたがり、朝から夕までさいたま市の桜を求めて、ゆっくりとこぎ回った。

長い経験からさいたま市が大変な「桜の園」であることを知り尽くしているからだ。

浦和、大宮、与野の3市に岩槻市が加わり広い政令都市になったので、自転車でも全部は回りきれない。そこで今回は、旧浦和市の浦和、桜、南、大宮区と、南区の南隣の戸田市の荒川の貯水池「彩湖」の周辺に限った。

この時期、どこも桜が埋め尽くしているので、とても回りきれないからである。

どこから始めよう。やはり、旧浦和市の中心にある古刹「玉蔵院」に敬意を表すべきだろう。真言宗豊山派に属し、関東真言宗の代表寺院だった。

この寺の枝垂桜は例年、ソメイヨシノより早く咲く。ここの桜が咲いて、浦和市民はいつも、春の到来を知ってきた。毎年、カメラを手に多くの風流の士が詰めかける。

12年の長く厳しい冬は、その生理さえ狂わせた。一緒に咲いたのである(写真)。

いつも不思議に思うのは、桜にはいろんな名前がついているのに、枝垂桜には「紅枝垂桜」など、平凡な名前しかないのが気にかかる。

写真のとおり、ここのは白のシダレである(写真)。

次は当然、近くの「調(つきのみや)神社」である。「つき(槻)」の名のとおり、ケヤキの大木の林立する延喜式の古社。数はそれほど多くはないものの桜の名所である。

次は「別所沼公園」。それほど広くないとはいえ旧浦和市一の公園だ。かつてウナギが取れて、浦和宿の客に食わせたという、その池沿いには中国原産のメタセコイアが林立している。ここの桜も手近で、人でにぎわう。

この伝統の「3点セット」を離れて、埼京線武蔵浦和駅に向かって、「花と緑の遊歩道」をたどろう。「浦和西南桜」と呼ばれる桜の名所だ。今でも記念碑が残る。排水路を暗渠にしたものだ。

この4か所でほんのちょっぴりだ。先を急ごう。


桜区の花見 さいたま市

2012年04月11日 16時52分36秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物

桜区の花見 さいたま市

さいたま市には、「桜区」という区がある。木の桜ではなく、草のさくら、つまり荒川の河川敷に国の特別天然記念物「さくら草」が自生していることに由来する。区の最南端に「さくら草公園」があり、さくら草は市の花に指定されている。

ところでこの桜区は、桜の並木が多いところだ。桜区は市の南西部に位置し、荒川の長く広大な河川敷も区域に入る。南北には荒川堤上に「荒川サイクリングコース」があり、鴨川が流れる。東西にも小さな川がいくつかあり、水と緑に恵まれている。

桜の並木でとりわけ素晴らしいのは、埼玉県大久保浄水場に接した「荒川総合運動公園通り」(約1km)の川沿いの桜並木だろう。河川敷内の運動公園に通ずる道だ。市の西端で交通が不便なことから市民でも知らない人が多いが、満開の染井吉野を一目見ると、決まって感嘆の声を上げる。(写真)

この通りは散歩道も整備された親水公園になっていて、染井吉野の反対側に、まだそれほど大きくはないものの、紅しだれが並び、紅白の見事なコントラストをなしている。

鴨川沿いには「鴨川堤桜通り公園」の約770本の桜が約2kmにわたって連なる。ここには染井吉野以外の桜も植えられていて、遅咲きの里桜も楽しめる。埼京線中浦和駅近くから荒川に向かう鴻沼川沿いの約2kmの「秋ヶ瀬緑道」の桜並木も素晴らしい。これらを全部見ようとすると、徒歩では時間がかかり過ぎるので、自転車が必要になる。

この公園の南側にさいたま市桜環境センターの「余熱体験施設」ができ、ジム、大浴場、露天風呂、ウォーキングプールなどがあり、食事もできる。

鴨川堤からは田んぼや堤でセリや野ビルを摘む人の姿も見られ、雲雀が舞い上がる。荒川の堤に立てば、遠く満開の桜が散見された。
花見帰りに一風呂も可能だ。


桜区役所を訪ねると、中庭や周りに染井吉野を中心に11種の桜が植わっている。染井吉野の時期に「十月桜」が咲いているので、よく表示を読むと、「4月頃にも咲く」と書いてあって、納得した。

枝が天に向かってまっすぐ伸び、花も上向きに咲く「天の川」、オシベが変形し旗のように見える「旗桜」、花が淡黄緑色の「鬱金(うこん)」、皇太子妃にちなんだ「雅(みやび)」などもあり、名札がついているので勉強になる。