基俊僻難事
俊恵云法性寺殿にて哥合ありけるに俊頼
基俊ふたり判者にて名をかくして當座に
判しけるに俊頼哥に
くちをしや雲井がくれにすむたつも
おもふ人にはみえける物を
これを基俊鶴と心えてたつはさはにこそすめ。雲
井にすむことやはあると難じてまけになして
ける。されど俊頼その座にはことばもくはへず。其
時殿下こよひの判の詞をの/\かきてまいらせよ
とおほせられけるときなん俊頼朝臣これはた
つにてはあらず。龍也。かのなにがしとかゞたつを
みんとおもへる心ざしのふかゝりけるによりかれが
ためにあらはれてみしたりしことの侍をよめる也。
みんとおもへる心ざしのふかゝりけるによりかれが
ためにあらはれてみしたりしことの侍をよめる也。
とかきたりける。基俊弘才の人なれどおもひわたり
けるにや。すべてはおもふばかりもなく人のことを難
ずるくせの侍ければことにふれて失おほくて
ありける。