小倉山 嵐の風の 寒ければ
もみぢの錦 きぬ人ぞなき
平安時代を代表する文化人・藤原公任。古代からの優れた和歌・漢詩を集めた『和漢朗詠集』を編纂(へんさん)したことでも知られています。その優れた才能は、歴史物語『大鏡』にも書かれています。
藤原道長が主催した大堰川(おおいがわ)の舟遊び。
和歌・漢詩・管絃の舟が用意され、全てに秀でた公任は、どれに乗るか尋ねられました。公任は和歌の舟を選び、美しい紅葉を歌にしたといいます。
公任は、朝廷での儀礼や、しきたりなどにも精通していました。
彼がまとめた儀式書『北山抄』は、その後も貴族たちの間で重宝されたといいます。
晩年は、現在の岩倉長谷(いわくらながたに)の地で出家し、静かに暮らしたという公任。表舞台を退いたのちも、藤原斉信などさまざまな人が訪れ、慕われたと伝わっています。
拾遺集 秋歌
嵐の山のもとをまかりけるに、も
みぢのいたくちり侍りければ
右衛門督公任
あさまだき嵐の山のさむければ紅葉の錦きぬ人ぞなき
公任集
ほうりんじにまうで給ふ時あらし
山にて
朝ぼらけあらしの山のさむけれはちるもみぢ葉をきぬ人ぞなき