道因法師
**
山のはに雲のよこぎるよひの間は出ても月は猶またれ
ける
此哥猶と云字眼也。たとへば月を待ゐたるに
くらがりしたかねよりさやかに出たるに雲の一むら
たなびきて更にいはん方なし。なをまたるゝ
とは月の出ぬさきに出るを待つけ出れは
又雲間に見へたつおもしろさをたぐひなし
と心をつくすよしなり。よこぎるとは一むら
立わたりたる事也。よこぎれてともよむ
なり。頼政哥に
引哥
澄のぼる月の光によこぎれてわたるあきさの音のさやけさ
※月は→月ぞ
※出典 常縁新古今集聞書。ただし、「出ぬさきに」は「出ぬさきにも」となっている。
※澄のぼる~
頼政集
すみのぼる月のひかりに横ぎれてわたるあきさの音のさむけさ