行 秋の四 五日 弱るすゝき哉 丈草
立出る 秋 の夕 や 風ほろし 凡兆
世の中は 鶺鴒の尾のひまもなし 仝
塩 魚 の歯にはせかふや秋の暮 荷兮
春
梅咲て 人 の 怒 の悔もあり 露沾
上臈の山荘にまし/\けるに
候し奉りて
梅 が 香や 山路猟入ル犬のまね 去来
加賀
梅が香や 分 入里は 牛 の角 句空
庭興
梅が香や 砂利しき流す 谷の奥 土芳
はつ蝶や 骨なき身にも 梅の花 半残
膳所
梅が香や酒のかよひのあたらしき 蝉鼠
うめの木や此 一筋 を蕗のたう 其角
子良館の後に梅有といへは
御子良子の 一もとゆかし梅の花 芭蕉
痩 藪や 作りたふれの軒 の梅 千邦
灰捨て 白うめうるむ 垣根 哉 凡兆
膳所
日當り の梅咲ころや 屑 牛房 支幽
暗香浮動月黄昏
入相の 梅になり込 ひゝきかな 風麥
武江におもむく旅亭の残夢
寝くるしき 窓の細目や 闇の梅 乙刕
辛未のとし弥生のはしめつかたよし
のゝ山に日くれて梅の匂ひしきりなりけれは
旧友嵐窓か見ぬかたの花や匂ひを
案内者といふ句を日ころはふかき事
のやうに思ひはへれとも折にふれて感動
身にしみわたり涙もおとすはかりなれは
その夜の夢に正しくまみえて悦へる
けしき有。亡人いまた風雅を忘れ猿や
夢さつて 又 一匂日宵 の 梅 嵐蘭
百八の かねて迷ひや闇 の 梅 其角
ひとり寝も 能宿とらん初子の日 去来
ゆくあきのしごにちよわるすすきかな 丈草(行秋:秋)
たちいづるあきのゆふべやかざぼろし 凡兆(風ぼろし:秋)
寂しさに宿立ち出てながむればいづくもおなじ秋の夕暮 の俳諧化。
よのなかはせきれいのおのひまもなし 凡兆(鶺鴒:秋)
しほうをのはにはせかふやあきのくれ 荷兮(秋の暮:秋)
※せかふ さかふの誤字か?
むめさきてひとのいかりのくひもあり 露沾(梅:春)
むめがかややまぢかりいるいぬのまね 去来(梅が香:春)
むめがかやわけいるさとはうしのつの 句空(梅が香:春)
むめがかやじやりしきながすたにのおく 土芳(梅が香:春)
はつてふやほねなきみにもむめのはな 半残(梅の花:春)
むめがかやさけのかよひのあたらしき 蝉鼠(梅が香:春)
うめのきやこのひとすぢをふきのたう 其角(梅:春)
おこらごのひともとゆかしむめのはな 芭蕉(梅の花:春)
※子良館 伊勢神宮の神饌を調える所
※御子良子 子良館で奉仕する処女
※梅有と 伊勢神宮には梅の木が一本も無いので聞くと、子良館に有ると聞いて。貞享五年の笈の小文。
やせやぶやつくりたふれののきのむめ 千邦(梅:春)
はいすててしろうめうるむかきねかな 凡兆(白梅:春)
ひあたりのむめさくころやくづごぼう 支幽(梅:春)
いりあひのむめになりこむひびきかな 風麦(梅:春)
※暗香浮動月黄昏 宋代の
林和靖の詩「山園小梅」の句
ねぐるしきまどのほそめややみのむめ 乙州(梅:春)
※武江 武蔵国江戸の略。
※西行法師集 旅宿の梅 独ぬる草のまくらのうつり香はかきねの梅の匂ひなりけり
※闇の梅 古今集 はるのよ梅花をよめる 凡河内躬恒
春の夜のやみはあやなし梅花色こそ見えねかやはかくるる
ゆめさつてまたひとにほひよいのむめ 嵐蘭(梅:春)
※辛未 元禄四年
※見ぬかた
新古今和歌集 巻第一 春歌上 花歌とてよみはべりける 西行法師
吉野山去年のしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ
よみ:よしのやまこぞのしおりのみちかえてまだみぬかたの花をたずねむ 定隆雅 隠
意味:吉野山で、去年道に迷わないように枝折って目印にした道を変えて、まだ見ていない桜の花を尋ねて眺めてみよう
備考:御裳濯河歌合。
ひやくはちのかねてまよひややみのむめ 其角(梅:春)
※百八のかね 寺院で朝夕に煩悩の数百八の回数だけ打つ鐘
※かねて 鐘と予ての掛詞
ひとりねもよきやどとらんはつねのひ 去来(初子日:春)