都名所図会は墨摺六冊本で名所図会本の先魁となったものである。本書は本文を京都の俳諧師秋里籬島が著し、図版を大坂の絵師竹原春朝斎が描き、京都の書林吉野屋から安永九(1780)年に刊行された。
本『都名所図会』は、下記参考の字句、配置等の対照表から吉野屋再刻本と思われる。
参考
新修京都叢書第六巻 別冊
都名所圖會諸本對照表 野間光辰 編
凡例
一 此編の巻首には平安城をあらはし其四方を帝都鎮護の
四神に官とらしめ神社の芳境佛閣の佳邑山川の美観等
今時の風景をありのまゝに模寫し舊本花洛細見圖を増
益して時々其遺漏を巡歴し摂社艸庵たりとも一宇も漏す
幼童の輩坐して古蹟の勝地を見る事を肝要とす。
一 文談は宮古歳時記山城名所紀行を種とし且舊記に委は
其大意をしるし又脱漏あるは微細に捜り求てこれを撰書
する事を専とす。
一 圖中に境地廣大なる所は細画也。狭少なる神祠小堂は
又示らず。故に図毎に人物あり。形容至つて微少なる人物は其
地廣大としるべし。形容微少ならざるは境地狭少なり。譬ば
加茂社と野宮との境地を知らするの便りなり。
一 圖中の間に人物の大画あり。四時の佳観を賞して遊楽の地を
知せんため也。洛東の花見宇治蛍狩等也。
一 圖中の名所に連綿の地あり。圍の上に圓系を以てこれを
繋ぐ。八幡神宮寺より宿院石清水あるひは宇治の橋寺
惠心院興聖寺などの連綿の地也。
一 比叡山の圖あり。東塔坂本はみな近江也。しかれども西塔より
連綿の地にして除くこと能はず。山崎谷観音も摂州の界
なれども連綿たればこれを圖す。
都名所圖會巻之一目錄
平安城首
内裏圖 上御霊 中川 相國寺定家卿塔
法然水
京極八幡 幸神社 縣井 妙覺寺
妙蓮寺 妙顕寺 本法寺 千宗佐家
大應寺後花園院 報恩寺 堀川 一条戻橋
陵
小野小町草紙洗水 安倍晴明社 水火天神 興聖寺
瑞光院浅野家 本隆寺 櫻葉宮 石像寺家隆卿墓
家臣塔
式子内親王塔
歓喜寺 石神社 聚楽亭旧地 般舟院定家卿塚
時雨の亭
西陣織物躰 浄福寺 大超寺 阿弥陀寺
十念寺 本滿寺 廬山寺 浄華院
下御霊 革堂 清荒神 高田本誓寺
妙滿寺 本能寺信長塔 頂妙寺 源三位頼政旧跡
髙松神明社 西行水 御所八幡 天性寺
矢田地藏 池州 三條橋 檀王
瑞泉寺 先斗町 六角堂池坊 錦天神千鳥池
塩竃社
圓福寺 蛸薬師 虎薬師 長金寺
未開紅
腹帯地藏 泉式部軒場梅 誓願寺弁慶石 栁の水
羽二重井
空也堂茶釜賣 神泉苑 不来薬師
畫工傳秘詩縮地
勝仙翁不○勞跬
歩帝畿在目中
和克明 印
くしみの外ならんやはと
いふ事しかなり。
安永九庚子年仲秋
五條式部大輔菅原為俊卿
栖霞館主人書
安永九年 1780年
内裏之圖
上御霊社
相國寺
和泉式部(誠心院)
一條戻橋