56 神無月嵐は軒を払ひつつ閨まで敷くは木の葉なりけり
かむなつきあらしはのきをはらひつつねやまてしくはこのはなりけり
閨まで散るは→C本・京大本・森本・国会本・河野本 閨までしくる→神宮本
57 如何にせむ千種の色は昔にて未だ更に無き花の一本
いかにせむちくさのいろはむかしにてまたさらになきはなのひともと
又咲くに無き→神宮本 又ならになき→春海本 花の木の下→B本・神宮本・三手本・岩崎本
58 真木の屋に時雨は過ぎて行くものを降りも止まぬや木の葉なるらむ
まきのやにしくれはすきてゆくものをふりもやまぬやこのはなるらむ
降り止まぬは→B本・三手本・岩崎本・京大本・河野本・神宮本・国会本 降す止まぬは→C本
59 寂しさは宿の慣らひを木の葉敷く霜の上にも眺めつるかな 玉葉集
さひしさはやとのならひをこのはしくしものうへにもなかめつるかな
寂しさに→神宮本 木の葉散る→C本・京大本・河野本 木の葉して→春海本
60 冬来れば谷の小川の音絶えて峰の嵐ぞ窓を訪ひける
ふゆくれはたにのをかはのおとたえてみねのあらしそまとをとひける
窓を訪ひかり→三手本 窓を訪ひ来る→京大本
61 鳰鳥の立ち居に払ふ翼にも落ちぬ霜をば月と知らすや
にほとりのたちゐにはらふつはさにもおちぬしもをはつきとしらすや
鴛鴦の→C本・京大本・神宮本 立ちぬに払ふ→河野本 をちぬ霜を→C本・国会本 月ぞ知らずや→A本・三手本 月は知らずや→B本 月ぞ知らする→岩崎本 月も知らずや→国会本
62 冬の池汀に騒ぐ葦鴨の結びぞあへぬ霜も氷も
ふゆのいけのみきはにさわくあしかものむすひそあへぬしももこほりも
渚に騒ぐ→岩崎本・三手本・森本・B本・文化九本 結びぞあへぬ→国会本 雪も氷も→B本
63 真柴積む宇治の川舟寄せ侘びぬ竿の雫も且つ凍りつつ
ましはつむうちのかはふねよせわひぬさをのしつくもかつこほりつつ
世を侘びぬ→B本・三手本 さほの雫に→国会本・河野本
64 色々の花も紅葉もさもあらばあれ冬の夜深き松風の音
いろいろのはなももみちもさもあらはあれふゆのよふかきまつかせのおと
65 待たれつる隙白むらむほのぼのと佐保の川原に千鳥鳴くなり
またれつるひましらむらむほのほのとさほのかはらにちとりなくなり
待たれつつ→国会本・河野本 浜白むらむ→B本・岩崎本
66 然らぬだに雪の光はあるものをうたた有明の月ぞ休らふ
さらぬたにゆきのひかりはあるものをうたたありあけのつきそやすらふ
ただ有明の→B本・三手本・岩崎本 月う休らふ→神宮本
67 吹く風に類ふ千鳥は過ぎぬなりあられぬ軒に残る訪れ
ふくかせにたくふちとりはすきぬなりあられぬのきにのこるおとつれ
類ふ千種は→岩崎本 あれ軒に→C本 あられ軒に→春海本
68 思ふより猶深くこそ寂しけれ雪降るままに小野の山里
おもふよりなほふかくこそさひしけれゆきふるままのをののやまさと
雪降るままに→神宮本
本説:伊勢物語八十三段
69 住み慣れて誰古りぬらむ埋もるる柴の垣根の雪の庵に
すみなれてたれふりぬらむうつもるるしはのかきねのゆきのいほりに
70 年波の重なることを驚けば夜な夜な袖に添ふ氷かな
としなみのかさなることをおとろけはよなよなそてにそふこほりかな
添ふものかな→三手本 添ふる物かな→B本
参考
式子内親王集全釈 私家集全釈叢書 奥野 陽子 著 風間書房
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