新古今和歌集の部屋

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉6 辺地などを加えて

邊地などをくはへていはゞ際限も有

べからず。いはんや諸国七道をや。近

くは崇徳院の御位のとき長承の比

かとよ。かゝるためしは有けるときけど

其世のありさまはしらず。まのあたり

いとめづらかにかなしかりし事也。又元暦二年

の比、大なゐふること侍き。其様つね

ならず山くづれて川をうづみ海かたぶき

て陸をひたせり。土さけて水わきあがり

いはほわれて谷にまろひ入渚こぐ舩は

波にたゞよひ、道行駒は足の立どをま

 
 
辺地などを加へて言はば、際限も有べか
らず。いはんや諸国七道をや。近くは崇徳
院の御位の時、長承の比かとよ。かかる
ためしはけると聞けど、其世の有樣は
知らず。眼のあたり、いとめづらかに、
かなしかりし事也。
元暦二年の比、大なゐふること侍き。
其樣常ならず。崩れて川をうづみ、海
かたぶきて陸(くが)をひたせり。土裂
けて湧き上がり、いはほ割れて谷にま
ろび入、渚こぐ舩は波に漂ひ、道行
足の立どをま
 

(参考)前田家本
辺地などを加へて、云はゞ際限もあるべか
らず。如何に況や、七道諸国をや。崇徳
院の位の御時、長承の比とか、係る
ありけりと聞けど、その世の有樣は
知らず。目の当たり、いと
かなりし事也。
又、同じ比とかよ夥しく大地震震る事侍き。
その樣、世の常ならず。山は崩れて河を埋み、海は
傾きて陸地を浸せり。土裂
けて水は湧き出で、巌割れて谷にま
ろび入る。渚漕ぐ波に漂ひ、道行く
脚の立所を惑
 

(参考)大福光寺本
辺地ナトヲクハヘテイハゝ際限モアルヘカ
ラス。イカニイハムヤ七道諸国ヲヤ。崇徳
院ノ御位ノ時長承ノコロトカカゝル
タメシアリケリトキケトソノ世ノアリサマハ
シラスマノアタリメツラ
カナリシ事也。
オナシコロカトヨヲヒタゝシクヲホナヰフルコト侍キ。
ソノサマヨノツネナラス。山ハクツレテ河ヲウツミ海ハ
カタフキテ陸地ヲヒタセリ。
ケテ水ワキイテイワヲワレテ谷ニマ
ロヒイル。ナキサコク船ハ波ニタゝヨヒ道ユク
アシノタチトヲマ

 
ゑやみ 役癘のことなり。
少水の魚 せんかたなき有
 さま也。古語曰今日過
 命亦滅猶少水魚是
 何樂謡勿解怠。
家ごとに乞行く 列子云
 齊有貧者常乞於城
 市乞兒児云天下之辱莫
 過於是。
又あはれなる事 我大切に
 思ふものもいたるものは
 こ菲得たるものをまづその
 ものにあたへてみづから命
 のはつることもかへり見ぬ也。
 されば父子ある者は定ま
 れることにてといへるは、
 
 
※列子云 倭名類聚抄 巻第二 人倫部第六 乞盗類第廿三より
 
 
平安京ジオラマ 地震被害が大きかった白河六勝寺付近 京都市平安京創生館
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