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おもふくんおんを れい こ そ
思君恩 令狐楚
せうゑんあうか やんでちやうもん
小苑鶯歌歇長門
てふぶおほしめにみるはるまた
蝶舞多眼看春又
さることをすいれんかつてずよぎら
厺翠輦曾不過
此しはきうゑんのていなり。せうゑんのはなばたけにはうぐひ
すのこゑもやみちやうもんきうにはてふがまひ見て
ゐる。うちにちるはくれゆけどもこのはるもきみのて
くるまはかつてよぎらずとてうのおとろへたるこゝろ
をいへるなり。
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君恩を思ふ 令狐楚
小苑鴬歌歇(や)んで
長門蝶舞多し
目に看る春又去ることを
翠輦曽て過(よぎ)らず
意訳
(晩春となって)宮の小苑の黄鴬は歌うのを止め、
幽閉された長門宮には(夏の)蝶が群がって舞っている。
眼の前をまた今年も春が過ぎようしている。
もう天子の乗る翠輦はここを訪れる事は無いのであろう。
※思君恩 新楽府題
※長門 漢の武帝の陳皇后が呪詛事件を起こし、長門宮に幽閉された。
※翠輦 天子の乗物。翡翠の羽が飾られていた。
唐詩選画本 五言絶句 巻五
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