新古今和歌集の部屋

美濃の家づと  一の巻 真名序



勢海之濱拾文貝。害拾実否縷兮斐具。

十朋之珎得之帰者誰与。美濃大矢重門

従本居翁遊望天下褰裳濡足于此來。

翁勢人也。文富。重門嘗贏三月

糧之翁之所受新古今集明無解者。

乃討之翁曰先生雖倦勉為小子草之。

以貺於郷人。於是此書成矣。既而

郷人不秘観者噴々然称之。自有之参撰

無有若解者之得与古為徒。余暇日


勢海ノ浜ニ文貝ヲ拾フ。実ヲ拾フニ害フヤ否ヤ縷兮トシテ斐具ハル。

十朋之珍之ヲ得テ帰ル者ハ誰レヤ。美濃ノ大矢重門

本居翁ニ従テ天下ヲ遊望シ裳ヲ褰ゲ于此ニ足ヲ濡ラシテ来ル。

翁ハ勢人也。文ニ富ム。重門嘗テ三月ノ糧ヲ贏ミテ

翁ノ所ニ之ク新古今集ヲ受クルニ明ニ解スル者無シ。

乃チ之ヲ翁ニ討ネテ曰ク先生倦ムト雖モ勉メテ小子ノ為ニ之ヲ草セヨト。

以ニ郷人ニ貺ル。是ニ於テ此書成ル矣。

既ニシテ郷人ニハ秘セズ観ル者噴々然トシテ之ヲ称ス。自ラ之キテ参撰スルコト有リ

若シ解スル者之得ルコト有ル無クンバ古ニ与ルトモ徒ト為ス。



取而讀之毎篇毎句各如余意所顕出而躍

如也彼斯之業也。雖然是乃其餘技譬之

之煥若麗若。望之視之雖有不同無害。

為竜蔵之宝謝客。詩曰掛帆拾海者非

涉文海誰能得之乎無索解人雖有能言

固何自見乎。翁也与古為徒。今又得若無

為育。無憂者其惟翁乎。翁又教人以解

古言事。乃知古情者々而記与古為人。世或

有勝之者余則不顧不惟不顧亦暇。

         尾張秦縣撰



余暇日ニ取リテ之ヲ読ム毎篇毎句各余ノ意ヲ顕出サ所ル如クシテ而躍如タリ。

彼斯之業也。然リト雖モ是レ乃チ其ノ余技之ヲ譬フレバ煥若タリ麗若タリ。

之ヲ望ミ之ヲ視ルニ有リト雖モ同ジカラザルコト害フコト無シ。

為竜蔵ノ宝ト為シ客ニ謝ス。詩ニ曰ク帆ヲ掛ケテ海ニ拾フトハ文海ヲ

涉ルニ非ザレバ誰カ能ク之ヲ得ン乎。解ヲ索ムルノ人無クンバ

能言有ト雖モ固ヨリ何ゾ自ラ見ハレンヤ。翁ヤ也古ニ与ルモ徒ト為ス。今又得ルモ育ヲ為ス無キガ若シ。

憂無キ者ハ其レ惟レダ翁ノミヤ。翁又人ヲ教ルニ古言ノ事ヲ解スルヲ以テス。

乃チ古情ナル者ヲ知ル々ニシテ而記シテ古ニ与ッテ人ト為ル。

世或ハ之ニ勝ル者有ルモ余ハ則チ顧ミズ惟ニ顧ミルノミナズ亦暇アラズ。

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