花山院御哥
色香をば思ひも入ず梅の花常ならぬ世によそへてぞ見る
此御門は世をいとはせ給ひて山に修行し給ひし也。其時あそばせし
御製也。真実殊勝なる花の御覧じたてられやうぞかし。世人の
花を見るには色にそみ香にめづるならひなるを心ある御人の御詠は
何の上にも常ならぬ世の中を観念せらるゝ事なるべし。うつくしく咲
出たる梅花を御覧じても常ならぬ世なる物をと取遊し御心
難有こと也。一天のあるじさへめ此歎き思召す世なる物を何
心なく明け暮して年月を送る事あさましくうたてしき事也。
※前半は、一部新城市牧野文庫本聞書
「此みかどは世をいとはせ給ひて山/\修行し給ひしなり。そのときあそばせしとなる。真実殊勝なる花のみようなるべし」と近似している。
また、高松宮本新古今和歌集注
「此御門は世をいとはせ給ひて山に修行し給ひし也。其時あそばせしと也。真実殊勝なる花の御覧じやう成べし」とも似ている。
後半は不明。