新古今和歌集の部屋

粘葉本和漢朗詠集 2 漢詩1



送春不用動舟車唯別残鶯与落花 菅

若使韶光知我意今宵旅宿在詩家 同上

留春不用関城固花落随風鳥入雲 尊敬

けふとのみはるをおもはぬときだにも

たつとやすきはなのかげかは 躬恒

はなもみなちりぬるやどはゆくはるの

ふるさとゝこそなりぬべらなれ 貫之


(三月尽)
           菅原道真
春を送るに舟車を動かすことを用ゐず。
たゞ残鶯と落花とに別る。

 送春        同上
若し韶光をして我が意を知らしめしかば、
今宵の旅宿は詩家に在らまし。

 
 三月尽       尊敬
春を留むるに関城の固めを用ゐず。
花は落ちて風に随ひ鳥は雲に入る。

古今集 春歌下
 亭子院の歌合の歌
今日のみと春をおもはぬ時だにも立つことやすき花の蔭かは

拾遺集 春歌下
                紀貫之
花もみな散りぬる宿はゆく春のふるさととこそなりぬべらなり



やなしかすみたちなかくしそ  躬恒

  紅梅

梅含鶏舌兼紅氣江弄瓊花帯碧文 元

浅紅鮮娟仙方之雪媿色濃香芳郁

妓艫之烟譲薫 正通

有色易分残雪底無情難計夕陽中 中書王


(梅)
(拾遺集 春 凡河内躬恒)
(香をとめて誰折らざらむ梅の花あ)やなし霞立な隠しそ

紅梅

 早春尋李校書 元稹
梅は鶏舌を含んで紅気を兼ねたり。
江は瓊花を弄んて碧文を帯びたり。

 繞簷梅正開詩 橘正通
浅紅鮮娟たり、仙方の雪色を媿づ。
濃香芬郁たり、妓艫の烟薫を譲る。

 賦庭前紅梅  兼明親王
色有って分ちやすし残雪の底
情無うしては弁へがたし夕陽の中



  早秋

但喜暑随三伏去不知秋送二毛来 白

槐花雨潤新秋地桐葉風涼欲夜天 白

炎景剰残衣尚重晩涼潜到簟先知 紀

あきたちていくかもあらねどこのねぬる

あさけのかぜはたもとさむしも 志貴皇子


 早秋答蘇六     白居易
但喜ぶ。暑の三伏に随って去んぬることを。
知らず。秋の二毛を送り来れることを。

 秘省後聴   白居易
槐花雨に潤ふ新秋の地。
桐葉風涼し夜なんなむとする天。

 立秋後作   紀長谷雄
炎景剰さへ残りて衣なほ重し。
晩涼潜かに到って簟先づ知る。

拾遺集 秋歌
 題しらず           安貴王
秋立ちていくかもあらねばこの寝ぬる朝明の風は手許寒しも



  紅葉

不堪紅葉青苔地又是涼風暮雨天 白

黄纐纈林寒有葉碧瑠璃水浄無風 白

洞中清浅瑠璃水庭上蕭條錦繍林 保胤

外物獨醒松澗色餘波合力錦江聲 以言

しらつゆもしぐれもいたくもるやまは


紅葉
 秋雨中贈元九 白居易
堪へず紅葉青苔の地。
又これ涼風暮雨の天。

 泛太湖書事寄微之 白居易
黄纐纈の林は寒くして葉あり。
碧瑠璃の水は浄くして風なし。

 翫頭池紅葉  慶滋保胤
洞中には清浅たり瑠璃の水。
庭上には蕭条たり錦繍の林。

 山水唯紅葉  大江以言
外物の独り醒めたるは松澗の色。
余波の合力は錦江の声。

古今集 秋歌下
 守山のほとりにてよめる
                紀貫之
しらつゆもしぐれもいたくもる山は(した葉のこらずもみぢしにけり)



或逐風不返如振群鶴之毛亦当

晴猶残疑綴衆狐之腋 春雪賦 紀

翅似得群栖浦鶴心應乗興棹舟人 邑上御製

立於庭上頭為鶴坐在爐辺手不亀 菅

班女閨中秋扇色楚王臺上夜琴聲 尊敬

みやこにはめづらしとみるはつゆきを

(雪)
 春雪賦    紀長谷雄
或は風を逐うて返らず、群鶴の毛を振ふがごとし。
また晴に当ってなほ残れり、衆狐の腋を綴れるかと疑ふ。

 池上初雪   村上帝御製
翅は群を得たるに似たり浦に栖む鶴。
心興に乗るなるべし舟に棹さす人。

 客居対雪   菅原道真
庭上に立てれば頭鶴となる。
坐て炉辺にあれば手亀まらず。

 題雪     尊敬
班女が閨の中の秋の扇の色。
楚王の台の上の夜の琴の声。

拾遺
 初雪をよめる         源景明
都にてめずらしとみる初雪は(吉野の山に降りやしぬらん)



十八公栄霜後露一千年色雪中深 順

含雨嶺松天更霽焼秋林葉火還寒 江

ときはなるまつのみどりもはるくれ

ばいまひとしほのいろまさりけり 源宗于

われみてもひさしくなりぬすみよし

のきしのひめまついくよへぬらむ


 歳寒知松貞    源順
十八公の栄は霜の後に露はる。
一千年の色は雪の中に深し。

 山居秋晩 大江朝綱
含雨嶺松天更霽。焼秋林葉火還寒。
雨を含む嶺松は天更に霽たり。
秋を焼く林葉は火還つて寒し。

古今集 賀歌
 寛平御時后宮歌合によめる
                源宗于
ときはなる松のみどりも春くればいまひとしほの色まさりけり

古今集 雑歌上
 題しらず           読み人も
われみてもひさしくなりぬすみよしの
きしのひめまついく代へぬらん


倭漢朗詠集
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