栄光なき少年

少年は小さかった。

そして泣き虫だった。

そんな少年の母は

少年に柔道を習わせた。

少年は1回戦負けばかり。

いじめっ子にもいじめられた。

ある日、本気でいじめっ子に

立ち向かい

そしてかった。

しばらくして少年は地域の

柔道の大会で優勝する。

小さな少年が大きな子を倒す。

少年は小柄ながら地域では

けっこう強かった。

強かったから大きな子と戦わねばならなかった。

少年は軽い階級で1度全国大会に出ている。

少年は高校生になった。

まだ団体戦に出ている。

相して大きな子を相手しているうちに

腰を痛める。

医者から下半身不自由になるといわれ

戦意を喪失だ。

少年は練習試合では

全国大会優勝者にも負けない。

腰は痛んでいる。











少年は腰を守るため

大会で負ける。

大学にいき

することがなくて

柔道をする。

腰は潰れている。

新人戦。無差別だ。

あと一人勝つと全国大会。

また腰を思った。

下半身不自由。

あと一人勝てば・・・。

相手は大きいが

猛烈に突っ込んでくる。

間違いなく背負える。

腰を気にせず投げられる。

でも、やめた。

この一勝はたぶん

最悪の勝ちになる。

価値ある勝ちでない。

一勝を下半身不自由で暮らすだけの・・・。








腰は守ったが

少年は悩み、こころを病んでしまう。

自分を偽ったからだ。

なぜ？

眠り病になっていく。

タバコを覚え体力を失う。












そして、

何十年もたったいまも

腰は雨が降ると痛く

ストレスでも痛くなる。










何度も精神科で入院して

少年は大人に鍛えられる。









そうさ。それでも良い。

おいらは意図した敗者だ。

でも、もう自分に負けない。

おいらは自由だ。

おいらはおいらで、

おいらはおいらを信じている。

どんな体や心や境遇においても。

おいらはおいらの味方だ。