「私疲れたし、そもそもさっき食べたばかりだからおなかも空いていないし…」
皇太子妃が不機嫌そうに言い始めた、そして俺の堪忍袋がざわつきはじめる
はああ?どこのお嬢様だこいつ
そもそもこの皇太子妃とルパックは大学の同級生なのだ
そして同じゼミに通っている、皇太子妃はもう40か50代で
日本語がおぼつかないルパックに世話をしてあげて、そこから仲が良くなったらしい(母談)
なので二人ともあまり遠慮をしない関係にまでなってきている
だとしても、ピキーンと来てしまった
そしてその一人のわがままのためにどうしようという話し合いが行われ
最終的に皇太子妃(+皇太子)の夫妻は先にホテルへ送ってもらう事に
どこの姫だ、うぜえ
俺は普段誰かと喧嘩などをしてイライラしている時は、本人以外まで飛び火をかけることはなるべくしないように心がけている(限度はあるが)
なので今回もその感情はそこで殺す事にする
皇太子夫妻がホテルに送られ、俺たちは晩飯を食べるレストランに招待される
ちなみに母もかなりきていたらしいが、せっかく用意してくれたのでという事で食べていた(後日談)
前の記事にも写真ははったが暗くて見づらいので別の画像で紹介しよう
これがネパールでの代表料理「ダルバート」(代表的な家庭料理で、ダル(daal=豆スープ)とバート(bhaat=米飯)の合成語)
ステンレス製のプレートの中心に細長い少しパサパサのご飯が盛ってあり
その周囲にはネパール風カレー、漬物、煮物、ヨーグルトなど5~6種類の日本でいうおかずが乗っていて
小さいステンレス製のお椀に辛いスープカレーの様なものも乗せてある。
俺がネパールで実際に見ていた感じだと、このスープカレーをご飯の上にかけて
それを左手でこねくり回しながら食べ、また汁気が少なくなったらかけるといった感じであった
これが一般的な「家庭」料理だ
そう、家庭料理なのだが…
外食するときもたいがいこれが出てくる
日本に住んでいる俺としては「家でも外食でも同じもの食べるのって外食の意味なくね?」と思うのだが
それは結局最後までネパール人には突っ込めなかった
今回はスプーンで食べたが(他の人達は大体手)次に食べるときは俺も手で食べてみようと思った
そしてこの中に地雷が混ざっていたのだ
インド(ネパール)料理は辛いという覚悟で望んでいたので食べてみた感想は
「日本の辛口がこっちの甘口と中辛の中間ぐらいだな」という感じであった
普段からそんな馬鹿みたいに辛いものを皆が食べているわけでもなく
やはり辛いのが苦手な人も居るのだ、そう・・・
そして野菜炒め(画像で言うと緑色のやつ)に手をかけたときに口の中を電撃が走る
「あっ!?・・・・」
思わず声を出して口を手で塞いだので、周りの人達は「なんだなんだ」という風に一斉に俺に注目する
「どうしたの?」
と女性が俺に尋ねてきた、というか日本語喋れたのあなた!?
何度も言うが自己紹介の類は一切無い、仲良くなるなら勝手になってという放任主義っぷり
ちなみに誰が日本語を喋れるのかという事すらこの時は知らなかった
いや、そんな突っ込みは今はどうでもいい
さっきまで正常だった俺の口内が明らかに異常な状態になっている
英語で「熱い」と「辛い」は両方ともhotという意味がやっとわかった
恐らく唐辛子のそのものが混じっていたのだろう、それを直接食べてしまったらしい
口を閉じると口の中が溶けてしまいそうな錯覚に陥ったので
口はあけたまま手で口を塞ぐ
最初は勢いで水を口に含んだが間違いだった、水を飲んだ瞬間はマシになるが
その直後更に大きな衝撃が俺の口を襲う
「そういう時に水を飲まない方が良いよ」
と、教えられた
こういう時は水を飲むと更に悪化するので、そのまま静観したほうが良いらしい
なにやら俺に喋りかけているが俺は首を縦か横に振る事しかできない
喋れないのだ、あまりにも痛すぎて
5分ぐらいだっただろうか、しばらくするとスーッと痛みが引いてきた
その時の痛みの引き方は驚くほど明瞭だった
本当に波が引くようにはっきりと感じたのだ
「これもしかして、唐辛子入ってる?」
と俺は野菜炒めをくまなく観察したが、照明が余りにも薄暗かった為にいまいちよく分からない
今度から気をつけて食べようと、本当に思った
この辛さは人を殺せる、と俺は確信した
周りの人はニヤニヤしながら俺を見ていたが、俺はそれどころじゃねーーっつの!!!
それ以外は普通に食べる事ができ(まだ辛さが後を引いていた為少し苦労したが)
地獄の飯タイムは終了
ご飯が終わるとホテルへと向かった