昨年、花の終わった頃、農産物直売所にて数鉢売られていた。
買うのか? 花が終わったばかりのイカリソウを、いま、本当に連れ帰るのか?
胸中穏やかならざるものが在りはしたが、結局、手元に置くこととした。翌年の花姿を脳裏に描きながら。
ところが、今春、咲かなかったのだよ。不発! 結構大株だったのに、一輪も顔を見せようとしなかった。
だからという訳ではないが、いつも目にすることができるベランダの鉢植えの座を追われ、地植えとした。
どうだい、新葉が出てきている。この新葉がいいのだよ。若草色に赤が混じる。この赤、萌え出たばかりの葉にはよく見られる現象だ。その色素はアントシアニンであろうか。抗酸化作用などがあり、自ずから身を護るプロテクションってことなのだろう。
一昨年、見事な花を付けてくれた。何輪も、何輪もほころび、目を楽しませてくれた。
昨年、一輪も姿を見せることはなかった。お決まりのローテ-ションなのだろうか?
二株あったのだが、一株里子に出した。奮起したのかな、立派な葉を茂らせている。うんっ、これなら咲いてくれるのではなかろうか。
しかし、色といい、大きさといい、ほれぼれするような葉姿である。
トウチクランのつぼみに変化が見て取れた。まだ、大方が若草色なのだが、そこに茶いろが浮き出てきている。
そう、この花の異称は茶花ホウチャクソウである。白花でも、黄花でもない、茶花なのである。日一日とこの茶の色がつぼみを覆い、トウチクランは茶花ホウチャクソウとなっていく。
ツクシカラマツのつぼみ、ご覧のように、やっと花糸が目立ってきた。
こちらも、この花糸がそれとわかるようになる時、初めてツクシカラマツとして坪庭デビューを果たしたことになる。
独特の装いである。上部に仮面を思わせる3枚の花弁がある。下部には披針形をした2枚の花弁が添えられる。雄しべは10本あり、子房基部の花托が肥大した黄色の花盤に取り囲まれて2本の花柱が飛び出ている。
何度見ても思うのだ。きっとした仮面の騎士が3人で、この花柱を守っているって。まぁ、あのアノニマスの仮面のようでなかったことだけは幸いだ。