ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

〝半夏雨〟はコワイ!

2021年07月05日 | 俳句

 7月3日、熱海の土石流災害の映像を見た瞬間、あの10年前の東日本大震災の津波の映像と重なってしまいました。アアッ!という言葉しか出ませんでした。

 思えば、昨年の熊本の水害も同じ頃。昨日その1年目の追悼式が確かテレビで放映されていましたが…。

 俳句に「半夏生(はんげしょう)」という時候の季語があります。二十四節気七十二候の一つで、「半夏」は半夏草、即ち烏柄杓(からすびしゃく)のことで、この草が生え始める頃という意味です。陽暦では7月2日頃で、今年の半夏生も7月2日でした。この頃はまだ梅雨が明けていないので雨が多く、この日にはさまざまな禁忌があって、物忌みをする風習なども古来からありました。また、この日の雨を「半夏雨」といって、これが降ると大雨が続くと、昔から恐れられていたものです。

 先を読むことの空しさ半夏雨    佐藤鬼房

 作者鬼房(さとうおにふさ)については、wikipediaをお借りして…

 1919年~2002年、82歳で死去。岩手県釜石市出身の俳人。本名は喜太郎。現・塩釜市立第一小学校を卒業。10代からロシア文学を耽読する一方で俳句に目覚め、1935年より新興俳句系の「句と評論」に投句、渡辺白泉の選句を受ける。1936年より長谷川天更の「東南風」同人。1940年、徴兵により入隊、中国・南方に転戦。なお占領地の南京でそれまで面識のなかった鈴木六林男に出会っている

 戦後は西東三鬼に師事し、「青天」「雷光」「梟の会」などに参加。1953年「風」同人。1954年、第3回現代俳句協会賞受賞。1955年、「天狼」同人。のち「頂点」「海程」にも参加した。1985年、宮城県塩竃市で「小熊座」を創刊、主宰。1989年、『半跏坐』で第5回詩歌文学館賞、1993年『瀬頭』で第27回蛇笏賞受賞。……(中略)……新興俳句から「権威というものに対するエネルギッシュな抵抗」を感得したと語り(『俳句研究』1947年)、戦後は社会性俳句の代表的作家として活躍。陸奥に根ざした風土性・土俗性、人間性への意志的な眼差しを特徴とし、戦争の記憶や神話などもモチーフとした

 今までは新興俳句作家ということで、名前ぐらいしか知りませんでしたが、いろいろと読んでみると何ともスゴイ人です。北国の過酷な自然環境の中で、まるで風雪に耐え抜いた一本の大樹を見るような…そんな気がしました。

 さて、上掲の句、ここに描かれているのは「半夏雨」のみ。後の上五中七は言わば理屈です。ここで〈先を読む〉というのは、自分の前途や将来がどうなるかと予測するということ、または大きく日本のこれからがどうなるかということともとれます。要するに見通しが利くかということなんでしょうが、普通は先が読める人などは〝先見の明〟があるなどといって賢い人のことを言いますよね。しかし、そういう人はなかなかいませんから、普通の人には「難しい」ことだと思うのです。ところが鬼房はそういわず、〈空しさ〉と言っているんです。そこに彼の考え方や生き様が投影されているような気がします。もしかしたら、鬼房は先を読みすぎてそれが裏目に出た経験があるのかも…ね。

 この句が、何年頃の、鬼房が何歳の時に詠まれたものか分かりませんでしたので、はっきりとは言えませんが、もし戦後のまだ日本の情勢が混沌としている頃だとすれば、今後どう世の中が転んでいくのか、全く見通しの利かない時代に、〈先を読むこと〉は、ある意味まるで〝捕らぬ狸の皮算用〟よろしく、はかなくも空しいものに思えたのではないのかとも考えられます。

 そういえば、この鬼房の〈先を読む空しさ〉は、まるで今の先の読めないコロナ禍の時代にぴったりな感じがしませんか。あの世から鬼房さんも見ていらっしゃるかしら?

 この天からの雨だってなければ困りますが、これがいつ災厄に変化するかは分かりません。特に最近の地球温暖化での異常気象は全く先が読めないことが多いんですから。昔の農家の人たちが先の天候を読むことなどは、当時では非常に難しかったでしょう。だから人々は昔からの言い伝えなどを信じ、それを守って少しでも災難を逃れようと、日々注意を怠ることなく敬虔に暮したのではないでしょうか。

 しかし、天災が襲ってきた時にはもう為す術はありません。これは今も昔も同じです!昨年の熊本も今年の熱海も、ちょうど〝半夏雨〟の頃だったのですから。あの東日本大震災の時もよく聞きましたが、私たちは先人の残してくれた教訓というものを、もっともっと心から真摯に受け止めて、行動しなくてはいけませんよということかも。

 ところで、この〝半夏雨〟については、私の過去のブログ(2019年7月3日〝半夏雨?〟)に書いていますので、よろしかったら読んでみて下さい。

https://blog.goo.ne.jp/kanekuti3515/preview20?eid=6395d24edc9aaf3a399851e486e598b9&t=1625677946444

 ちなみに、「半夏生」といって、ドクダミ科ハンゲショウ属の臭気のある多年草があります。同じ頃に咲く花ですので、よく間違いますが、これは「半夏生草(はんげしょうそう)」とするか「片白草(かたしろぐさ)」と詠みましょう。

 写真は、先日の阿弥陀寺で撮ったもの。烏柄杓も半夏生草も我家にあるのですが、今年は草を刈った後で皆小さくて…それで烏柄杓はお借りしました。ゴメンナサイ!

烏柄杓(カラスビシャク) - 行く川の流れ

コメント (19)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする