おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
薬学博士渡辺武著『漢方が救う人体危機』
現代医療の誤りを正す
第1章 漢方薬はなぜ効くか
生命は「土と水と空気」から生まれた
p41ノイローゼ、自律神経失調症、アレルギーは体質ではない!
気の病――頭が重いとか気分がすぐれないという程度の病気は、いま述べたように西洋医学では病気のうちに入りません。
ふつう、病院では薬物で中枢神経の興奮をあさえたり、眠らせたりするだけで〝臭いものにふた〟式のろくな治療法もない病です。
気とはおおざっぱにいって、精神や神経などと訳していますが、漢方では気はもっと広い意味にとっています。
気は気力でありエネルギーの源であるのですから、人間の主体性にも関係があります。
病気だって、〝気を病(や)む〟と書いているくらいですから、人間にとっては、重要な役割をもっているものです。
気剤は気の高ぶりや停滞など、気の変調を整える薬剤です。
気とか気剤は漢方独特のものです。
血とは血液であり、心臓や循環系統のこと、血剤は循環系の変調や結滞から起こる瘀血(おけつ)などを治療する薬物です。
水とは水代謝のことであり、口から吐き出す喀痰(かくたん)、汗、涙、大小便の排泄物関係のことです。
水分代謝の変調で起る病気を水毒ともいって、その治療には水剤、利水剤が用いられています。
人間の病因は大きく分けて、この「気・血・水」の関係から七つのパターンに当てはめられます。
気・血・水のそれぞれ単独の原因からくる病の三病像、気と血、血と水、気と水という二つが組み合わされた原因による病気の三病像、気と血と水の三つの要素が重なった病気の一病像と合わせて七通りの病像に分けられます。(三九ページの図p38胃にあるヘドロは吐剤で、腸に詰まったものは下剤で出しなさい!参照)。
たとえば、神経性胃潰瘍は、頭を使ったため自律神経の変調で胃に潰瘍ができる病気です。頭と胃とどういう関係があるのでしょうか。
神経を使うことは頭部に血液を充血させることで、発汗作用が盛んになり、俗にいう血が頭にのぼって、反対に胃の消化器官などには血液が回らずお留守になり、食物も消化されないままヘドロ化して、胃や腸に潰瘍を起こし、潰瘍が進むと出血や吐血をして貧血になります。
神経を使い、血便を出したり吐血して貧血するのだから、気・血・水の三拍子(さんびょうし)そろった病気です。
この神経性胃潰瘍の場合は、気剤・血剤・水剤を証(診察)によって処方することになります。
血とか水は、形のあるもので肉体そのものをさします。
気は無形の精神とか神経です。
漢方でいう無形の気が、人間にとってどんなにたいせつであるか、例にあげた神経性胃潰瘍からもわかります。
気・血・水という人間の原点から、気である精神や神経を抜きとったら、人間は肉体だけの〝植物人間〟になってしまいます。
気剤は香りのするもの、辛(から)いものをいいます。
前にあげた諺(ことわざ)の「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合(ゆり)の花」は、いわば古人が諺に託して伝えた病の一つのパターンを示したものです。P34腹が立ったら芍薬を、生理不順になったら牡丹を飲みなさい!
芍薬は水剤、牡丹は血剤、「歩く姿は百合の花」というのは、百合が香り高い気剤だからです。
人体の陰陽 自然界の陰陽
陰 |
陽 |
|
陰 |
陽 |
寒 |
熱 |
寒冷 |
熱温 |
|
下肢 |
頭・上肢 |
秋冬 |
春夏 |
|
水 |
血 |
夕夜 |
朝昼 |
|
湿 |
乾 |
西北 |
東南 |
|
堅 |
軟 |
地 |
天 |
|
下半身 |
上半身 |
下 |
上 |
|
裏 |
表 |
|||
右上半身 左下半身 |
左上半身 右下半身 |
内 |
外 |
|
右 |
左 |
|||
腹 |
背 |
黒白 |
青赤 |
|
裏 |
表 |
水 |
火 |
|
内 |
外 |
湿 |
乾 |
|
肺腎 |
肝心 |
堅 |
軟 |
|
虚 |
実 |
植物 |
動物 |
香辛(こうしん)料は水分を発散させる作用があります。通常、手のひらが湿っているウエットな人は、過剰な水分が発散できないからです。
それだけ皮膚や粘膜(ねんまく)、神経、呼吸器に負担をかけています。
だから心臓は人一倍むだに働かされることになります。
ノイローゼとか自律神経の失調とかアレルギーは、医者にも不可解な病で、体質だと片づけていますが、体質ではありません。
水分の発散ができなくて、心臓に負担をかけているのです。
気剤でどんどん発散をしてやれば、改善できること請(う)け合いです。
人間の病気は四百四病(しひゃくしびょう)あるといわれていますが、このたくさんの病気も、気・血・水の変調の七つのパターンに分類されるのです。
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