日経新聞 2022年10月22日 18:46 (2022年10月22日 19:18更新) より
【ウィーン=田中孝幸】9月のイタリア上下院の総選挙で第1党になった極右「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首は22日、宣誓式を経て首相に就任し、極右「同盟」と中道右派「フォルツァ・イタリア」との連立政権を発足させた。閣僚人事では国際協調派や実務派を要職に起用し、対外的に穏健路線を強調した。
「自国優先」を掲げる新政権に対する欧州各国や市場の不安を払拭する狙いだが、対ロシア政策を巡っては波乱の芽が残る。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は22日、「建設的な協力を期待している」とツイートした。
マッタレッラ大統領は今回、首相指名と同時に閣僚人事の承認も済ませ、近年の例よりも素早く新内閣を発足させた。同氏は21日「任務を全面的に遂行できる政府を必要としている国内外の状況を考慮し、迅速に進める必要があった」と語った。
連立与党間では総選挙後、人事を巡る暗闘が続いた。メローニ氏は、調整が長引けば政権への内外の不安が強まると警戒。EUとは協調姿勢で、閣僚人事に事実上の拒否権を持つマッタレッラ氏から早期に承認を得るため、要職にはイデオロギー色の薄い実務派を多く配置した。
ウクライナに侵攻したロシアへの対応で重要な外相にはフォルツァ・イタリア出身のタヤーニ元欧州議会議長を起用した。欧州委員も歴任した同氏はEUとの太いパイプを持つ。20日には侵攻を非難し、北大西洋条約機構(NATO)を重視する立場を強調していた。
イタリアの深刻な債務問題を担当する経済財務相にはドラギ前政権で経済開発相を務めた同盟出身のジョルジェッティ氏を登用した。穏健派の同氏はドラギ氏を強く支持していたことで知られる。前政権が重視した財政再建にも一定の目配りをする姿勢を市場関係者に印象付ける狙いだ。
政党とのつながりが薄い元官僚を実務派として起用する例も目立った。移民問題を担う内相には元内務官僚のピアンテドージ氏をあてた。労相、保健相も実務派だ。
フォルツァ・イタリア党首で、刑事訴訟を抱えるベルルスコーニ元首相が求めていた法相ポストはFDI出身のノルディオ氏に与えた。
メローニ氏は自身を除く24の閣僚ポストのうち同盟とフォルツァ・イタリアにそれぞれ5つを割り振ったが、人事や政策運営の主導権は自分で握り続ける意思を鮮明にした。家族関係の担当相や教育相にはメローニ氏の思想を共有する強硬な保守派をあてた。
メローニ氏が「風圧」を感じるとすれば、同盟とフォルツァ・イタリアは連立与党が上下両院で過半数を維持するうえでキャスチングボートを握るという事実だ。右派政治家としてのキャリアが長い同盟のサルビーニ党首、ベルルスコーニ氏はいずれもロシア寄りで、対ロ制裁に懐疑的な姿勢で知られてきた。
両氏はメローニ氏を政治家として「格下」とみている向きもある。ロシアへの強硬姿勢を打ち出す同氏の外交の足かせとなる可能性がある。
ミラノ・カトリック大のパルシ教授は「メローニ氏がサルビーニ氏とベルルスコーニ氏の影響力をコントロールできなければ、ウクライナへの武器供与などの国会の重要議決の際、与党が足並みをそろえられないリスクもある」などと指摘する。
【ウィーン=田中孝幸】9月のイタリア上下院の総選挙で第1党になった極右「イタリアの同胞(FDI)」のメローニ党首は22日、宣誓式を経て首相に就任し、極右「同盟」と中道右派「フォルツァ・イタリア」との連立政権を発足させた。閣僚人事では国際協調派や実務派を要職に起用し、対外的に穏健路線を強調した。
「自国優先」を掲げる新政権に対する欧州各国や市場の不安を払拭する狙いだが、対ロシア政策を巡っては波乱の芽が残る。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は22日、「建設的な協力を期待している」とツイートした。
マッタレッラ大統領は今回、首相指名と同時に閣僚人事の承認も済ませ、近年の例よりも素早く新内閣を発足させた。同氏は21日「任務を全面的に遂行できる政府を必要としている国内外の状況を考慮し、迅速に進める必要があった」と語った。
連立与党間では総選挙後、人事を巡る暗闘が続いた。メローニ氏は、調整が長引けば政権への内外の不安が強まると警戒。EUとは協調姿勢で、閣僚人事に事実上の拒否権を持つマッタレッラ氏から早期に承認を得るため、要職にはイデオロギー色の薄い実務派を多く配置した。
ウクライナに侵攻したロシアへの対応で重要な外相にはフォルツァ・イタリア出身のタヤーニ元欧州議会議長を起用した。欧州委員も歴任した同氏はEUとの太いパイプを持つ。20日には侵攻を非難し、北大西洋条約機構(NATO)を重視する立場を強調していた。
イタリアの深刻な債務問題を担当する経済財務相にはドラギ前政権で経済開発相を務めた同盟出身のジョルジェッティ氏を登用した。穏健派の同氏はドラギ氏を強く支持していたことで知られる。前政権が重視した財政再建にも一定の目配りをする姿勢を市場関係者に印象付ける狙いだ。
政党とのつながりが薄い元官僚を実務派として起用する例も目立った。移民問題を担う内相には元内務官僚のピアンテドージ氏をあてた。労相、保健相も実務派だ。
フォルツァ・イタリア党首で、刑事訴訟を抱えるベルルスコーニ元首相が求めていた法相ポストはFDI出身のノルディオ氏に与えた。
メローニ氏は自身を除く24の閣僚ポストのうち同盟とフォルツァ・イタリアにそれぞれ5つを割り振ったが、人事や政策運営の主導権は自分で握り続ける意思を鮮明にした。家族関係の担当相や教育相にはメローニ氏の思想を共有する強硬な保守派をあてた。
メローニ氏が「風圧」を感じるとすれば、同盟とフォルツァ・イタリアは連立与党が上下両院で過半数を維持するうえでキャスチングボートを握るという事実だ。右派政治家としてのキャリアが長い同盟のサルビーニ党首、ベルルスコーニ氏はいずれもロシア寄りで、対ロ制裁に懐疑的な姿勢で知られてきた。
両氏はメローニ氏を政治家として「格下」とみている向きもある。ロシアへの強硬姿勢を打ち出す同氏の外交の足かせとなる可能性がある。
ミラノ・カトリック大のパルシ教授は「メローニ氏がサルビーニ氏とベルルスコーニ氏の影響力をコントロールできなければ、ウクライナへの武器供与などの国会の重要議決の際、与党が足並みをそろえられないリスクもある」などと指摘する。