鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(5)

2013年03月24日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 第3の点は、これからの賃金、賞与、退職金あるいは福利厚生費などの管理については、総額人件費の中で考えねばならないことである。総額人件費は、低成長時代にあって企業の支払いうる総額人件費は限られたものになってきている。また、賃金、賞与などの現金支給が既に世界水準に達していることを考えると、この限られた総人件費を、どの部分に重点を置いて配分するのがよいのか、今後、労使で十分話し合い、対応する必要がある。

 他方、賃金、賞与、退職金について、能力主義、業績主義を強める方向が求められている。更に、21世紀の方向を考えると、退職金や福利厚生費を定額賃金に繰り入れるといった制度改革も考えられる。これもまた、国際基準化の方向かもしれない。

 企業経営にとってもっとも大切なのは「企業は人なり」であり、とりわけ将来企業をしょって立つ「若手コア社員」に期待するところが大である。こうした若者の勤労観が変化してきている一方で、企業が求める社員の能力や人間像も変化してきている。新しい21世紀を迎える我が国企業経営にとって、その中心的担い手である「若手コア社員」に求められている能力は何か、彼らを活性化するには人事処遇制度をどのように改革したらよいのかの考えを本書で考察している。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(4)

2013年03月23日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 第2の点は、勤労者意識の変化や高齢化、女性の労働力化の増大等による雇用形態の多様化が進んできていることである。今後の雇用の在り方については、「長期蓄積能力活用型」(終身雇用的勤労者層)、「高度専門能力活用型」(高度な専門知識・技能を持ち1~3年の短期間契約だが高給を受ける勤労者層)、「雇用柔軟型」(スーパーやコンビニのパート・アルバイトなど比較的単純労働の勤労者層)の3つの雇用グループに分けられる。そして、これらのグループの雇用者に占める割合は、それぞれ現在の81%、7%、12%から将来は71%、11%、18%になると見られている。つまり、今後は終身雇用的な「長期蓄積能力活用型」グループの勤労者が減り、他のグループの勤労者が増えるということになる。この傾向は、企業側の考え方だけでなく勤労者側の考えでもあることにも注目すべきである。人事担当者としては、自社の要員管理に対して、この3つのグループの割合をどう設定し組み合わせるのが経営にとって効率的なのかを決める雇用ポートフォリオ(組み合わせ)が重要な仕事となってきている。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(3)

2013年03月22日 00時00分01秒 | ブックレビュー


 まず第1の点は、経営に対する考え方の基本が大きく変化してきていることである。それは、1985年のプラザ合意(先進7カ国蔵相会議)で、為替レートが1ドル240円程度から一挙に120~140円となり、日本経済が将に世界のトップランクに躍り出た以降とそれ以前とでは大きな違いを見せてきたことである。つまり、それまでの経営の基本は「コスト+利益=価格」の考えで、企業はかかったコストに必要な利益を加えた価格で経営をすれば良かった。別の言葉でいえば、企業(供給者)は自分の理論で仕事ができたともいえる。しかし、プラザ合意以降は「コスト↓=価格↓-利益↑」という考えで仕事をせざるを得なくなってきた。

 この式が意味するところは、国際基準が求められるなかで、我が国が国際的に低いとされる1単位あたりの利益を上げなければならなくなり、他方、価格は国境のない大競争時代の中では下げざるを得ない。下がる価格から上がる利益を引いたコストは、当然下げざるを得ない。
 従って、この下げざるを得ないコストで経営ができない企業はつぶれるか、多の分野を開拓しなければならない時代になってきているということである。そうでなければ、企業が価格を決められるような消費者の求めるものまたはサービスを提供できるようにならなければならない。経営が、企業(供給者)優位から、消費者・ユーザー(需要者)優位の時代へと確実に変わってきているのである。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(2)

2013年03月21日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 (財)雇用振興協会は雇用促進住宅の管理運営をする法人であるが、財団法人の定款には通常の事業とは異なる、全額出資で行う本来事業であり、このことが財団法人たる所以である。雇用振興協会の設立の目的は、労働者の雇用促進に関する調査、研究、広報宣伝等を行うとともに、雇用促進事業団の行う業務に協力し、もって労働者の能力に適応する雇用の促進に寄与し、労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。としており、昭和34年職業訓練振興会として発足し、昭和46年に雇用振興協会として改称し、現在に至っている。雇用の促進に寄与するため、景気情勢、社会風潮、雇用動向とその時宜に則した諸問題をとらえ、協会発足以来、継続して調査研究活動を行い、その結果を報告している。
 
 雇用振興協会と日本経営者団体連盟で平成9年2月に行った調査によれば、各企業は経営環境の変化への対応策として、次の諸点をあげている。もっとも多くの企業が指摘したのが「消費者・ユーザーニーズの把握と高付加価値商品やサービスの開発」次いで、「人件費負担の軽減、少数精鋭化」、「新規事業による多角化」、そして「21世紀に向けた技術革新」であった。こうした環境の中で、企業が認識しておかなければならない経営課題として3つの点をあげている。

ブックレビュー 「若手コア社員像」(1)

2013年03月20日 00時00分01秒 | ブックレビュー

 [我が国を取り巻く経済・経営環境は、急激な変化を遂げている。その変化を箇条書きすれば、①国際化における国境のない大競争の時代 ②情報通信革命の時代 ③大失業の時代 ④少子化・高齢化時代ということができる。企業経営に関する多くの事項が、こうしたものとの関連性で考えなければならなくなってきている。先進各国ともほぼ同様な状況下にあるが、加えて我が国は、1990年代初期のバブル経済の崩壊以降、低成長時代に入り、更に経済の成熟化の進展によって、企業は苦しい経営を強いられている。国内市場は飽和状態の中で、企業は鮮烈な競争の時代を迎え、他方、海外市場は為替相場が不安定なために、きわめて不透明な経営を余儀なくされている。更に、国が構造改革を進める中で、企業も種々の規制緩和が実施されてきている。業種や規模に関係なく、我が国企業はあらゆる面で国際基準(グローバルスタンダード)が求められている。]

 上記は、小生が手がけた「大競争時代の若手コア社員像」(1998年3月28日発行 経営書院)副題は「求められる人材と若手・中堅社員の人事処遇・教育・採用の新方向」の冒頭の一節である。

 発刊して既に15年が経過しているが、この標題は何時の時代にも求められる課題として、今、まさにTTP参加の有無が議論されている中、日頃あまり眼にしない項目でもあるため、急遽、ブックレビューとしてご紹介することにした。企業調査を実施し、その結果を分析し、詳細に報告している。また、代表的企業の事例紹介が行われている。
読者を特に限定はしていないが、企業等の人事担当者やこれから就職を目指す学生に対し、ご一読をお薦めしたい。人事面から、我が国の企業文化としての日本型経営の構造がよく理解できると思われる。

 参考:調査内容や研究委員会に参加された各企業の詳細な事例及び分析については誌面の関係 で割愛します。必要であればこの報告書が同名で経営書院から出版されています。古書となっ ているため、検索サイトからアクセスしてみてください。

技術移転のための検定基準の見直し(3回シリーズその3)

2013年03月19日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 基準の見直しには、変化する技術との整合性、陳腐化した工程、技能・技術習得には欠かせない基礎的なもの、応用範囲の限界、時代とともに統合し複雑化する業種範囲、将来性を見据えて、単に業種の専門性だけでは判断がつかない部分にも拡張する必要があった。

 筆者として一番気がかりであったのは、我が国が辿ってきた塗装業界の歴史や対象が果たして研修生の母国の産業と一致するかということであり、研修期間が先に決まり、国によってまたは個人によって修得度が異なるのが一般的な能力開発であるが、どうも主客転倒しているように思える。技術移転の効果がはなはだ疑わしいところがある。研修における効率性は実施側の評価と研修受け手の評価との相互分析が重要となる。実施側の効率性は研修に費用をかけず、画一的で生産量を上げる技法に偏る傾向があり、時として受け手の非効率性を生む。研修生排出国に赴き、研修後のフォローアップが試みられていると聞いたが、正直なところそのフィードバックはどの部分で誰が担うのであろうか?

 弛まぬ基準の改正は一見すると合理的で、理想に聞こえるが、あまり短期間に見直しが続くと本来の技術移転対象職種の基準がぐらつく畏れがある。

 技術革新が激しい時代では、どの業種においてもいえることであるが、技術移転の効率化は研修内容の設定時に受け手側の現状が十分に掌握でき、能力を事前に把握することで、到達目標とのギャップが研修内容になるわけであるから、基準の有効範囲を正しく捉え、受け手側の不足した技術力を付与することに力点を置くことが、研修効率を高めるためにも重要であると思われる。その意味では基準も複線的な基準(ガイドライン)があってしかるべきである。(このシリーズ最終回です)

技術移転のための検定基準の見直し(3回シリーズその2)

2013年03月18日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 研修生は企業等での1年間の研修修了時に技能検定基礎2級のグレードをクリアしないと、引き続き在留できず、帰国することになる。一昨年の6月に研修・技能実習制度を担当する財団法人国際研修機構能力開発部移行業務課から、技能検定試験基準の見直しを依頼された。委員会方式で担当した4名の委員のうち1名は博士号を持つ学識経験者、2名は塗料・塗装 の企業からの専門家であり、筆者は長年携わった職業能力開発から参加することとなった。

 合計3回の委員会を経て一昨年度末に見直しが完了した。塗装職種には移行職種として金属塗装作業と建築塗装作業、鋼橋塗装作業、噴霧塗装作業が決められているため、この作業からはずれた内容は受験できない。実習生のうまみは賃金をもらいながら技術・技能の習得ができることと、実習生となって、残る2年間に得る賃金であり、受け入れ企業は労働力としての比較的低賃金で人材を雇用できるというメリットがあるため、どちらも研修後の2年間に熱が入ることになる。担当者の話によると移行職種は増やすことが難しいため、木工家具塗装作業や、塗料製造(調色作業)などに従事した研修生はどの塗装作業で受験するかの選択が出てくる。ここで問題となったのは我が国の塗装職種の範囲であり、カバーする領域であった。たとえば建築塗装作業における足場組み立て作業は実際に塗装業者が行っていたとしても、建築塗装の移行のための検定基準には含めないとすることとしている。

 専門に足場作業だけを行ってきた研修生がいたとすれば、あり得ないことではあるが-研修を受け入れる場合に企業が提出する訓練計画・訓練内容では足場作業だけの計画は受理されない-その場合は塗装ではない職種(例、とび)への受験申請となる。また、養生作業は建築塗装では必須となっているため、塗装工程として含むこととした。判断が困難であったスプレーガンを用いた噴霧塗装作業では、吹き付ける材料が着色剤や塗料以外の材料(例えば接着剤)となると一般的な塗装作業ではないと考えた方がよい等、相対的に判断したところもある。(次回へ続きます)

技術移転のための検定基準の見直し(3回シリーズその1)

2013年03月17日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)が行っている、支援国の経済発展を担う人材育成を目的とした外国人研修・技能実習制度は、すでに17年を経過し、2010年には年間約30万人の研修生を近隣諸国から受け入れている。この制度は5省共管の合法な外国人受け入れ制度で、在留期間は最長で3年間であり、1年目は研修生として研修に従事し、2年目、3年目は実習生として実務に携わる。研修・技能実習生制度における研修生は、一昨年3月に入管法改正によって、労働法の対象となり、1年目の研修期間は労働ではないため、賃金を得ることはできないが、全期間を通じ、制度活用団体や企業に管理責任が義務づけられる。制度開始以来、報道されているとおり、様々な不祥事が発生しており、主なものとしては研修手当の不払い、実習生期間中の賃金の不払い、パスポートの取り上げ等の人権侵害、実習生の不法滞在や失踪等があり、それらの対処に苦慮しながら、現在に至っている。不正行為を根絶するために、抜本的な制度の見直しを検討中であり、管理監督を強化し、研修部分をやめて、在留 期間を5年にするという案も浮上している。

 1年間の研修が修了すると能力検定試験が実施され、試験に合格すると実習生として企業との間に雇用契約が結ばれる。つまり、在留期聞が2年間延長される。移行できる職種は63職種、116作業となっている。

 我が国では外国人労働者の受け入れは専門的な分野に限っているため、研修・技能実習制度は開発途上国等に対する技術移転のためであって、単純労働の対策ではない。求職者が増加している時期に日本人労働者が不足している職種に受け入れ機関がある構図は、職種の一部に不自然な労働力需給関係があることを暗示しており、大多数の受け入れ企業の真摯な努力や適正な実施とは別に、制度の拡大解釈や、不適正運用の結果、国内労働力不足分を外国人労働者にあてて、生産を維持するといった、企業の安易な補充策としての運用がないとはいえない。一方、研修生排出国はアジア地域、中でも中国が最大の排出国であり、研修生の中には日本での賃金を得ることが主目的で来日するものがいることも事実のようだ。(次回へ続きます)