鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

コンピテンシーをベースにした人事考課(5回シリーズその2)

2013年03月09日 00時00分01秒 | 緑陰随想


 しかし、多くの企業では人事考課の中で減点法が用いられてきた。減点法は職務ごとに、標準的な職務遂行基準が、項目ごとに設定され、対象となる者の職務遂行能力が、基準から離れると、一定の減点を行う。基準作成には、職務分析や、標準化作業が基底にあり、当然対象者がその方法について知っていることが必要である。その意味からすれば、コンピテンシーの意味との大幅な違いはないように思う。我が国の職務分析によって作成した基準を、唯単に個人業績の最優秀者を基準に置くだけで、減点法と何ら変わりがない。

 むしろ、我が国の減点法の方が、基準を中心にプラス、マイナスが附与でき、個人においては、励みとなる。絶対評価に近くなるし、公的な機関での基準の作成は一見すると容易に思える。そうでもないことは、我が国の特徴である独立した企業文化のせいである。
企業ごとの基準作成になると各社それぞれが独自の判断基準を持つため、標準化が導入企業分必要になることが予想される。欧米との違いは、本来の意味の職種別の横断組織を持たないため、基準への遵守が弱まる傾向に成りやすい。

 例えば、A社の機械工とB社の機械工とは、職務内容が異なり、代替えが効かない。統一基準を作ろうとすると、関連分野の水準調整が必要となる。調整会議を設置したとしても殆どの場合、どの企業にも適用する基準作成は期待できない。このことは、欧米流のジョブホッピングである転職が進まない理由の一つに上がっており、また、離職した後の職業訓練は、補充や、追加ではなく、職種転換の訓練コースがあるだけである。我が国の技能検定制度が果たしてきた意味や役割は大きいが、試験が標準化すればするほど企業の職務との遊離が広がり、試験のための課題は、実際には行われることがない課題を実施するという奇妙な状況が生じる。(次回へ続きます)

コンピテンシーをベースにした人事考課(5回シリーズその1)

2013年03月08日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 欧米の考え方のベースは合理主義思想が貫かれ、コンピテンシー(能力)を追求することが流行となっている。コンピタンスとは適訳ではないが、総合的能力のことで、職業能力開発用語集では、コア・コンピタンスの用語で説明されている。(転記 顧客に対する他社のまねのできない物、自社独自の技術で価値を顧客に提供できる物、すなわち企業間で競争上での特徴、強み(ノウハウ技術を含む)、つまり顧客からみた企業の力をいう。コア・コンピタンスが組織、企業の力であるとは対照的に、コンピテンシーは個人の力といえる。
 いずれも新しい概念であり、現在発展途上の理論であるが、コア・コンピタンスとコア・コンピテンシー双方のリンクが今後の大きなテーマである。例えば、携帯に便利な超小型化技術や超薄型画面の画像ディスプレイ、画像処理技術などがあげられる。)能力開発の現場でも、開発途上国行政官の研修で、コンピテンシーをベースにした訓練についての要望があった。しかし、当方理解不足でもあり、講義の担当を辞退したが、どうもよく分からなかったため、今回、知り得る範囲で考察したことをお伝えすることにした。Web辞書のWikipediaでは、未稿となっており、はっきりとした説明はこれからのようで、とりあえず概要については書かれてあるので、後日掲載することにする。
 コンピテンシーは、行動特性と説明している文献が多いが、要は企業における業績が優秀である社員の行動を形作っている要素を分析し、その部門における行動規範として位置づける。
 その要素としては、具体性のある内容で、顧客志向、傾聴力、変化への適応力、計数処理能力、リーダーシップ、論理思考等の行動特性がベースとなり、業務に対しての使命感や価値観といった心理的動機付けを、アウトプットする層状構造を持つようである。これらを行動モデルとして、各自のコンピテンシーとの相対比較によって、人事考課の参考にし、欠落部分については研修や訓練を行うことによって、組織のレベルアップを図ろうとする考え方である。従来の人事考課項目は、協調性、積極性、規律性、責任感などを潜在的な部分を含め、考課対象としてきたが、コンピテンシーはむしろ、個人の顕在化した事柄を対象としている点で従来の項目と異なっている。(次回へ続きます)

教材作成の経験から(8回シリーズその8)

2013年03月07日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 cは執筆者に大変ご苦労をかけている点であるが、執筆する時間が、勤務時間外となるため、作成委員になることによって、文化的な生活までも奪われる結果となりかねない。執筆者の都合の良い時期と、事務局で依頼する時期とがうまく合うように、例えば、学校関係では、夏期休暇時や連休をうまく設定し、利用することも時には行っているが、殆どの場合合致することはない。

 今後の執筆方法の一案として一カ所に数日間執筆委員が集まり、集中して執筆できる工夫や流動研究員制度を利用して、研究員の方にお力添えをしていただくことを考えている。また、謝金等についても努めて多く支払われることも重要である。

 d及びeは事務局側の問題であるが、職業訓練研究センターに教科書作成業務(教材含む)が雇用促進事業団訓練部より移管され、事務局担当者が職種系別に分担することとなったため、専門的立場から責任体制が引かれ、dの問題はある程度解決できたと考えている。

 事務手続きは予算執行を伴うため、複雑な手続きを要するが、例えば、決裁等権限と責任を移譲し、極力単純化して行かなければならないが、取り外すことができない点も多い。
事務手続きの点で多くの時間を費やすことは、教科書発刊時期に大いに関係するため、今後とも検討すべき課題である。
 認定申請業務や印刷業者との関係も徐々に合理的な方向に向かっているため、作成期間はある程度短縮できると考えられる。

 終わりに、教材作成の方針、教材の特徴等を十分理解してうえでそれを活用願えれば、教材作成目的の大半は達成されたと考えて良いのではないかと思う。指導員が効果的に職業訓練を行いうるような教材を作成するべく、常に上述のように努力している。昭和53年度より、職業訓練研究センターが教材の開発作成を手がけるようになったので、その組織をフルに活用し、また、流動研究員や、関係諸氏のお力添えを得てよりよい教材、より使いやすい教材の開発作成に力を注ぎたいと考えている。教科書の内容が現状にマッチしない、誤字、脱字、写真の不鮮明、内容の古さ等について皆様の率直なご指摘、ご意見を当センターにお寄せくださるようお願いしたい。(このシリーズ最終回です)

教材作成の経験から(8回シリーズその7)

2013年03月06日 00時00分01秒 | 緑陰随想

(2) 作成期間

 教科書作成に要する期間は一定していない。むしろ、計画で示された日程通りに完成することはほとんど無いと言っても過言ではない。当然決められた予算の中で処理するので、計画した期間内に脱稿・印刷・発刊しなければならないが、作成期間が延長することへの主な原因として、次のことが考えられる。

a 事務局の執筆指示内容と執筆者との考え方の相違
b 文章表現力の問題
c 執筆に要する時間
d 事務局整理上の問題
e 事務手続き及び印刷業者との問題

 aについてはよく問題となるのだが、訓練校では法で示された訓練時間の中で教編によってカリキュラム及び訓練目標を訓練校ごとに策定している。事務局としては、執筆内容を教編にあわせるのが普通である。つまり、教編で示された内容を原稿枚数に換算して執筆枚数(予定)を割り出している。作成委員が執筆する段階で、時間数や原稿枚数を事務局の方で制限すると、教えたい内容を指示枚数では表現できない場合や指示枚数では多すぎる場合が出てくるため、執筆内容の深さと幅に凹凸が生じることとなる。また、執筆内容が専門的になりすぎ、必要以上の内容の執筆や訓練校の実情にそぐわない内容が生じる。

 これらの調整には多くの時間を要する。特に職業という広い概念で見た場合、職務内容の変化は多様化しており、その調整は難しい問題である。
 執筆者間の調整、事務局案の提示内容の厳選化などにより、今後は執筆前に要する時間が多くなると考えている。bについては、事務局で執筆要領及び要項を示している。しかし、表現力は多くの評価基準があるため、今後の課題として問題点を十分把握し、改善策を考えることにしている。(次回へ続きます)

教材作成の経験から(8回シリーズその6)

2013年03月05日 00時00分01秒 | 緑陰随想

(1) 教科書作成委員と作成内容

 事務局が左官科の教科書を作成する場合、(多の訓練科についても同様である)、計画が上がれば、それに対する目的、内容、執筆委員、作成期間等と作成職種を誰が担当するかの検討がなされ、担当者が決められる。当センターにおいては、今後、特例を除けば、各職種系訓練研究室(左官科は建設・木工系訓練研究室)が担当する。担当者は既刊の教科書や関係職種との調整をし、訓練基準や教編に基づき、作成科を持つ訓練校、関連企業等に対して、意見聴取をする。その結果を考慮して数回の事務局会議を持って事務局としての作成方針を策定する。今回の左官科においては、1.分冊にすること、2.各章ごとに習得する目標を簡単に述べ、訓練生の学習目標を明確にし、動機付けを行うこと、3.各章ごとに技能検定二級程度の問題を精選し、解答については巻末にできるだけ簡潔に説明すること、4.特に重要な点で説明を要することについては、下欄に〈参考〉、〈関連知識〉、〈重要〉等の区分で若干の説明を加える、等を作成方針に含めて策定した。

 担当者はこの作成方針によって執筆担当する作成委員を誰にするかを決めるが、これが大変な作業である。教科書がよい物になるか成らないかは、この作成委員によって左右されるとも言える。いわゆるなりわい(生業)的職種については特に苦労する。これらの職種は旧来の知識体系では業務内容が十分に理論化できない面が多い。例えば、経験的な工法や材料の使用方法などがそれである。多くの工法や材料は規格化されていないし、新しい工法や材料が現場では既に使用され、実績も多く、一応の評価がでているが、JIS(日本工業規格)やJASS(日本建築学会標準仕様書)等に規格化されるまでには、それ相応の期間を必要とするため、工法や材料の面で、現場が優先していると言える。教科書は職種におけるこのような成果に謙虚でなければ成らず、また、それを取り入れることにおいて貪欲でなければならない。このことは教編との関係を考えずしては正確に捉えることができないが、作成委員の選定にもこの辺の考えが曖昧であると教科書の内容も曖昧となり、指導員が苦労することになる。そこで教科書に盛られる内容を全国的に共通する事柄を主な柱とし、この考えの基に作成委員を選定する。

 いわゆる生業的な訓練職種では、委員間の調整が最大の課題となる。調整には委員会の回数を増やすことばかりでなく、執筆分担する項目の細分化が必要であり、執筆委員を多くすることも改善策の一つである。左官については、学術の面で東京都立大学の教授、現場については日本左官業組合連合会(東京都新宿区払方町25)より推薦を受けた方、職業訓練校からは2名の指導員を作成委員として委嘱し、上述した問題点をできる限り少なくすることを考慮した。当然のことながら、専門領域での考え方の違いや表現方法の違いがあり、その調整作業に多くの時間を費やした。(次回へ続きます)

教材作成の経験から(8回シリーズその5)

2013年03月04日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 左官技能に地域差があるという点は、時代の流れという単純な理由で理解すべきではない。左官技能も他職種と同じように今後ますます機械化されて行くであろう。現状の段階は熟練技能分野が単純技能化する過程であるといえ、技能の質的変化が起こる。例えば、すさ(左官材料)と砂とを混ぜ合わせて塗材を作ることは、今や電動ミキサーが受け持ち、従来のかんや目分量で行っていた調合は、壁面の仕上がり程度により、気温、湿度、風量等を考慮して、正確な計量が行われるようになった。

 更に、施行規模の大小を問わず、短期間に一定の仕上げが得られることを要求され、その要求通りに作業が行われるようになった。このことは、機器工具の機械化ばかりでなく、材料自体の品質向上があるといえる。もはや左官技能訓練は、伝統的技能のみを重視していては、工芸か骨董的意味しか持たなくなる。そこで、技能内容の設定から見直さなければならないが、決して広いとは言えない国土故、技能内容の格差は縮まるだろうし、都市部で行われている状態はいずれ地方へも大なり小なり影響することは必至と考えられる。今回の教科書内容には、上述したことを含み得なかったが、時代的変遷は多の職種ばかりでなく、左官においても同様な傾向が見られたことを知った。

3教材作成上の困難点

 教科書を一冊完成させ、出版することは、周到な計画とともに、長い年月と、多くの関係者のブレインと労力が必要である。少なくとも出版物として公の眼にさらされることを前提としている刊行物のすべてがそうであるように、教科書も例外ではない。教科書類は様々の形式、体裁、目的、内容等があるのはご承知のとおりであるが、こと職業訓練用教科書は、その性格上、既に述べた通り特異である。特異であればあるほど、作成上の困難点も多い。今回は紙面の関係で全てにふれるわけにはいかないため、その中で教科書作成委員と作成内容及び作成期間だけを取り上げ、今後の課題を含めて述べることにする。(次回へ続きます)

教材作成の経験から(8回シリーズその4)

2013年03月03日 00時00分01秒 | 緑陰随想

(3) 教材の活用

 一時、教材の在り方については、事業団旧教材課で時間をかけて論議され、現在では一応落ち着いているが、教科書活用という点で、もう一度整理しておきたい。ここで論点の一つである教科書の性格的な取り扱いと作成側の考え方について述べる。職業訓練用教科書の作成についてはご存じの方もおられると思うが、作成過程については既に報告がある。(佐藤稔・6/1978/技能と技術)。

 筆者は、昭和52年4月より前任者が担当していた専修訓練課程左官科の教科書作成を前任者から継承し、昭和54年度から職業訓練校等で使用できるように、その作成に当たった。現在、労働省の認定委員会の審査を受ける段階までこぎ着けたので、反省の意を含めて、左官科の教科書作成を例に取り、その活用について述べたい。

 職業訓練用教科書は訓練生に対し、主として教室における集合訓練方式で訓練を実施していく場合の、訓練生用テキストとして作成され、実習上等で指導する実技の裏付けとなる知識を、体系的に付与することを重点にして作成されてきた。集合訓練方式に限定せず、個別学習にも利用される面もあるが、自学自習方式や個別学習に対してのメディアとして作成されていないので、必ずしもそのまま移行できるものではない。

 次に教科書に盛られているすべての内容を教えるか、それとも指導員が必要と思われるところのみを抜粋して教えるかと言うことが問題としてあげられる。作成側の意向としては、教科書の内容を策定する段階では、その基準を労働省の教科編成指導要領(以下教編という)において作成している。従って、訓練現場では、教科書に盛られている内容をすべて教えていただくことを念頭に置いている。教編は労働省が作成し、公共及び事業内訓練施設における訓練科ごとの訓練目標及び訓練内容を定めている。

 教科書の使用実態から見ると、教科書から指導員が訓練生の能力に応じて内容を抜粋して教えることもあるし、教科書の内容以上に様々な例を挙げて教える場合もある。つまり、訓練生の修得度や学習能力に対し、指導員の裁量によって使われ方は決まると言える。作成側と指導員との意思疎通の不足から使用方法の統一が欠けている面のあることは否めないが、少なくとも教科書に盛られている内容を基軸として教えるべきものと考えている。とはいえ、教科書に盛られている内容は、教編から出発している点で、あくまでも最大公約数的な面を持っている。

 左官科において、特に左官工事に使われる諸材料や工具の名称は、関東と関西を見ても異なっている。また、北海道の工法と、沖縄県の工法は地理的条件の違いにより、工法の内容に著しい違いがある。このことは当然考慮され、地域の実情に応じて訓練されなければならない。更には、左官工事の内容も地方では職域が広く、タイル張りやブロック組積、屋根工事、壁面の吹きつけ等もできることが要求される。一方、都市部では工事内容がより細分化し、分業や専門的方向に進んでいるため、従来の左官領域は年々狭まる傾向にある。訓練現場においては、このように教科書の内容がすべての訓練施設に共通でない面を認識され、地域の指導内容の調整が行われてしかるべきであろう。(次回へ続きます)