「厭犬伝」 弘也英明
厳密には【八犬伝】ではないですけど、【~犬伝】って字面なので一応。
第19回日本ファンタジーノベル「大賞」・・・・・・ってかな?
というのが正直な感想。
ウケを狙わないライトノベルって感じかな。
設定面白そうな人物達なのに感情移入できない。
人間の骸から人形=「仏」(マリオネット+ゾンビのようなもの)
を造って闘わせる「合」で少年と少女が命がけの対決をするお話。
主人公は美貌の少年で知らない内になんらかの因縁を背負っていて
「仏師」の娘で「合」の天才少女はその因縁絡んだ策略に巻き込まれて
少年と闘うことになる。
幸か不幸か、最もこういった小説にハマリやすい年頃に
「日本ファンタジーノベル大賞」なんてものが始まって。
なまじ、第1回目大賞の【後宮小説】がアニメも小説も
面白かったので、毎年「日本ファンタジーノベル」は
受賞作をチェックしてる。
優秀賞の【イーシャの船】。イラスト山田ミネコさんなので購入。
同時刊行くらいに小野不由美さんの【魔性の子】があったので
数年後に優秀賞で名前を小野さんの名前を見たときは「?」だった。
第2回目の大賞作は無し、優秀賞2つの【楽園】と
【英雄ラファシ伝】。【楽園】はアニメ(【時の満ちる向こうで】)
よりも小説の方が面白かった。後々に【リング】【ループ】【らせん】で
ホラー小説の代表作家の一人になるとは思いもよらなかったけど。
【英雄ラファシ伝】は多分、歌うように文章を繰り出して
音の韻を踏みながら読者はその雰囲気を楽しむようなファンタジー。
【楽園】がパウンドケーキで、【ラファシ伝】は金平糖って感じ。
ファンタジーを楽しみながら書いてる作家さんはやっぱり読んでて面白い。
中には「プロ作家になりたいならこの賞には応募するな」
なんてご自身のHPで書きなぐった大賞作家さんもいたけど。
それは違うんではないかと。
架空の物語を書くには、まず自分がその世界に立って楽しまないと。
第3回の大賞にはならなかったけど恩田陸さんは好き。【遠野物語】は
「透明感を持ったでもどこか希望のない民俗学ファンタジー」だと思ってる。
第4回、優秀賞の北野勇作さんの【かめくん】【ザリガニマン】は持ってる。
つか、「ハイスクール八犬伝」連載時のSFアドベンチャーに、時々短編が
載ってたもの。SF作家の卵の投稿作品で。井上雅彦さんとか
(著作:ヤング・ヴァン・ヘルシングシリーズ【異人館の妖魔】など。
【SLUMDANK】の作者さんではない方)も載っていた枠。
あとは、小野不由美さんとか(【十二国記シリーズ】・・・待ちわびてる)
高野史緒さん(【アイオーン】好き。SF作品の方が多いし面白い)
南條竹則さん(明るいホラーファンタジーというか。マニア的だけど面白い)
池上永一さん(SFっぽいと思ってたら、去年なにやらアニメ化されたらしい)
で、しばらく面白そうなのがなかったので読まない時期が続いて。
第16回。畠中恵さんの【しゃばけ】がじわじわ人気で、再びちょっとだけ
日本ファンタジーノベルが浮上。これ優秀賞だったので大賞も確かいたはず
だけど覚えてない。
【しゃばけ】のドラマで若旦那演じたのがテゴマスの手越。
ええと、この前の24時間TVでゴールしたイモトちゃんを抱きしめたジャニ。
第17回大賞の【金春屋ゴメス】西條奈加さん。
【吉里吉里人】っぽい鎖国日本ファンタジー。漫画化かアニメ化すると
面白いと思う。実写で映画でもいいと思う。つまりそういう楽しさの作品。
暑苦しいけど。
第18回大賞の【僕僕先生】仁木英之さん。
飄々とした中国風仙人ファンタジー。第一回目の【後宮小説】みたいな
世界観。続刊5冊くらい出て欲しい感じのシリーズモノになった。
で、第19回大賞がサブタイの【厭犬伝】弘也英明さん。
一昨年だったかな、松崎祐さんの【イデアル】。「女性数学者のファンタジーもの」
ってどんなものか読んでみたい。それっぽいのなら猫十字社の【小さなお茶会】
シリーズに出てきた”数学の塔”。「世界で一番初めに数学の新発見をするために
生涯を塔にささげる」って設定が好きだし、自分でその人生を選んだのに
もっぷとぷりん奥さんに出会って少しだけ外の世界が恋しくなる女性数学者さん
が忘れられない。【小さなお茶会】もファンタジックな哲学を含んだ漫画だけど
多感な中高時代にもやもやとした何かを残した名作でもあり。
作者名は忘れたけど【バスストップの消息】ってタイトルの作品が優秀賞
だったとき、浦沢義雄の【不思議少女シリーズ】のどっかのエピソードみたいな
お話(ポワトリンだったか、シュシュトリアンだったか)っぽいとかで
特撮方面で結構話題になったのを覚えてる。