私内での山田風太郎作品順位は
1)外道忍法帖
2)忍法八犬伝
3)甲賀忍法帖
こういう、人数多くて総当たり戦な忍法合戦が好き。
15vs15vs15、8vs8、10vs10。
そして男性集団vs女性集団というシチュエーションにも燃える人間なので、
両方の条件を満たして、「八犬伝」とくれば私の「八犬伝本棚」の中でも
最上位にあるわけで。
「あの八犬士活躍の時代から150年。若き城主里見忠義が快楽を
貪った代償に、家宝の”忠孝悌仁義礼智信”八顆の珠が
”淫戯乱盗狂惑悦弄”にすり替わった。これぞ取潰しを狙う
服部半蔵の策謀。存亡の危機に、八犬士の末孫がついに立った!」
(講談社 山田風太郎傑作忍法帖 「忍法八犬伝」より)
最初に読んで思ったことは、「また服部半蔵と竹千代かい!!」
だって、「甲賀忍法帖」も発端はそれだ。竹千代がいて、
半蔵がいらんことを言うから、伊賀甲賀での忍法合戦になったワケで。
平和が続くと城主はボケる。村雨の方という奥方がいながら、若き
里見忠義は老八犬士達の忠言にも耳を貸さず、怪しい女芸人一座と
こともあろうか家宝の珠を使い淫戯にふけり八珠を盗まれる。
そこに、伏姫の珠を渡す約束は忘れてないだろうな、との
御公儀からの書が届き、忠義は取潰しの危機と慌てふためき・・・。
そこで老八犬士は腹かっさばいて、それぞれの息子達に
次の八犬士としての使命を与え絶命する。
その不肖の息子達は甲賀卍谷へ修行に出されていたけれど、
やってられるかとばかりに1年足らずで、忍びの修行もそこそこに
卍谷を脱走。それぞれが勝手気ままに暮らしていたところに
それぞれの犬・八房が文を持ってやってくる。
奪われた家宝である「忠孝悌仁義礼智信」八つの珠を取り戻せ。
摺りかえられた珠の文字は「淫戯乱盗狂惑悦弄」。
が、この文字こそが我にふさわしいと、息子達は知らぬ存ぜぬを
決め込もうとした。愛しい奥方様である村雨の方がやってくるまでは。
家訓も御家もなんのその。新たな八犬士となった八人が動いたのは
彼らの初恋の相手・愛しい村雨の御方様の役に立ちたいただそれだけ。
八人は秘術を駆使し、八人のくノ一と凄絶な戦いを繰り広げる。
共に「凄みのある美貌」と称されるのが
氷の精のような妖気のある美貌の美少年盗賊@毛野
いたずら者でかぶき者の大男@親兵衛。
あどけなく豪傑然としたひげの大男@小文吾
ジゴロフェロモン出まくりの女好き@現八
真面目で荘重な威厳のある四角い顔@大角
芸術家的で神経質で発狂的な彫りの優男風@壮助
(荘助ではなく壮助と表示)
遊女よりもなまめかしい美少女風@信乃
全員醜男じゃなく、むしろイケメン的な8人なワケで。
それなりに自己主張があって奔放で。
顔も良くて血筋も良くて。
自分の思うとおりに生きたくて、割に合わない使命なんて
誰が聞くものかと思っていたのに。
そんな八人が揃いもそろって本気で恋した相手が
主君の奥方様。叶わぬ初恋。初めての純情な感情。
様々な忍法が出てくるけれど、一番判りやすくて残酷なのが
「忍法肉彫り」。大角が信乃の顔を村雨様ソックリに変える為に
施した術。心霊外科手術みたいなもんかな。
忍術というより医術じゃないかと思うんだけど。
ちなみに親兵衛が使う「忍法地屏風」を伝授したのは
卍谷のお蛍。「甲賀~」の蛍火となにかしらの関係があるのかと
思えば、「交合の恍惚の息が青酸ガスになる体質」で陽炎の
系列の忍法で、その術でも親兵衛が死ななかったので
「地屏風」を教えたらしい。
つーか、竹千代ってことは、「甲賀~」の後ってことなので
陽炎の親類か?
とにかく、「忍法八犬伝」。
「忍法帖シリーズ」の中では派手な方。
「甲賀忍法帖」が「バジリスク」みたいな漫画になったように
「忍法八犬伝」も同作者で漫画化になって欲しいなと。
「ドリアード」とか「キプロクス」とかそんな感じのカタカナタイトルで。
(タイトルセンス無し)