ガトゥ・ハロゥ

八犬伝と特撮と山田風太郎をこよなく愛する花夜のブログ。

【伏】を観終わっての即興書き<2>

2012年10月30日 21時33分44秒 | 【伏 ~贋作里見八犬伝】
劇場版感想続き。

半分が過ぎたらあとは一気。
画面暗転が多かったように感じたけど。

劇中劇としての歌舞伎演目は「贋作・里見八犬伝」。
歌舞伎俳優として信乃が演じる伏姫が綺麗。
おそらくはこの映画の中で一番の美人さんじゃなかろうか。

【伏】原作では、演目は「怪盗玉梓」という「八犬伝」の“因”
ともなる伏姫が生まれる前の序章の物語。作者は冥土。
信乃は里見義実に「犬となさん!」と呪いを吐き村雨丸で討たれる役。

この劇中劇中とはいえ、信乃が伏姫となり義実と対峙し呪いを受ける。

舞台後、信乃が“伏”として、人を殺めるのを見てしまう浜路。
放心状態の浜路がたどり着いたのは冥土の屋敷。
凍鶴太夫からの預かりとなっていた手紙を冥土に読んでもらい浜路の心は決まる。

大事の前の城内での祭り。
最後の伏を捕らえる為の罠。

もしもそうだとしてもなんで最後まで演じていかないんだよ!
芝居仲間から慕われていたらしい信乃。

馬加、最後でイイ人になっても付け足しっぽい。
小悪人なら小悪人らしく最後の最後までもがいて欲しい。

村雨丸は【伏】原作イラストの象徴・髑髏犬の骨格のような刀。

城の最上階に向かう乃の通った後は殺戮の嵐。
浜路は信乃に貰った着物を着、鉄砲を抱えて城へ。



信乃、好きよ

これも“浜路くどき”の一種かな。
このシーン好きかも。クライマックスパターン的かもしれないけど
いろいろな【八犬伝】の浜路も突き詰めていけばこの一言だけが
言いたかっただけだと思うのに。

言わなかったから、【八犬伝】本編を始めとするいろんな世界の
浜路は不幸街道まっしぐら。信乃は人の話しを聞かないタイプっぽいから
叫ぶ方が今の時代は正しいのかも。信乃好きよ大好きよ、て。

道節と船虫がくっついて、これも【伏】原作の流れ少し湾曲。
信乃が去り、着物姿で髪をおろした浜路がちゃんと少女に見える。

ラストはあえて書かないけど因の流れのまま。囚。

ワンシーンだけだけど、道節と大角の豪快男コンビも良かった。
浜路もだけど、この映画は【八犬伝】原作でウジウジ根暗人間キャラ
救済物語な感じもするかも。

まだ観ていない方もいると思うので、半分以上は割愛。
あと、劇団ひとりが声優として出ていたけど。
文春エッセイにでもその内【伏】のこと書くのかな。





【伏】を観終わっての即興書き

2012年10月28日 19時24分03秒 | 【伏 ~贋作里見八犬伝】
【伏 ~鉄砲娘の捕物帳~】を観終わって、ドトールに飛び込んで書いてます。
いろいろ感じたことをとりあえず思うがままに書きなぐりで。


開始から1/3は辛抱して観るべし。
面白くなって目が離せなくなるのは1/3を過ぎてから。

プロローグ的出だしのお話が結構端折られて、内容も変わっていて
“八匹の伏が江戸にやってきた”
だけど、既に六匹は殺されて晒し首。残りはあと二匹。
毛野、荘助、現八、小文吾、親兵衛、雛衣、が首晒し。

やっぱり浜路の鉄砲がヘン。
それ振り回す信乃が巨大カタツムリ抱えてるみたい。

道節がおじさん。憎めないけど頼るにはイマイチ不安なタイプのおじさん。
【魔神英雄伝ワタル】のシバラク先生タイプ?
自信あるんだかないんだか、大丈夫かなこのお人好し。

廓の描写がちょっと......
幻想的にするならもうちょっとオブラートに包めないものか。
包めないならもう少し品のいい見せ方はできなかったのか。
股おっぴろげて転ぶばかりがエロではないよ。

古風なエロで派手やかな襦袢、もしくは素っ裸で逃げてた方が。
団鬼六先生曰く...じゃないけど、中途半端に隠すとエロでなくて
猥褻になってしまう。
チラリズムも一般向けだと難しいけど、別に無理して
脱がせなくてもいいのに。“伏”の片鱗を魅せる為に太夫の服を
脱ぎ捨てて、ならここは力を入れて描写して欲しかった。
この凍鶴太夫との場面は、浜路の最初の見せ場シーンなのに。

凍鶴太夫、自分内イメージの網乾の女装かと思った。
私だけだそんなこと思うのは。ここでもしあらすじが変わっていて
網乾左母二郎の女体化が凍鶴なら、原作【八犬伝】の犬士遭遇その③の
道節登場編。左母VS浜路、その後左母VS道節、のバッドエンドが
浜路ルート突破で、浜路がこの時生き延びていたらバージョン?

凍鶴太夫の前髪ひさしが凄い。
【エルガイム】のキャオとか、【FFS】のシャーリーとか思い出した。
なんか巨大ロボに乗って高笑いしていそうな悪役っぽい。

“桜”と“かざぐるま”って、【八犬伝】をアニメ化する時のイメージなのかな。
【The 八犬伝】は信乃のポスターや衣装、毛野の衣装が“かざぐるま”
イメージになってるっぽいのでそっちの印象強いのだけど。

凍鶴太夫をもう少し美女風にして欲しかった。
信乃が歌舞伎俳優の黒白として女装した“伏姫”が綺麗だったからなおさら。

浜路に撃たれた凍鶴太夫、彼女が道節に討たれた後の浜路の鼻血
=初潮イメージなのかな。最後にお歯黒塗って太夫から普通の女になり
死んだ凍鶴と、段階を同時に踏ませる感じ。
浜路は少女から女への最初の一歩。

あいこ。
信乃に着物一式と簪を買ってもらう浜路。
“伏”じゃない信乃の姿の時は、浜路にも“猟師”じゃない姿のものを。
そういう願望かな。簪は特に大きなキーワードにはならず。

冥土は馬琴先生の孫でした。
真面目な同人少女の感情? ヘンな書き方だけど。
文章を書きたいのだけど、何をどう表現していけばいいのか判らない。
おじいちゃんは世間では有名な読本の作者。
盲目になっても、【八犬伝】を書き続ける人。
自分の母親に口述筆記させてまでのその執念が、冥土にとっては
疎ましく嫌悪をいだいているけれど、羨ましくもある。
越えられない葛藤がもやもや。

結果。
“冥土新聞”として、“伏”の記事を書き、日銭稼ぎのように三面記事
ならぬ三文記事として発行。
この世界では【八犬伝】がいろいろ“入れこ”状態になっているけれど
冥土もそれに関わりがあり、疎ましいけどどこかに関わっていないと
不安。そんな自分に自信が持てなくてどうしよう状態。

そんな時に同じように自信のぐらついた浜路と出会う。


スマホ入力でくたびれました。残りはチラシ裏の殴り書きにして明日。

パンフも買いましたが、読んだらどんどん昇華されていきそうので未読。
感想書き終えたら読むつもりです。

さて、帰らねば。

【伏 知られざる物語】

2012年10月19日 00時31分11秒 | 【伏 ~贋作里見八犬伝】

(別冊文藝春秋2012年11月号より)

今回の外伝は「知られざる物語」。
浜路達よりも過去の里見の伏姫様のお話ですが、伏本編と少し展開が
異なっているので、パラレルワールドな感じ。

伏本編の伏姫と八房は、鈍色が突然拾ってきた八房を姫が取り上げる
という展開だったのに対して、こちらはちゃんと狸に育てられた子犬を
姫が拾い、“花びらが八つある牡丹のよう”だというので“八房”と名付けられる。
義実も伏姫に育ててみよ、と命じる。

伏本編では、白い子犬を鈍色が拾い“白色”と名付け、義実は鈍色に「育ててみよ」
と命じている。姫が取り上げた後、腰の辺りに牡丹のような模様を見つけ
“八房”と名付ける。
姫パターンと鈍色パターンで場面は同じでも意味合いが異なっている感じ。

伏姫や八房のキャラや展開が【八犬伝】本編寄りです。
森や城など背景は大いに異なっているけれど、姫や八房、大輔は
基本パターンで行動しているようです。

八房の心情モノローグが面白かったかも。
キリスト教は悩める青年、仏教は円熟した老人...だったかな、
どこかでそんな文章を読んだけど、ここでの八房は老いた長老犬で
特に姫の為にというわけではなくて、世話になった里見家の為に
敵の首を取ってきたら、よく判らないままに伏姫と城を出ることに
なっていてさてどうしたものかと困惑しているところに、
妙なおかしさがあったりして。




【伏】が明日から公開です。
見に行こうと思ったら、上映している場所が近隣に無く越境してくる予定です。

口の悪い戯作者の先生 ~【みをつくし料理帖】~

2012年10月18日 00時36分41秒 | 八犬伝いろいろ
物語の中に登場する料理のまとめ本を読むのが好きです。

または、料理描写が美味しそうな小説とか。
そして、その小説の文章を読みながら想像しながら、
作れそうなものを実際に作ってみたりとか。

今度、映画になる【大草原の小さな家】のローラ・インガルスの
シリーズに出てくるアメリカ開拓時代の料理とか、雪をフライパンに
敷きつめて熱いメープルシロップを垂らしてクリスマス用キャンディとか
(シロップは無かったのでベッコウアメで代用)、ブタ丸ごと解体して
余すところ無く料理するシーンとか(しっぽのあぶり焼きで真似したく
なった人も多いハズ)。

【アイスクリン強し】(畠中恵 著)はお菓子だけれど、最初のエピソードの
「チヨコレイト甘し」であり合わせでパーティ料理フルコースを作るシーン
が凄く美味しそうで。明治期にはまだシーチキンもマヨネーズも無くて
主人公ミナ(皆川真次郎)がいろいろと奮闘するのですが、「なるほど...!」
と今の時代にもちゃんと使えそうな手法なのが嬉しい。

で、今読んでいる真っ最中なのが江戸期を舞台とした時代劇小説
【みをつくし料理帖】(高田都 著)シリーズ。女性が男性と
同じような職人として生きるにはまだまだ難しい時代。
“料理人”として「つる家」で働く少女・澪を中心とした人情時代劇。
作者が女性ということもあって文章の雰囲気や登場人物、出てくる料理が
ほんわりと優しい。“とろとろ茶碗蒸し”、“酒粕汁”、“ふきご飯”.......
ちょっと作ってみようかな、と思わせる“美味しそう感”が半端ない(笑)

そしてまたもう一つ気になったのが、2冊目から登場する、口の悪い戯作家。
清右衛門さん。口が悪いというより毒舌家な感じで最初は、筒井康隆さんイメージで
読んでいたんですが、

(あ、これ馬琴先生?)

と感じさせるような描写があり、すっかりこのシリーズでは
筒井康隆=馬琴先生なイメージに。
まだ2冊なので続きを読むのが楽しみなのです。


いよいよ明後日が公開日。【伏】
別冊文藝春秋の【伏外伝】についてはまた明日。