TBSの「報道特集」(土17:30~18:50放送)は総力あげての取材というだけあり、
先週(1月31日)に続き、2月7日の「徹底取材『イスラム国』人質事件」は
見応えのあるものだった。
今回の人質事件で、政府を批判するものはテロリストを利することになると言う人が
居るようだ。
いつからこんな自由に意見が言えない、窮屈な国になったのだろう。
昨今の日本を覆う重苦しい空気には、政府と違う意見をこうして書いていても、
顔の見えない何かに喉元を締めつけられるような感覚がある。
だが、ここで踏み留まらないと大変な時代になってしまう。
こういう時だからこそ、マスコミには真実を隠さず報道して欲しい。
金平茂紀キャスターと日下部正樹キャスターからは、誠実な人柄が伺える。
どこの現場にも入り、臨場感がびしびし伝わってくる。
自分の言葉で語る。決して視聴者に媚びない。この二人は嘘をつかないと信じることが出来る。
その姿勢は、筑紫哲也さんをほうふつさせる。筑紫さんは視聴者に媚びない数字、
視聴率7~10%を目指していたが、この姿勢を貫いて欲しいと思います。
(筑紫さんとの繋がりを知らないで書いたのだが、金平さんは「筑紫哲也 NEWS23」の
番組編集長(デスク)を8年間務めたそうだ)
「いまの世を筑紫哲也はなに思ふ冷気を裂きてヒヨドリのこゑ」
(たまたま「塔」2月号に掲載)
番組の概要は
ヨルダン弁護士ムーサ・アブドラ(リシャウイ死刑囚と一緒に処刑された死刑囚の弁護士で、
「イスラム国」とは交渉ラインを持っている)は、おととし9月にスペイン大使館から、
シリアで人質となったスペイン人ジャーナリスト2人の解放交渉を依頼されたという。
アブドラの言葉
「私はなんとしても命を助けたかったのです。そこで人質の経歴を調べると彼らが
ジャーナリストで、しかも人道支援に熱心だったことが分かりました。
だから私はその点を積極的にアピールしたのです。
(そして拘束から半年がたった2014年3月、スペイン人ジャーナリスト人2人は
無事に解放された)
今回の人質事件でも協力する意志を示したが、日本側からは何の連絡もなかったことは、
とても残念に思います」
金平キャスター(以下、金とする):
「人質の解放と引き換えに、スペイン政府がお金を払ったということは本当ですか?」
アブドラ:「私は何も知りません」
金平キャスターが、イスラム過激派研究の第一人者のヨルダンのハサン・アブハニヤ
(Aとする)にインタビューする
A:「事件でわかったのは、日本が中東について何も知らないことだ」
(彼は、日本政府は3つの重大な過ちを犯したと指摘する)
A:「最も大きな間違いは、日本がすぐに人質解放に向けて動き出さなかったことです。
二つ目の過ちは、安倍首相による中東諸国の訪問だ。
もうひとつの”過ち”とは、『イスラム国』対策として日本が2億ドルの
人道支援を表明したこと。
日本と中東諸国とは、長く友好関係が続いてきた。今後もこの友好関係を
維持すべきだ。テロ対策などを掲げて中東を訪問することは、
控えた方が賢明だと思います」
(最後に挙げた過ちは、日本が対策本部をヨルダンに設置したことだという)
金:「日本の専門家にもトルコに交渉を依頼するべきだったという意見もあります」
A:「その方が確実だったでしょう。
トルコは人質の解放に成功した実績もありますから」
日本は現地対策本部をヨルダンに設置し、実質的な交渉を委ねた。しかしヨルダンは
アメリカなどと共に「イスラム国」への空爆に参加していて、日本も更なる敵意を
買う恐れがあった。ならばむしろ、同じくシリアと国境を接しながらも
「イスラム国」への空爆には参加せず、しかも去年9月には「イスラム国」
から49人の人質を解放させた実績があるトルコに、協力を仰ぐべきだったというのだ。
A:「(後藤さんとリシャウイ死刑囚との)取引は成功しかけていたと思います。
身柄の交換に向けて、すでにリシャウイ死刑囚をトルコの国境付近に
移送させたという情報までありました」
アルグッズ・アルアビア紙(1月28日)によると、ヨルダン当局が死刑囚の釈放を
決断したと報じた。
しかし交渉は大きな転換点を迎える。
A:「1月28日の水曜の夜に、ヨルダン側が突如(『イスラム国』側に)パイロットの
生存確認を求めた。
そこで交渉の流れが変わりました」
金:「水曜(1月28日)の夜が転換点だったと。では誰がその判断を下したのか?」
A:「間違いなくアメリカからヨルダンに対して圧力がかかったのだと思います。
アメリカは『イスラム国』を正当な交渉相手として認めたくなかったのでは
ないでしょうか」
最悪の結末を迎えるまで、水面下で日本政府は何をしてきたのか。
国会で野党が、日本政府は中田さんに協力を要請したのか質問した。
(中田考・同志社大学客員教授は、「イスラム国」とのパイプを持つイスラム法学者)
安倍首相:「中田さんに限らずこういう時は当然、いろいろな申し出がありますよ。
ですが、簡単に申し出を受け入れれば、これまでの交渉のルートを
捨てることになるのですよ」
安倍首相は早口に自分たちの正当性を主張し、都合の悪い質問にはきちんと向き合わない、
投げやりな印象を、私は受けた。
日本人救出のためには、あらゆる交渉ルートを探る必要があったのではないかと、
私は思います。
日下部キャスター(日とする)と中田氏とのインタビュー
中田氏は「イスラム国」司令官であるシリア人のウマル・グラバーと、
スマートフォンのトークアプリを使ってやり取りをする。
1月20日の湯川さん・後藤さんビデオが公開された以降のやり取りを明らかにした。
ウマル:「もう時間はあまり残されていません。
先生、『イスラム国』は約束したことは実行するでしょう。
身代金の支払い期限はもうすぐです。
我々に重要なのは『イスラム国』の条件を満たすことです。
もし捕虜が日本政府にとって大切なら急ぐことです」
中田:「私個人としては日本政府に時間的猶予を与え、2人を解放してほしいです」
ウマル:「先生、事態を理解してください。身代金支払い期限はもうすぐです。
お金を払う気があるのかどうか聞かれています」
(向こうから緊張が伝わってくる。要求に対して(日本政府が)答えていないと
苛立っている印象だったという)
実在するシリア臨時代理大使(ヨルダン日本大使の参事官を兼務)からウマル氏に送られた
音声メッセージの翻訳を、中田氏は頼まれていた。
中田:「ウマル氏から重要な依頼がある。日本語の音声メッセージを翻訳してくれと
頼まれました。
本当に日本政府のものか確認したいと、ウマル氏が伝えてきました。
交渉のチャンネルの中から送られてきたようです」
その内容は
「私・・・は日本政府の代表である。
日本政府は日本人2名の無事な生還について真剣である
当該2名のフルネームと生年月日はそれぞれ
湯川遥菜 1972年・・・・
後藤健二 1967年・・・・である。
中田氏は朝の4時に外務省の邦人テロ対策室に連絡して、音声が本物であるか問い合わせた。
その結果、「本物だと思ってもらっていい」との回答を得た。
外務省幹部は、日本語の音声メッセージを「イスラム国」に送ったことを認めた。
中田:「真剣だと言っても日本政府の代表といわれる人間がそのレベルというのは、
首相でなくても外務大臣・副大臣の、名前を確認できる人でなければ、
真剣だと言っても先方にはあまり伝わらないように思います」
中田氏は、ウマル氏からの連絡を全て外務省に伝えたが、外務省からの連絡は一度もなかった
という。また、民間の人物から、日本政府のメッセージを「イスラム国」に送れないかという
相談も受けたという。
中田:「難民に2億ドル支払うという発表はあくまでも人道支援であるという
メッセージだけで、
あなた方は誤解しているというメッセージだった。
間接的に、しかも『案』という形で送ってきました」
日:「中田さんのパイプを通して、ウマル氏に送ってくれということだったのですね」
中田:「送ると、人質を解放してもらうという意志がない、人質を殺してくれという
メッセージととられてしまうので、先方には伝えなかった。
時間がないのでこれを伝えてしまうと、
お金を払うのか、要求額を払うのかということを聞いているので、
「ノー」というメッセージをはっきり出したと受け取られかねないので、
私は先方には伝えませんでした」
2015年1月24日、湯川さんの殺害映像が公開されました。
ウマル:「我々としては出来る限りのことをやったんだけれど、上の命令なので
私にはこれ以上のことが出来なかった。非常に残念である」
その後、ウマル氏とは突然連絡できない状態になったという。
※湯川さんが拘束されていた2014年9月に中田氏は、湯川さんの裁判の通訳を
ウマル氏から頼まれ、「イスラム国」支配下の地域に入った。
だが空爆が始まったため、湯川さんとは会えずに帰国する。
その後、北大生が「イスラム国」に渡航しようとした時の関係先として
家宅捜査を受けたため、
中田氏はウマル氏への連絡を控えていたという。
そして1月20日に2人の動画公開を受け、中田氏はウマル氏への連絡を再開した。
(日下部キャスターが岸田外相に質問する)
日:「中田氏が『イスラム国』に接触した情報を把握していますか」
岸田外相:「具体的な中身は控えさせて頂きます」
日:「なぜですか」
岸田外相:「取り組みの内容を予断させることになると考えます」
なぜ、中田氏のルートを使えなかったのか?
政府は2014年8月に湯川さんが、11月に後藤さんが行方不明であることを知っていた。
国会で岸田外相は、2014年8月にヨルダンに現地対策本部を設置したが、
「イスラム国」から殺害予告のあった1月20日まで、現地対策本部を強化することは
しなかったと答弁した。
更に政府は、犯行グループの特定にも時間を要したことを明らかにした。
最悪の結末を迎えるまでに、水面下で日本政府はいったいどんな交渉をしてきたのか。
政府は各国との連携などを理由に、その詳細などを明らかにしていない。(ここまで引用)
特定秘密保護法を用いて秘密裡にするのではなく、お二人の命をどうしたら
救うことができたのか、あるいはできなかったのか。
今後このような事態になった時には、どこに対策本部を設けて、どういうルートを
探っていったらよいのかなど様々なことを、事実を明らかにした上で検証して欲しいです。
「日本は2度とこのような事の無いよう各国と連携してですね、「イスラム国」と
闘って参ります。
国民のみなさんが安心して暮らせるよう、政府は一丸となって頑張って参ります」
というような言葉よりも、今回のことはなぜ起きてしまったのか。
今後、どうしたら防ぐことができるのか。
起きてしまった時にはどう対処していったらよいのか。
集団的自衛権の行使が、今後の私たちの生活をどう変えてしまうのか。
こういったことを国会で徹底的に議論して、マスコミは包み隠さず報道して欲しいです。
でないと、次々と同じような事件が起きることになりかねません。
フリージャーナリスト達は、2004年のイラク戦争まで中東は怖くなかったと言っています。
それまでは好意的だったと。
2004年(自衛隊イラク派遣)以降、日本はテロ組織からはアメリカと同列に
扱われているのだ。
危機感が上がっていたのに、このことへの配慮が足りなかったと。(番組より引用)
(今回のことで、危険レベルがより上がることになった)
ある政府高官の言葉
「このタイミングで間違いなく今回の中東歴訪は、『イスラム国』対策という面がある。
今回のフランスのテロ事件が起きて、タイミングとしてはぴったりだ。
2人の日本人が拘束されていることを知っていた上での発言で、
なんと危機感の欠如していたのか」(番組より引用)
これまでの経過
2014年 8月中旬 湯川遥菜氏 シリアで行方不明に
10月6日 私戦予備陰謀容疑で中田氏宅捜索
11月1日 後藤健二氏 行方不明に 政府は把握
12月2日 後藤氏拘束とのメール 外務省に通報
同日 衆院議員選挙公示日 (選挙の影響は無かったのか?)
3日 後藤氏拘束の事実を政府は知る
2015年 1月上旬 後藤氏の妻に身代金2億円要求のメール
1月7日 フランス諷刺新聞社襲撃事件
16日 安倍首相中東歴訪へ出発
17日 首相2億ドルの人道支援表明
20日 日本人殺害予告映像公開
22日 中田氏特派員協会で会見
24日 湯川氏殺害映像を公開
27日 後藤氏画像公開 24時間の期限通告
2月1日 後藤氏殺害映像を公開
4日 ヨルダンパイロット殺害映像公開
同日 リシャウイ死刑囚らを処刑
※私のブログのブックマークに「 ★(1)報道特集 イスラム国 人質事件(2015年1月24日)」
が入っています。ここをクリックして画面が出たら、更に下の方に「関連記事」という項目が
あります。ここの年月日をクリックすると、過去に報道された「報道特集」を
観ることができます。
●ブックマークに入れました「報道特集 イスラム国 人質事件(2015年1月24日)」は
削除されていました。
(2015年4月24日 記)
★テレビ朝日の「報道ステーション」をずっと楽しみにしていました。
特に恵村順一郎氏(朝日新聞論説委員)のコメントは、穏やかな口調の中に
きっぱりと正論を吐き、
毎回、頷きながら観ていました。
時々出演されるコメンテーターの古賀茂明氏も、政権が一番聞きにくいことをずばり仰り、
応援していました。
今回、官邸からの圧力で、恵村順一郎氏と古賀茂明氏、そしてお名前は分りませんが
女性チーフ・プロデューサーの三人が更迭させられるそうです。
こういうことがまかり通っていいのでしょうか?
こういう事を黙殺していたら、次は「報道特集」ということになります。
更には、このブログのようなささやかな個人のものまで、圧力を受けることに
なりかねません。
私は強い怒りを覚えます。
ブックマークに「★報道ステーションに圧力 3人降板させられる」に入れましたので、
是非、ご覧ください。
(2015年2月25日のブログ「報道人の気魄2」へつづく)
先週(1月31日)に続き、2月7日の「徹底取材『イスラム国』人質事件」は
見応えのあるものだった。
今回の人質事件で、政府を批判するものはテロリストを利することになると言う人が
居るようだ。
いつからこんな自由に意見が言えない、窮屈な国になったのだろう。
昨今の日本を覆う重苦しい空気には、政府と違う意見をこうして書いていても、
顔の見えない何かに喉元を締めつけられるような感覚がある。
だが、ここで踏み留まらないと大変な時代になってしまう。
こういう時だからこそ、マスコミには真実を隠さず報道して欲しい。
金平茂紀キャスターと日下部正樹キャスターからは、誠実な人柄が伺える。
どこの現場にも入り、臨場感がびしびし伝わってくる。
自分の言葉で語る。決して視聴者に媚びない。この二人は嘘をつかないと信じることが出来る。
その姿勢は、筑紫哲也さんをほうふつさせる。筑紫さんは視聴者に媚びない数字、
視聴率7~10%を目指していたが、この姿勢を貫いて欲しいと思います。
(筑紫さんとの繋がりを知らないで書いたのだが、金平さんは「筑紫哲也 NEWS23」の
番組編集長(デスク)を8年間務めたそうだ)
「いまの世を筑紫哲也はなに思ふ冷気を裂きてヒヨドリのこゑ」
(たまたま「塔」2月号に掲載)
番組の概要は
ヨルダン弁護士ムーサ・アブドラ(リシャウイ死刑囚と一緒に処刑された死刑囚の弁護士で、
「イスラム国」とは交渉ラインを持っている)は、おととし9月にスペイン大使館から、
シリアで人質となったスペイン人ジャーナリスト2人の解放交渉を依頼されたという。
アブドラの言葉
「私はなんとしても命を助けたかったのです。そこで人質の経歴を調べると彼らが
ジャーナリストで、しかも人道支援に熱心だったことが分かりました。
だから私はその点を積極的にアピールしたのです。
(そして拘束から半年がたった2014年3月、スペイン人ジャーナリスト人2人は
無事に解放された)
今回の人質事件でも協力する意志を示したが、日本側からは何の連絡もなかったことは、
とても残念に思います」
金平キャスター(以下、金とする):
「人質の解放と引き換えに、スペイン政府がお金を払ったということは本当ですか?」
アブドラ:「私は何も知りません」
金平キャスターが、イスラム過激派研究の第一人者のヨルダンのハサン・アブハニヤ
(Aとする)にインタビューする
A:「事件でわかったのは、日本が中東について何も知らないことだ」
(彼は、日本政府は3つの重大な過ちを犯したと指摘する)
A:「最も大きな間違いは、日本がすぐに人質解放に向けて動き出さなかったことです。
二つ目の過ちは、安倍首相による中東諸国の訪問だ。
もうひとつの”過ち”とは、『イスラム国』対策として日本が2億ドルの
人道支援を表明したこと。
日本と中東諸国とは、長く友好関係が続いてきた。今後もこの友好関係を
維持すべきだ。テロ対策などを掲げて中東を訪問することは、
控えた方が賢明だと思います」
(最後に挙げた過ちは、日本が対策本部をヨルダンに設置したことだという)
金:「日本の専門家にもトルコに交渉を依頼するべきだったという意見もあります」
A:「その方が確実だったでしょう。
トルコは人質の解放に成功した実績もありますから」
日本は現地対策本部をヨルダンに設置し、実質的な交渉を委ねた。しかしヨルダンは
アメリカなどと共に「イスラム国」への空爆に参加していて、日本も更なる敵意を
買う恐れがあった。ならばむしろ、同じくシリアと国境を接しながらも
「イスラム国」への空爆には参加せず、しかも去年9月には「イスラム国」
から49人の人質を解放させた実績があるトルコに、協力を仰ぐべきだったというのだ。
A:「(後藤さんとリシャウイ死刑囚との)取引は成功しかけていたと思います。
身柄の交換に向けて、すでにリシャウイ死刑囚をトルコの国境付近に
移送させたという情報までありました」
アルグッズ・アルアビア紙(1月28日)によると、ヨルダン当局が死刑囚の釈放を
決断したと報じた。
しかし交渉は大きな転換点を迎える。
A:「1月28日の水曜の夜に、ヨルダン側が突如(『イスラム国』側に)パイロットの
生存確認を求めた。
そこで交渉の流れが変わりました」
金:「水曜(1月28日)の夜が転換点だったと。では誰がその判断を下したのか?」
A:「間違いなくアメリカからヨルダンに対して圧力がかかったのだと思います。
アメリカは『イスラム国』を正当な交渉相手として認めたくなかったのでは
ないでしょうか」
最悪の結末を迎えるまで、水面下で日本政府は何をしてきたのか。
国会で野党が、日本政府は中田さんに協力を要請したのか質問した。
(中田考・同志社大学客員教授は、「イスラム国」とのパイプを持つイスラム法学者)
安倍首相:「中田さんに限らずこういう時は当然、いろいろな申し出がありますよ。
ですが、簡単に申し出を受け入れれば、これまでの交渉のルートを
捨てることになるのですよ」
安倍首相は早口に自分たちの正当性を主張し、都合の悪い質問にはきちんと向き合わない、
投げやりな印象を、私は受けた。
日本人救出のためには、あらゆる交渉ルートを探る必要があったのではないかと、
私は思います。
日下部キャスター(日とする)と中田氏とのインタビュー
中田氏は「イスラム国」司令官であるシリア人のウマル・グラバーと、
スマートフォンのトークアプリを使ってやり取りをする。
1月20日の湯川さん・後藤さんビデオが公開された以降のやり取りを明らかにした。
ウマル:「もう時間はあまり残されていません。
先生、『イスラム国』は約束したことは実行するでしょう。
身代金の支払い期限はもうすぐです。
我々に重要なのは『イスラム国』の条件を満たすことです。
もし捕虜が日本政府にとって大切なら急ぐことです」
中田:「私個人としては日本政府に時間的猶予を与え、2人を解放してほしいです」
ウマル:「先生、事態を理解してください。身代金支払い期限はもうすぐです。
お金を払う気があるのかどうか聞かれています」
(向こうから緊張が伝わってくる。要求に対して(日本政府が)答えていないと
苛立っている印象だったという)
実在するシリア臨時代理大使(ヨルダン日本大使の参事官を兼務)からウマル氏に送られた
音声メッセージの翻訳を、中田氏は頼まれていた。
中田:「ウマル氏から重要な依頼がある。日本語の音声メッセージを翻訳してくれと
頼まれました。
本当に日本政府のものか確認したいと、ウマル氏が伝えてきました。
交渉のチャンネルの中から送られてきたようです」
その内容は
「私・・・は日本政府の代表である。
日本政府は日本人2名の無事な生還について真剣である
当該2名のフルネームと生年月日はそれぞれ
湯川遥菜 1972年・・・・
後藤健二 1967年・・・・である。
中田氏は朝の4時に外務省の邦人テロ対策室に連絡して、音声が本物であるか問い合わせた。
その結果、「本物だと思ってもらっていい」との回答を得た。
外務省幹部は、日本語の音声メッセージを「イスラム国」に送ったことを認めた。
中田:「真剣だと言っても日本政府の代表といわれる人間がそのレベルというのは、
首相でなくても外務大臣・副大臣の、名前を確認できる人でなければ、
真剣だと言っても先方にはあまり伝わらないように思います」
中田氏は、ウマル氏からの連絡を全て外務省に伝えたが、外務省からの連絡は一度もなかった
という。また、民間の人物から、日本政府のメッセージを「イスラム国」に送れないかという
相談も受けたという。
中田:「難民に2億ドル支払うという発表はあくまでも人道支援であるという
メッセージだけで、
あなた方は誤解しているというメッセージだった。
間接的に、しかも『案』という形で送ってきました」
日:「中田さんのパイプを通して、ウマル氏に送ってくれということだったのですね」
中田:「送ると、人質を解放してもらうという意志がない、人質を殺してくれという
メッセージととられてしまうので、先方には伝えなかった。
時間がないのでこれを伝えてしまうと、
お金を払うのか、要求額を払うのかということを聞いているので、
「ノー」というメッセージをはっきり出したと受け取られかねないので、
私は先方には伝えませんでした」
2015年1月24日、湯川さんの殺害映像が公開されました。
ウマル:「我々としては出来る限りのことをやったんだけれど、上の命令なので
私にはこれ以上のことが出来なかった。非常に残念である」
その後、ウマル氏とは突然連絡できない状態になったという。
※湯川さんが拘束されていた2014年9月に中田氏は、湯川さんの裁判の通訳を
ウマル氏から頼まれ、「イスラム国」支配下の地域に入った。
だが空爆が始まったため、湯川さんとは会えずに帰国する。
その後、北大生が「イスラム国」に渡航しようとした時の関係先として
家宅捜査を受けたため、
中田氏はウマル氏への連絡を控えていたという。
そして1月20日に2人の動画公開を受け、中田氏はウマル氏への連絡を再開した。
(日下部キャスターが岸田外相に質問する)
日:「中田氏が『イスラム国』に接触した情報を把握していますか」
岸田外相:「具体的な中身は控えさせて頂きます」
日:「なぜですか」
岸田外相:「取り組みの内容を予断させることになると考えます」
なぜ、中田氏のルートを使えなかったのか?
政府は2014年8月に湯川さんが、11月に後藤さんが行方不明であることを知っていた。
国会で岸田外相は、2014年8月にヨルダンに現地対策本部を設置したが、
「イスラム国」から殺害予告のあった1月20日まで、現地対策本部を強化することは
しなかったと答弁した。
更に政府は、犯行グループの特定にも時間を要したことを明らかにした。
最悪の結末を迎えるまでに、水面下で日本政府はいったいどんな交渉をしてきたのか。
政府は各国との連携などを理由に、その詳細などを明らかにしていない。(ここまで引用)
特定秘密保護法を用いて秘密裡にするのではなく、お二人の命をどうしたら
救うことができたのか、あるいはできなかったのか。
今後このような事態になった時には、どこに対策本部を設けて、どういうルートを
探っていったらよいのかなど様々なことを、事実を明らかにした上で検証して欲しいです。
「日本は2度とこのような事の無いよう各国と連携してですね、「イスラム国」と
闘って参ります。
国民のみなさんが安心して暮らせるよう、政府は一丸となって頑張って参ります」
というような言葉よりも、今回のことはなぜ起きてしまったのか。
今後、どうしたら防ぐことができるのか。
起きてしまった時にはどう対処していったらよいのか。
集団的自衛権の行使が、今後の私たちの生活をどう変えてしまうのか。
こういったことを国会で徹底的に議論して、マスコミは包み隠さず報道して欲しいです。
でないと、次々と同じような事件が起きることになりかねません。
フリージャーナリスト達は、2004年のイラク戦争まで中東は怖くなかったと言っています。
それまでは好意的だったと。
2004年(自衛隊イラク派遣)以降、日本はテロ組織からはアメリカと同列に
扱われているのだ。
危機感が上がっていたのに、このことへの配慮が足りなかったと。(番組より引用)
(今回のことで、危険レベルがより上がることになった)
ある政府高官の言葉
「このタイミングで間違いなく今回の中東歴訪は、『イスラム国』対策という面がある。
今回のフランスのテロ事件が起きて、タイミングとしてはぴったりだ。
2人の日本人が拘束されていることを知っていた上での発言で、
なんと危機感の欠如していたのか」(番組より引用)
これまでの経過
2014年 8月中旬 湯川遥菜氏 シリアで行方不明に
10月6日 私戦予備陰謀容疑で中田氏宅捜索
11月1日 後藤健二氏 行方不明に 政府は把握
12月2日 後藤氏拘束とのメール 外務省に通報
同日 衆院議員選挙公示日 (選挙の影響は無かったのか?)
3日 後藤氏拘束の事実を政府は知る
2015年 1月上旬 後藤氏の妻に身代金2億円要求のメール
1月7日 フランス諷刺新聞社襲撃事件
16日 安倍首相中東歴訪へ出発
17日 首相2億ドルの人道支援表明
20日 日本人殺害予告映像公開
22日 中田氏特派員協会で会見
24日 湯川氏殺害映像を公開
27日 後藤氏画像公開 24時間の期限通告
2月1日 後藤氏殺害映像を公開
4日 ヨルダンパイロット殺害映像公開
同日 リシャウイ死刑囚らを処刑
※私のブログのブックマークに「 ★(1)報道特集 イスラム国 人質事件(2015年1月24日)」
が入っています。ここをクリックして画面が出たら、更に下の方に「関連記事」という項目が
あります。ここの年月日をクリックすると、過去に報道された「報道特集」を
観ることができます。
●ブックマークに入れました「報道特集 イスラム国 人質事件(2015年1月24日)」は
削除されていました。
(2015年4月24日 記)
★テレビ朝日の「報道ステーション」をずっと楽しみにしていました。
特に恵村順一郎氏(朝日新聞論説委員)のコメントは、穏やかな口調の中に
きっぱりと正論を吐き、
毎回、頷きながら観ていました。
時々出演されるコメンテーターの古賀茂明氏も、政権が一番聞きにくいことをずばり仰り、
応援していました。
今回、官邸からの圧力で、恵村順一郎氏と古賀茂明氏、そしてお名前は分りませんが
女性チーフ・プロデューサーの三人が更迭させられるそうです。
こういうことがまかり通っていいのでしょうか?
こういう事を黙殺していたら、次は「報道特集」ということになります。
更には、このブログのようなささやかな個人のものまで、圧力を受けることに
なりかねません。
私は強い怒りを覚えます。
ブックマークに「★報道ステーションに圧力 3人降板させられる」に入れましたので、
是非、ご覧ください。
(2015年2月25日のブログ「報道人の気魄2」へつづく)