さて、次もまた今回の目的のひとつ「遊覧船かのこ」による断崖クルーズだ。目玉にもしていた。だが、自然はまたして私たちの前に立ちはだかった。予定していた西海岸コースが、荒天のために東海岸コースに変更になったのだ。東海岸は、西海岸に比べれば穏やかだ。200m級の断崖もない。なので、個人的には少し期待度ダウン。それでも船に乗り込めば、気持ちは昂った。
最初に目指すは、甑大明神橋。真ん中の支柱から左右にワイヤーが伸びた美しい橋だ。少々波が高いが、海から見る橋はまた格別。天気が良ければ、橋の下をくぐって、東シナ海へ抜けることができるのだが、ちょっと無理。ということで、しばし眺めた後、鹿の子大橋へ。橋を支えるアーチがこれまた美しい。ここは、天気が良くても船で向こうに行くのはちょっと無理のようだ。ただ、天気がいい時は、橋南端(写真では左)のアーチをくぐって少し歩けば鹿の子断層に行けるはず。だが、ガイドなしでは行かない方が無難だ。
鹿の子大橋を見納めた後、クルーズ船は上甑島南端の茅牟田崎方面に向けて大きくターン。そして着いたのは、海上に突き出た岩列。たしか、馬の立髪に見たてた名前が付いていた。次に目の前に現れたのは、三角形の大きな断崖。地層は大きく傾き、そして大きく食い違いをみせていた。実は、これこそ地質構造百選・鹿の子断層の延長部だったのだが、この時は全く知らなかった。帰ってから文献等を調べてみて気付いたのだ。クルーズ船に改めて電話でたずねると、その場所は「赤クエ」と教えてくれた。その名前から察すると、語源は「赤い崩れ」だろうか・・・。西海岸に行けなかったが故の、大きな発見だった。東海岸コース、侮るなかれだ。
そして最後は、昨年通れるようになったばかりの甑大橋だ。波を蹴立てて大橋に向かった。大袈裟ではない、シート横の窓には波しぶきがかかった。次第に大きくなる波は、船を前後にも揺らし始め、これ以上は無理という所まで行って橋を眺めた。甑大橋は、中央部が船が通れるように上に向かって緩やかにカーブしている。優雅できれいな橋だ。甑島の橋は、どれも個性的で美しい。橋を眺めるだけでも、なかなかいいクルーズが楽しめる。加えて、鹿の子断層の延長部も見ることができて、図らずも大きな成果を得ることができた。こうして、「遊覧船かのこ」でのクルーズは無事終了。港に着くと、案内していただいている方が待っていてくれた。だが、その日の昼間のスケジュールはこれで終わり、あとは島料理の夕食を待つばかりだった。