ジョルジュの窓

乳がんのこと、食べること、生きること、死ぬこと、
大切なこと、くだらないこと、
いろんなことについて、考えたい。

『ねずみひき』

2005-08-14 | マンガ
深見じゅんと言う漫画家は
我が家にとっては 『ぽっかぽか』の作者だ。

親子でお気に入りになったマンガだった。

テレビドラマにもなって、
結構評判もよかったらしい。

「子供には ちち、はは と 
 呼ばせようと思います。」
とか

「生まれてきた子供に ‘あすか’と名づけました。」

とか言う投書を 何回も見た。



同じ作者で
恋愛もののドロドロも 何冊か出ている。

『星の舟に乗って』《深見じゅん名作集》と言う単行本
(集英社、YOUコミックス、2000.8.28、505円)
に収録された 『ねずみひき』の中の、最後のシーン。



かなりに問題のあるアルバイト女性の
ガランとした 寒々しいアパートで
ふたりとも‘いいオンナ’の社長と林田、
泣きつかれて眠ってしまった女性の寝顔を見ながら。

(もちろん、3人とも 若めの女性。)


林田「いい月 出てる。」

社長「こっちも いい顔して 寝てる。」

林田「ほんとだ。」

社長「治るかね。
   この性格。」

林田「一番いいのは 恋をすることなんだけど。」

社長「林田みたいに?」

林田「・・・私も地獄だったわ。」

社長「不倫相手の奥さんに
   毎日無言電話。」

林田「薬飲んで
   手首切って
   救急車に乗ること4回!」

社長「アホったれの アル中女。」

林田「胃潰瘍のおまけ付き!」



林田「・・・それを社長が助けてくれた。」

社長「・・・私も恋で のたうちまわったからね。

   ・・・まあ この子を 放ってはおけないか。」

林田「私ね 
   みんなに教えてあげたいの。

   自分の心を掃除すると
   たいていのことは 
   解決できるって。

   幸せは 自分の中にあるってこと。

   それが分かれば
   他人と向き合って 笑い会えるってこと。」

社長「おっ、今日は詩人だね 林田。」

林田「世の中の女のコが
   みんな幸せになればいいのに。」

社長「いいからもう一杯飲もうよ。」



私は恋愛小説なんて書かないし

このマンガは 少女マンガではないから

恋愛指南書としても 役には立たないと思うけれども

恋愛に限らずとも、

「自分の心を掃除すると たいていのことは解決できる」

というのは 名言だと思う。



昔、
ある女性が 有名な学者の所へ行って
悩み事の相談をした。

あれがああで、これがこうで、それがそうで……。

解決できそうにない悩みの束をぶちまけて、
どうすればいいか、と助けを求める女性。

じっと 黙って 聞いていた学者は
女性を帰宅させるべく 手を取って、

「奥さま。
 
 家に帰って 針箱の中を 御覧なさい。」

とだけ言ったそうな。

私のいい加減な記憶では この学者は
ベンジャミン・フランクリンだったと思うのだが。



不思議なアドバイスに 
首を傾げながら帰宅した女性は

それでも 針箱を見た。

(ソーイング・ボックスと言う言葉は
 その頃の日本には 定着していなかった。
 
 それほど、古い記憶の中の お話。)



すると 針箱の中は ぐちゃぐちゃ。

見透かされたようで 恥ずかしくなった女性は
針箱の中を 整頓する。

すると 
家の中のあちこちが 散らかっていることに気づく。

家中を片付け、掃除をした女性の悩みは
もう 解決されていた。

そんな話だったと思う。



この話のようなことは 私には しばしばあった。

若い頃から 

イライラしたり 悩みが山ほどあったり

どうしようもない気分になって 
気がつくと 身の回りが 片付いていない。

不思議と そんな時には 
頭の中も 片付いていないのだ。

だから この話を子供の頃に何かで読んで
覚えていて良かったと思う。

どうしようもなくなった時には
針箱から 冷蔵庫の中から そこら中、
キレイにすると 見えてくるものがあるから。



本当は答えがわかっているのに 
見えない時がある。

悩みがたくさんあって、
どれもこれも重要な問題で、
どれが 大事な悩みだか 分からないことがある。

そんな時には 針箱もそうだが
頭の中を掃除して
重要でないものから順に
どんどん 棄てるのだ。

どうしても棄てられないこと、
死んでも棄てられない物なんて、
そう沢山は ないはずだ。



そうして棄てていくと、

自分のとるべき道が見えてきたり、

悩みが 取るに足りないものばかりになったり

とにかく 
気が楽になる。

おまけに、少しは 部屋が片付く。



最近の私は あまり悩みがない。

強いて言うなら、
家の中が 片付かないことが悩みだ。