伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ194

2021-05-03 23:45:01 | ジャコシカ・・・小説

が解け、皆の気持ちがほっと緩んだ。

 

 「早いけれどこの間に、弁当にしませんか」

 

 千恵が次の楽しみを見つけたと言わんばかりの笑顔を皆に向けた。

 

 「とてもいい提案です。今の内にいただきましょう」

 

 あやも納得顔で応じた。

 

 頭上の陽はほど良く傘をかけられて優しく、風もなく波もない。

 

 皆はそれぞれに船べりに身を乗り出して手を洗い、千恵の取り出す大振りの握り飯を頬張った。

 

 続いて清子が漬物と、厚焼きの卵焼きを取り出す。保温瓶から熱い茶も配られた。

 

 「海の上のピクニックだね」

 

 千恵は皆を満足そうに見廻し、巨岩と緑の屏風の山々に眼を細めた。

 

 「静かで大きくて、何にも言えなくなるわ」

 

 あやは大きく息を吸って、溜息まじりに言った。

 

 それから暫くは皆、釣りのことは忘れたように、おだやかな船の揺れに身をまかせながら、香ば

 

しい海苔の結びを味わった。

 

 やがて弁当も終わり、片付けも済んだ頃、突然千恵があやに言った。

 

 「あやお姉ちゃん、いつ東京に戻るの」

 

 あやは少こし間を置いてから答えた。

 

 「東京には当分戻らないわ」

 

 「じゃあ、ずっとここに居るの」

 

 「いや、今度は札幌ね、札幌で再出発かな」

 

 「じゃ、私行っていい。私、来春卒業だからそうしたら行きたい。私あや姉ちゃんと同じ服飾の

 

仕事したい。使って私を」

コメント
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