オレンジモーニング

2010-12-16 22:29:20 | 鳥(Birds)

マガン(Anser albifrons frontalis) White-fronted Goose


突然のタイミングで帰省をすることになった時のこと―。
伊豆沼にはこれまでに何度も訪れているけれど、沼の西側で夜明けを迎えようというのはこれが初めての事だった。
まだ辺りが暗闇に支配されている時間帯。沼に車を乗りつけ、凍てつく東北の外気に身を投じると、オオハクチョウ達のささやき声があちらこちらでしている。ポケットに忍ばせておいたカイロを頬に当ててしばし待つと、やがて東の空が明るみ始めた。
日の出の直前。突如、腹の底に響き渡るような「ずぉぉぉ!」という轟音がぼやけた頭を揺さぶった。それは、沼の沖で休んでいたマガン達が一斉にねぐらから飛び立ち羽ばたき、風を切る音だったのである。
飛び立ったマガンの群れは遠くからみるみるうちに近づいてきて私の頭上の少し欠けた月まで達し、あっという間に見渡す限りの天空全てがマガンの影に埋め尽くされた。なんというスペクタクルだろう!私はまるで迫り来る津波を遙か海面に見上げる小さな底棲生物のような気持ちになった。
やがて群れの波が引くと、やっと太陽が東の穹から顔を出した。それを合図に、一度目よりは少ないものの第二陣の大群が飛び立った。動きが見えるほど早く昇っていく太陽に、空は眩いばかりの橙色に染め上げられ、それを背にマガンがたくましい羽ばたきをする。














【2010/11/27/宮城 Miyagi,Japan】