羽休めの雁

2010-12-18 19:54:17 | 鳥(Birds)


ヒシクイ(Anser fabalis serrirostris) Bean Goose


普段、あまり行かないような場所に訪れると、思わぬ出遭いをすることがある。
この日はとてもうららかな日和だったけれど、鳥を見ていてもいよいよ冬が来たのだと感じさせられるような日だった。
富士からの透明な湧水が川の本流に合流して、その境が2色に見える辺りにはカモ達がたむろしていた。マガモ、オカヨシガモ、ヒドリガモ、そして8羽ほどもいるヨシガモも、見ているこちら側からは十分な距離があるためか私達のことはさほど気にも留めていない。夏にはとどまる所を知らずに繁茂して、河川敷を覆い尽くしていた葛やその他の草も枯れ始め、ホオジロ達の遊び場に変わりつつある。その河川敷では、ノスリがやや丈夫な草の茎にとまろうと苦労してばたついていた。また、鳥の鳴き声というものはしばらく聞かないと忘れそうになるもので、聞こえた鋭い鳴き声がシメだと思い出すのには少し時間がかかってしまった。日が傾きかけた頃には、少し冷たい風とともにやってきた30羽以上のツグミの群れが潅木に舞い降りた。

河川敷に広がる農耕地に通る小高い堤防の上を歩いていると、収穫も終わり耕された田の中に、2羽の雁が座っていた。
この2羽のヒシクイは、私が近づこうともただ私を見つめ返すだけで警戒の態勢すらあまりとらないほどに疲れ切っており、借りてきた猫みたいであった。あまり捕食されそうにない私の相手をする位なら睡眠をとりたい、というような様子で、写真のような大きなあくびをひとつするととても眠たそうな顔をして、それからゆっくり首を曲げて眠りについた。
もしかすると、琵琶湖に渡る途中の個体なのかもしれない。










【2010/11/12/静岡 狩野川 Sizuoka,Japan】


※追記と訂正

オオヒシクイ(Anser fabalis middendorffii

本日12月21日。亜種オオヒシクイを実際に見てみた。
すると嘴から額にかけてのくびれや、寸詰まりで丸い顔つきからしても11月12日に狩野川で見たものはもう明らかに亜種ヒシクイであることを学んだ。こう見比べてみると確かに首の長さも違うわけで、迷った原因である嘴の厚みなどは亜種ヒシクイの個体差の範囲に収まるレベルだった。