ルーフィコリスは夕日を胸に

2011-11-25 22:38:26 | 鳥(Birds)


ノドアカツグミ(Turdus ruficollis ruficollis) Red-throated Trush


―昼過ぎ。私は島央の丘から坂を下り、宿に向かっていた。
今回初めて宿泊した宿屋の夫婦はとても鳥の話の通じる方達で、驚いた。
初日の宵の話。何かいい鳥を見たかと聞かれた私達は、キタヤナギムシクイの話をした。すると宿屋の女将さんが「キタヤナギムシクイならそれらしき亡骸が落ちていたのを数日前に拾ったのよ。どこやったかしら・・・」とわざわざ探してくれたのだ。初めは半信半疑だった私達も、拾った時の話を聞いていくとそれがどうやら本当にキタヤナギムシクイらしきものだと思い始めた。キタヤナギなら是非翼標本にしたい。
しかし夜だったため辺りは暗く、探すのも容易ではない。そこで「明日の日中にゴミバコの中を探してみます」と言って捜索を切り上げたのだった。

飲み物を買う用事をついでに済ませて、いざ昨日聞いたキタヤナギの亡骸を捜そうと宿の前で腕をまくった私にIgさんから1通のメールが届いた。
その文面を見た私は、次の瞬間にはキタヤナギの捜索をさっぱり諦めていた・・・!

先ほど下りて来た坂を血相を変えてまた上り、しゃかりきに走った後。今度は息をゆっくり整えてから、柔らかい松葉の絨毯がひかれた林の道に足を踏み入れる。
憧れの1種を見られるかもしれないと思うと顔の筋肉は緩みっぱなしになり、もし見られなかったらと思うと顔面蒼白になった。こうして信号機みたいに顔色を変えながら林を歩く私だったけれど、どちらにせよ心臓は跳びはねんばかりに鼓動していた。

カエデような切れ込みの入った葉に、棘のある枝を持つ木、ハリギリ。この木に生る黒い実を食べに来ていたのは、まさにノドアカツグミの雄第1回冬羽だった!
顔から胸にかけての橙色は薄くて、羽縁が僅かに白い。外側尾羽上面の橙色は尾羽を閉じていても垣間見える。脇の縦斑はやや目立って腹にかけてモヤッとした模様だけれど、下尾筒は見事にスッキリ白い。

このノドアカツグミは疲労しているのか、全て1羽で食べ尽くしてしまうのではないか思うくらいとにかく一心不乱にハリギリの実を食べ続けていた。ずっと見ていたわけではないから分からないが、おそらく日が沈むまでずっと。
ここで一気に体力補給して渡って行ったのだろう。次の朝には見られなかったという。







【2011/10/09/山形 Tobishima Island,Japan/Oct.2011】


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