11月下旬、臼杵市の妙見様から、林道へ下山しているとセンボンヤリの閉鎖花を見つけた
春の開放花を撮影する方は多いが、秋の閉鎖花に関心を寄せる方は少数だろう
名は秋の閉鎖花の姿が由来となっているようだ
春の開放花は、可愛らしく人気があり、基本的に舌状花は白なのだが、赤っぽいものもある
Ylistにアカバナセンボンヤリというものが記載されているが、これは南アフリカ原産の外来種を指すようで、赤っぽい舌状花のセンボンヤリの事ではないようだ
下図の開放花は、4月に長崎県北部で撮影したもの
センボンヤリは、春には丈の低い開放花を、秋には丈の高い閉鎖花を発生させるが、その意義として、兄弟間競争の回避が考えられる
センボンヤリの閉鎖花由来痩果の冠毛長は、開放花由来痩果よりも長く、閉鎖花の丈が高い事も相まって長距離の散布に貢献しており、自殖個体を遠くに、他殖個体を近くに散布する
これは、近交弱勢を抑制した上で、多くの子孫を残す為のしたたかな戦略なのだろう
閉鎖花を形成する被子植物は多く存在するが、必ず開放花も持っており、閉鎖花のみのものはない
キッコウハグマの項で述べたように、当該植物は繁殖の多くを自殖に依存しており、これは、閉鎖花を持つ植物に多く見られる傾向でもある
キッコウハグマは、栽培環境下で比較的容易に開放花をつける事ができるが、センボンヤリに関しては、栽培条件を工夫しても栽培下で開放花を構成させる事ができなかったようだ
開放花と閉鎖花への資源配分がどのようなメカニズムで起こるのかは、今後の研究課題なのだろう
参考資料)
風散布植物センボンヤリの繁殖戦略 - 閉鎖花/開放花に由来する二型痩果の役割
都市的野外環境下におけるセンボンヤリの開放花形成
学名:Leibnitzia anandria (L.) Turcz.
和名:センボンヤリ(千本槍)
キク科 センボンヤリ属
撮影 2022年11月 大分県(スマホで撮影)
初版 2015年04月03日
記事アップロード 2022年12月19日
画像アップロード 2022年12月03日 2022年12月17日