今年も、大分県の塩性湿地でウラギクを観察した
ここは、大潮時においても冠水しない水面比高域だと思われ、競合する植物が少ない事を条件に、ウラギクはこのような環境下においても生長する
しかし、ここでは好塩生植物のヨシ群落に紛れてウラギクが自生しているような状況で、圧倒的なヨシの繁殖に駆逐されてしまいそうな感がある
ウラギクは、小中規模の洪水によって生じる裸地に速やかに侵入できる為、このような水面比高域で群落を形成する事が可能であると考えられるが、他の植物の侵入繁殖に伴い、消失する
だが、一時的にせよ、そのような場所で繁殖し、種子を拡散できた事は、有意義な事なのである
キク科の植物は、風散布型の種子を生産し、広い範囲に種子を拡散する事が可能であるのだが、ウラギクの場合は、それに加えて種子や実生が潮汐により運搬される事で、より広い範囲に分散、定着する事が期待できる
来年、この場所でウラギクを見る事はできないかもしれないが、拡散された種子が、他の場所に定着、生育する事ができるだろう
ウラギクは、発芽や生長において耐塩性を有し、また根に形成される鉄プラークが亜鉛などを吸着するため、重金属で汚染された土壌でも生育できることなどが知られている
よって、汚染土壌や塩害農地等の再生への活用や、塩分濃度の高い場所でも栽培できる作物としての注目が高まっている
参考資料
葛西臨海公園の護岸におけるウラギク(Aster tripolium L.)の 分布規定要因の検討
那賀川汽水域における塩性湿地植物群落のハビタット評価
学名:Tripolium pannonicum (Jacq.) Dobrocz.
和名:ウラギク(浦菊)
キク科 シオン属
環境省準絶滅危惧種
撮影 2022年11月 大分県
初版 2015年10月29日
記事アップロード 2022年11月21日
画像アップロード 2022年11月15日
以下 アーカイブ
記事アップロード 2021年11月21日
画像アップロード 2021年11月21日
11月に見つけた野草の花(大分県)
ウラギク(浦菊)
Tripolium pannonicum (Jacq.) Dobrocz.
キク科 シオン属
花期 : 9~11月
生育地 : 塩性湿地
分布 : 北海道東部、関東~九州
RL指定 : 環境省カテゴリ:準絶滅危惧種 大分県:絶滅危惧Ⅱ類
時々訪れる大分県の塩性湿地では、多くのウラギクが花を咲かせていた
海岸の開発により自生適地が減少しており、あまり多く見られる植物ではない
本来植物は、塩分の高い場所での生育は、浸透圧ストレスにより困難なものである
植物は、根から吸収する塩を、地上部の成長により希釈し、葉の塩濃度を閾値以下に保つようにしている
しかし、塩が過剰となり、葉内の塩濃度が高まると光合成が阻害され、ますます塩の蓄積が加速される
つまり、塩による光合成の停止が、塩害の主要因なのである
ウラギク等の塩性植物は、根圏に対し、葉の浸透圧を高めて、葉への塩の侵入に対抗している
これは、種により異なるが、有機溶液を合成したり、根圏の無機塩を蓄積する事で得ているものである
その他にも、いろいろな工夫により、塩性植物は、通常植物が生育できない環境に適応しているのだ
ウラギクは、草丈30~80cm程のキク科、二年草
競合する植物が多い場所では、草丈が高くなるとの事で、私が観察した場所では1m程もありそうな大株も見られた
茎は直立し、多数分枝する
葉は無毛で、披針形、やや厚みがあり、全縁または、まばらな鋸歯がある
赤く紅葉したハママツナと混生するウラギク