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to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

マイ・ルーム

2007-10-23 02:08:11 | the cinema (マ・ヤ行)
 心の部屋を開けたのは・・・
原題 Marvin's Room
製作年度 1996年
監督 ジェリー・ザックス
脚本 スコット・マクファーソン
音楽 レイチェル・ポートマン
出演 メリル・ストリープ/レオナルド・ディカプリオ/ダイアン・キートン/ロバート・デ・ニーロ

戯曲『マーヴィンの部屋』を映画化した作品。白血病といった重いテーマを扱いながら、人間ドラマとして希望のある描き方がよかった。

父親の看病を放棄し、実家から遠く離れた町で暮らすリー(メリル・ストリープ)。
姉のベッシー(ダイアン・キートン)は結婚もせず、寝たきりで認知症の父親と叔母の面倒を一人で看てきた。
しかしベッシーが白血病にかかり、親族の骨髄提供が必要となり、連絡を貰ったリーは20年ぶりに実家に戻ることに・・・・。

婚期も逃し、父親の介護を一人で担ってきた長女。
しかも同居の叔母さえも物忘れが酷く、父親の事を頼める状態にないのに、
相変わらず自分の事しか考えない妹・・・死ぬわけにはいかない、ベッシー。。。

美容師のライセンスを取り、子供2人と安定した生活をする為に頑張っているが
自己中心的で周りを見る余裕がなく、常にイライラとして
生きていくことで精一杯で息子のことが理解できない母親、リー。
姉の身体は心配だが、父親の看護を押し付けられたくない。

母親からの愛情を感じることが出来ず、記憶にも無い父親の写真だけを残し
家に火を放って、更生施設に入れられてしまうが、心の奥で母の愛情を試している
心の居場所を求め、自分をもてあます思春期の長男、ハンク(レオナルド・ディカプリオ)。

姉妹の20年振りの再会のシーンにあるぎこちなさ。
そこに長く実家に寄り付かなかったリーのうしろめたさが見て取れる。
ハンクや弟は、初めて会う叔母や祖父に戸惑いながららも子供らしく馴染んでいくが
リーは今までの生活を捨てる気はない。
姉とのわだかまりがとれていく一方で、
自分には反抗的なハンクが、会って間もない姉に心を開いていることに驚くリー。
ハンクの変化をみて、少しづつ変わっていく母親をM.ストリープが丁寧に演じていく。

主演は一応M.ストリープなのだが、3人の心情が同じような割合で映し出されるため、ちょっと見誰が主演か判らない。
ベッシーの包み込むような優しさと、病気への不安。
役作りの為か、パサついたようなダイアン・キートンに感情移入して観てしまいました。

やがて誰にも訪れる親の介護、または自分の病気、或は老い。
ベッシーの立場になるヒトもいるだろうし、リーのような生き方をしていた人もいるはず。
人が一人死んで何も変わらないということは無い。
ベッシーに命の危険があるということは、老いた二人の面倒を誰が見るかということも問題になるはずだが、ここでは直接的なセリフは無い。

痴呆のみられる老人二人との生活の中で、味わった事の無いハンスとのエキサイティングなドライヴに
悲鳴を上げながらも楽しむベッシーが微笑ましい。
この海辺のシーン、ディカプリオの悪戯っこい表情が可愛い♪
優しいベッシーとの触れ合いの中で、少しづつ変わっていく心の変化をその表情だけで伝えてくるレオの巧さはここでも光っている

派手なストーリー展開はないけど、どこにでも居るような壊れかけた家族が
現実から逃げないで、ぎこちないながらも寄り添っていく姿がえがかれるラスト。

「愛を注げる人がいたなんて、本当に幸せ・・」
介護に明け暮れた人生をこう締めくくる、ベッシーの言葉が胸に沁みる、いい作品でした