愛、母、愛、母。 世にこれ程尊い 言葉があるだろうか。 群衆は主を ののしり、御弟子らは ヨハネを除いて 皆逃げたのに。 母マリヤと女弟子は 泣きつつ十字架の 下に立っていた。
苦難の十字架の主を 見上げた母マリヤの 心はどんなであったか。 「剣汝の心を貫くべし」 とのシメオンの預言は この事実ならん ああ悲痛の極み。 自らの苦痛を訴える 代りに、母の身の上を 思いやりたもう、主の 心の愛の深さ。 「子よ、これ汝の母なり」 とヨハネに。「女よ (母よ)これ汝の子 なり」と、母を慰め 思いやりたもう主。 ヨハネに母を与え 母にヨハネを与え 凡てを与え尽くした。 主は愛を与える事だと 無言の教えを 久遠に人に 示された。嗚呼!
中山吾一著 「一日一詩 永遠の旅」より