
ハダカカメガイという和名より、流氷の妖精クリオネの方が一般的な名前となっている。
クリオネは学名(Clione limacina)の属名である。巻き貝の仲間で、大きさは4cmほどしかない。北極圏を囲んで分布し、日本近海では、北緯42度以北でおもに見られる。
妖精で、私が思い浮かべる姿は、森にすみ、背中に透き通る羽をつけた小さな美しい女性である。
それほどよく調べたわけではないが、妖精は時代や地域によってさまざまらしい。
平凡社の百科事典には、「人間と共通の多くの性質を持っているが、ただ良心と節操だけはない。ひどく気まぐれで、人間からすこしでも親切にされると、大げさに恩返をし、きげんを損じると、人間に仕返しをして危害を加える。」と載っていた。正と負の性質を備えているらしい。
日本の神様も「和魂」(にぎみたま)」と「荒魂(あらみたま)」との二面性を持っているから似ているが、それよりも、日本の妖怪に近いかもしれない。
柳田国男は、「いずれの民族を問わず、古い信仰が新しい信仰に圧迫せられて敗退する節には、その神はみな零落して妖怪となるものである。妖怪はいわば公認せられざる神である。」と述べている。
妖怪は出現する場所が決まっているが、妖精も森にいたり、川にいたり、種類によって定まったすみかがある。
クリオネはその姿から、見る人が人間の体と対比して眺め、穏やかな妖精を思い浮かべるのだが、その幻影はすぐに破れる。クリオネと同じように泳ぐ貝、ミジンウキマイマイ(学名 Limacina helicina)に出会うと、頭に見立てていた部分が二つに大きく割れて、中から触手が出てきて捕まえて食べてしまうのである。
外見ではあるが二面性をもっているから、妖精というな呼び方はより適切に思う。
蛇足:学名の ca ci ...は、カ キ・・・と読めばよい。
Limacina はリマキナとなる。