太陽の光が、空気中の水分で反射されて虹ができるということは知っていたが、深く考えたことはなかった。
しばらく三角関数など使用しなかったから、頭の体操がてらに、虹の絵を描くつもりだったが、かなり奥深いものだということを認識した。
奥まで行くことは、わたしには無理なので、ごく初歩の部分だけを描いて理解することにした。
水平方向から太陽光線が水滴にあたるとすれば、すべての光が有効に反射されて虹に見えそうだが、実際は以下の2つの経路をとる光が強く戻り、虹をつくる(虹に見える)。
光が異なる物質にあうと、一部が反射され、残りは屈折しながら物質の中に入っていく。反射と屈折をしながら、上図の経路をたどる光が、いわゆる主虹をつくる(主虹に見える)。
太陽と虹と観測している人の角度が42度である。つまり、地上で虹を見るときは、42度くらいの「高さ」に見えるということである。
虹の光線となる前に、1回散乱光として、水滴の中から空気中にでているが、この光は見ることができない。見ようとすれば太陽とほぼ重なるからである。
この経路の光が、副虹をつくる。虹が出たときに、注意深く見ると、主虹の外側に、主虹よりかなり暗い虹があることに気がつく。これが、副虹である。
主虹の経路よりも、1回多く反射しているので、図では省略しているが、前の図と同じように、その点で光のすべて反射するわけではなく散乱光も放射しているから、主虹よりも暗くなっている。と、いまのわたしの能力では、そう考えることにしている。
虹光線として放出しなかった光は、水滴の中をさらに進んでいるのだが、散乱光をだしながら弱まり、ふつう虹として見えるのは副虹までである。副虹は、50度の高さに見える。
主虹と副虹の間は暗く、「アレキサンダーの暗帯」と名づけられている。主虹と副虹の間の角度で散乱してくる光がほとんどないためである。
光は色によって屈折率が異なっているから、主虹をつくる光線は、実際は上図のように赤と紫は分離して進み、散乱してくる角度も異なる。主虹は赤から紫まで、上から並んで見える。
水滴は各色をさまざまな角度で放射するけれど、すべてが見えるわけではなく、眼に向かってきた光線だけを見ることができる。
だから、角度の高い光線の赤は、紫より高い水滴から出てくるのを見ることになり、赤から紫まで、上から並んで見えることになる。
図では赤と紫の光線の角度を誇張している。
副虹は、主虹と色の並びが逆で、紫から赤の順で見える。
【光線の経路の描き方】
基本的なことは、次の2つである。
反射は図のようである。説明がなくともわかるだろう。
屈折の計算は次の式でできる。
sin B = 1.330 × sin A
むずかしそうに感じるが、ウィンドウズのアクセサリーにある「電卓」を使用すれば、簡単に計算することができる。
(例1)空気中からの入射光角度(B)が34度であれば、水滴中での進路の角度(A)は?
式に代入すると
sin 34 = 1.330 × sin A
sin 34 ÷ 1.330 = sin A
「電卓の種類」で「関数電卓」を選択する。
34 を入力して、【sin】を押す。
【/】を押し、1.330 を入力、【=】を押す。
【Inv】にチェックをする。
【sin】を押す。
表示された「24.86....」が、求めるBである。
(例2)水滴の中から入射光角度(A)が44度であれば、空気中での進路の角度(B)は?
式に代入すると
sin B = 1.330 × sin 44
「電卓の種類」で「関数電卓」を選択する。
44 を入力して、【sin】を押す。
【*】を押し、1.330 を入力、【=】を押す。
【Inv】にチェックをする。
【sin】を押す。
表示された「67.50....」が、求めるAである。
Aに、48.75 よりも大きな角度を入れて計算すると、
「無効な値です」と表示される。
このときは、全部が反射して空気中にでていかないという意味である。
1.330 は屈折率で、光線の色によって次のような値になる。
赤 1.330
黄 1.334
緑 1.336
青 1.340
紫 1.344
主虹光線を描くときは、直径の 7/8 くらいのところから、光線を入れればよい。
一生に1本、虹の光線を描いてみるのも楽しいと思う。
リチャード・ドーキンスの「虹の解体」には次のように書かれている。
「ニュートンが単純な白色光をプリズムで7色に分光したとき、今日の科学の基礎はつくられた。だが彼の同時代人だったジョン・キーツを初めとする浪漫派詩人は、”虹の持つ詩情を破壊した”とニュートンを非難した。」
このページを、ここまで我慢して読んでくださったあなたの心も傷ついてしまっただろうか。それとも、たんに頭痛がしただけだろうか。
参考:
・虹の理論 H.M.ナッセンツバイク サイエンス 1977.6
・虹の解体 リチャード・ドーキンス 早川書房