洞窟の天井からぼとっと落ちてきたものが
狙いすましたようにニッキの左肩を直撃した。
「あっ、何だ、これは」
ニッキはそれを指先でさっとすくいあげる
と、自分の鼻先にもっていった。
「くそっ、こりゃ、やられた」
ニッキの大声に驚き、天井に群れなしてぶ
ら下がっていたものたちが、キキッと鋭い声
をたてるなり、バサバサと羽音を残して飛び
去る。
メイは、わあっこわいと叫ぶと、床にしゃ
がみこんだ。
メイの胸の小袋は、まだ十分に輝いていて、
洞窟の内部を照らしだしている。
「ああ驚いた。あんなのいるんじゃ、地球
とあんまり変わらないわね。あっあれ見てニッ
キ、洞窟の側壁にいろんな絵が描かれてるわ」
メイは思わず、息をのんだ。
詳しくはわからないが、太古の人々の生活
ぶりが克明に描かれている。
簡素なタッチだが、それだけに迫力がある。
「空を飛んでいるものが、一体、何なのか
どうも理解不能だな」
先ほどのこうもりのフンがまだ気になるよ
うで、ニッキは、メイからもらった紙切れを
なんども折りたたんだりしながら、戦闘服の
左肩をぬぐった。
「もうきれいに落ちてるわよ。ニッキって
案外、神経質なんだ」
「ポリドン将軍からいただいたんだ。いつ
だってきれいにしておかなくっちゃ」
「忘れていたのに、ニッキ、そんなこと言
うから、お父さんのこと思い出しちゃったじゃ
ないの。お母さん、今ごろどこでどうしてい
らっしゃるかしら?」
「ごめん。アステミルさんもきっと元気で
いらっしゃる。メイさんのこと見守っておら
れる」
ニッキはそう断言した。
「だといいけど……」
どこで取って来たのか、なじみのリスがメ
イの足もとで何やら食べている。
「あら、あなたって?おかしいわね。ここ
には食べ物なんてないはずでしょ?」
リスは答えず、夢中で口をうごかす。
コリコリいう音が、メイの耳に心地よい。
ピーっと鳴いて、なじみの小鳥がメイの肩
先にとまる。
くちばしから漏れ出たらしいものをつっつ
こうとしてあやまって、メイの肩をほんの少
し傷つけた。
「まあ、ピーちゃんも。あなたたち、ほ
んとにどうしたの、びっくりするじゃない」
メイのお気に入りの動物たちはいずれもメ
イの問いかけに応えようとしない。
ただせっせと食べ物を口にしているだけで
ある。
「おかしいわね、ニッキ?いったい、この
子たちどうしたのかしら」
「さあね、それよりぼくはさっきの連中の
ほうが気がかりだ。どこかにあいつらの仲間
がいるはずなんだが……」
ニッキはそう言いながら、洞窟の壁を丹念
に調べだした。
どこといって、変わり映えのない壁ばかり
がつづいている。
キラキラ石がその威力を失い始めたらしい。
再び、洞窟内部が暗くなってきた。
「これ以上ここにいても仕方がないみたい
だわ。ニッキ、早く出ましょう」
「ああ、せっかく手がかりをつかんだと思っ
たんだが……、くやしい」
メイの仲良しのリスが、洞窟のすみで、何
やらじたばたしている。
「ほら、リスさん。行くわよ。放っておか
れたら大変よ」
辺りはほとんど真っ暗になった。
だが、不思議なことに、リスの姿が闇に浮
かび上がっている。
「ちょっと待って、メイ。なにかあるよう
だ」
ニッキがリスのそばに近寄っていく。
しばらく、ニッキは手で壁をさぐっていた
が、あっと叫んだ。
何やらとっかかりを見つけたらしく、
「よし、ここだ」
と力強く言い、両腕に力をこめた。
ギギギッ。
重々しい音をたて、たたみ一畳分くらいの
広さの壁が引きあけられた。
「あれ?さっきのカレーだわ」
メイがくんくんと鼻をうごかす。
「うそだろ、そんなわけない。気のせいだ
よ、きっと」
向こう側の空間が明るいらしい。
洞窟の床に光が差しこみ、メイのピンクの
安全靴があらわになった。
狙いすましたようにニッキの左肩を直撃した。
「あっ、何だ、これは」
ニッキはそれを指先でさっとすくいあげる
と、自分の鼻先にもっていった。
「くそっ、こりゃ、やられた」
ニッキの大声に驚き、天井に群れなしてぶ
ら下がっていたものたちが、キキッと鋭い声
をたてるなり、バサバサと羽音を残して飛び
去る。
メイは、わあっこわいと叫ぶと、床にしゃ
がみこんだ。
メイの胸の小袋は、まだ十分に輝いていて、
洞窟の内部を照らしだしている。
「ああ驚いた。あんなのいるんじゃ、地球
とあんまり変わらないわね。あっあれ見てニッ
キ、洞窟の側壁にいろんな絵が描かれてるわ」
メイは思わず、息をのんだ。
詳しくはわからないが、太古の人々の生活
ぶりが克明に描かれている。
簡素なタッチだが、それだけに迫力がある。
「空を飛んでいるものが、一体、何なのか
どうも理解不能だな」
先ほどのこうもりのフンがまだ気になるよ
うで、ニッキは、メイからもらった紙切れを
なんども折りたたんだりしながら、戦闘服の
左肩をぬぐった。
「もうきれいに落ちてるわよ。ニッキって
案外、神経質なんだ」
「ポリドン将軍からいただいたんだ。いつ
だってきれいにしておかなくっちゃ」
「忘れていたのに、ニッキ、そんなこと言
うから、お父さんのこと思い出しちゃったじゃ
ないの。お母さん、今ごろどこでどうしてい
らっしゃるかしら?」
「ごめん。アステミルさんもきっと元気で
いらっしゃる。メイさんのこと見守っておら
れる」
ニッキはそう断言した。
「だといいけど……」
どこで取って来たのか、なじみのリスがメ
イの足もとで何やら食べている。
「あら、あなたって?おかしいわね。ここ
には食べ物なんてないはずでしょ?」
リスは答えず、夢中で口をうごかす。
コリコリいう音が、メイの耳に心地よい。
ピーっと鳴いて、なじみの小鳥がメイの肩
先にとまる。
くちばしから漏れ出たらしいものをつっつ
こうとしてあやまって、メイの肩をほんの少
し傷つけた。
「まあ、ピーちゃんも。あなたたち、ほ
んとにどうしたの、びっくりするじゃない」
メイのお気に入りの動物たちはいずれもメ
イの問いかけに応えようとしない。
ただせっせと食べ物を口にしているだけで
ある。
「おかしいわね、ニッキ?いったい、この
子たちどうしたのかしら」
「さあね、それよりぼくはさっきの連中の
ほうが気がかりだ。どこかにあいつらの仲間
がいるはずなんだが……」
ニッキはそう言いながら、洞窟の壁を丹念
に調べだした。
どこといって、変わり映えのない壁ばかり
がつづいている。
キラキラ石がその威力を失い始めたらしい。
再び、洞窟内部が暗くなってきた。
「これ以上ここにいても仕方がないみたい
だわ。ニッキ、早く出ましょう」
「ああ、せっかく手がかりをつかんだと思っ
たんだが……、くやしい」
メイの仲良しのリスが、洞窟のすみで、何
やらじたばたしている。
「ほら、リスさん。行くわよ。放っておか
れたら大変よ」
辺りはほとんど真っ暗になった。
だが、不思議なことに、リスの姿が闇に浮
かび上がっている。
「ちょっと待って、メイ。なにかあるよう
だ」
ニッキがリスのそばに近寄っていく。
しばらく、ニッキは手で壁をさぐっていた
が、あっと叫んだ。
何やらとっかかりを見つけたらしく、
「よし、ここだ」
と力強く言い、両腕に力をこめた。
ギギギッ。
重々しい音をたて、たたみ一畳分くらいの
広さの壁が引きあけられた。
「あれ?さっきのカレーだわ」
メイがくんくんと鼻をうごかす。
「うそだろ、そんなわけない。気のせいだ
よ、きっと」
向こう側の空間が明るいらしい。
洞窟の床に光が差しこみ、メイのピンクの
安全靴があらわになった。