「まあ、あなたちっていったい……」
メイは地べたにはいつくばっている黒っぽ
い生き物に見おぼえがある。
「よくもまあ、どうして、こんなところま
で来れたの?」
そう言いいながら、泥だらけのリスを胸に
かかえこんだ。
「めえちゃん、ぶじでよかった」
あいうえおの言えないつくりの口で、リス
が必死に思いを伝えようとする。
メイはいとおしさで胸がいっぱいになった。
「ピーちゃんも……」
メイは涙ぐんだ。
小鳥はなんとかして、メイの肩にとまろう
と羽をばたつかせる。
「ううっ、うう」
黒装束のひとりが、彼女を追いはらおうと
銃をふりまわす。
足もとまでおおった厚い黒衣がバサバサと
音をたてた。
「やめてください。危ないじゃないですか。
暴発したらどうするんですか。小鳥が飛んで
きただけじゃないですか、お願い」
メイがそう訴えるが、彼はメイの言うこと
を聞こうとはしない。
彼は、メイの背中に銃のつつ先を押しつけ、
ぐりぐりとねじった。
「い、いたい。やめて、やめてください」
両手で銃を高々とあげると、そのままメイ
の背中に打ち下ろそうとした。
「やめろ」
すぐさまニッキが彼にとびかかり、取っ組
み合いになった。
洞窟の中がわんわんひびく。
「よくも、よくも……」
メイがひとりごちた。
彼女のからだが急速にあたたまってくる。
(あっ、わたしったらいったいどうしちゃ
ったんだろう。これっていったい……)
心臓のドクンドクンという音がしだいに高
まり、それまで以上に体内に血液を送り出そ
うとしはじめた。
メイの顔がぽっぽぽっぽ燃えるよう、まな
ざしがきつくなってきて……、さながら仁王
を思わせた。
彼女の怒りが頂点に達したとき、首にかけ
たキラキラ石入りの小袋が光りだした。
洞窟の中が、まるで昼間の太陽に照らされ
たように明るくなった。
まるでメイ自身が紫色の太陽になったかの
よう……。
「メイちゃん、おさえて。それでじゅうぶ
んじゃ。それ以上怒ると、この洞窟もろとも、
あんたのからだが吹き飛んでしまう……」
メイの耳の奥で懐かしい声がした。
モンクやメリカが住む森にいるはずの年老
いたヒヒの声だった。
(きっと空耳、でもそれでもいい、まぼろ
しでもいいから会いたい、あのおじいさんに)
メイはそう強くのぞんだ。
ニッキのからだは、もうひとりの黒装束の
暴力によってむりやり洞窟の壁に押し付けら
れていたが……。
まもなく銃を持つ黒装束の両手が、だらり
と垂れさがった。
彼の体が、洞窟のゆかにくずおれるように
倒れるのにあまり時間がかからなかった。
黒ずくめのふたりはいずれも、ぴくりとも
しなくなった。
「メイ、もうだいじょうぶだ」
両手で銃をかまえたニッキが、メイに向か
って叫ぶと、彼は横たわっているふたりの顔
をおおっていたフードをくるりと取り去った。
「おお、これは……この顔は。もはやわた
したちのものじゃない。太古の……。ああな
んてことだ、どうしてこんなことが……」
そういったきり、ニッキは口を閉ざした。
メイは地べたにはいつくばっている黒っぽ
い生き物に見おぼえがある。
「よくもまあ、どうして、こんなところま
で来れたの?」
そう言いいながら、泥だらけのリスを胸に
かかえこんだ。
「めえちゃん、ぶじでよかった」
あいうえおの言えないつくりの口で、リス
が必死に思いを伝えようとする。
メイはいとおしさで胸がいっぱいになった。
「ピーちゃんも……」
メイは涙ぐんだ。
小鳥はなんとかして、メイの肩にとまろう
と羽をばたつかせる。
「ううっ、うう」
黒装束のひとりが、彼女を追いはらおうと
銃をふりまわす。
足もとまでおおった厚い黒衣がバサバサと
音をたてた。
「やめてください。危ないじゃないですか。
暴発したらどうするんですか。小鳥が飛んで
きただけじゃないですか、お願い」
メイがそう訴えるが、彼はメイの言うこと
を聞こうとはしない。
彼は、メイの背中に銃のつつ先を押しつけ、
ぐりぐりとねじった。
「い、いたい。やめて、やめてください」
両手で銃を高々とあげると、そのままメイ
の背中に打ち下ろそうとした。
「やめろ」
すぐさまニッキが彼にとびかかり、取っ組
み合いになった。
洞窟の中がわんわんひびく。
「よくも、よくも……」
メイがひとりごちた。
彼女のからだが急速にあたたまってくる。
(あっ、わたしったらいったいどうしちゃ
ったんだろう。これっていったい……)
心臓のドクンドクンという音がしだいに高
まり、それまで以上に体内に血液を送り出そ
うとしはじめた。
メイの顔がぽっぽぽっぽ燃えるよう、まな
ざしがきつくなってきて……、さながら仁王
を思わせた。
彼女の怒りが頂点に達したとき、首にかけ
たキラキラ石入りの小袋が光りだした。
洞窟の中が、まるで昼間の太陽に照らされ
たように明るくなった。
まるでメイ自身が紫色の太陽になったかの
よう……。
「メイちゃん、おさえて。それでじゅうぶ
んじゃ。それ以上怒ると、この洞窟もろとも、
あんたのからだが吹き飛んでしまう……」
メイの耳の奥で懐かしい声がした。
モンクやメリカが住む森にいるはずの年老
いたヒヒの声だった。
(きっと空耳、でもそれでもいい、まぼろ
しでもいいから会いたい、あのおじいさんに)
メイはそう強くのぞんだ。
ニッキのからだは、もうひとりの黒装束の
暴力によってむりやり洞窟の壁に押し付けら
れていたが……。
まもなく銃を持つ黒装束の両手が、だらり
と垂れさがった。
彼の体が、洞窟のゆかにくずおれるように
倒れるのにあまり時間がかからなかった。
黒ずくめのふたりはいずれも、ぴくりとも
しなくなった。
「メイ、もうだいじょうぶだ」
両手で銃をかまえたニッキが、メイに向か
って叫ぶと、彼は横たわっているふたりの顔
をおおっていたフードをくるりと取り去った。
「おお、これは……この顔は。もはやわた
したちのものじゃない。太古の……。ああな
んてことだ、どうしてこんなことが……」
そういったきり、ニッキは口を閉ざした。