朝日新聞より抜粋
日本一になった日本ハムの主力には、高校から入団した選手が多い。
西川、中島、中田、陽、大谷、近藤たちだ。 球団はフリーエージェンシト(FA)に頼らず、中心選手は自前で育てるのが基本方針。
独自のプログラムが成功に導いた。
高校からの入団は、5年、 大学・社会人からの入団は、2年が、育成期間となる。その間は、千葉県鎌ケ谷市の2軍の練習施設に併設する「勇翔寮」への入寮が義務。
そして、最初の休日には決まりがある。本を買いに行くのだ。
朝食後の10分間が読書タイムになる。
「一番大事なのは野球での成功。 そのためにいろんな考えを身につけるのが大事です。 てっとり早いのが読書。 読書習慣のため、時間を設けています」と、本村幸雄・選手教育ディレクター。 2011年に高校教師から転身した。
球団は寮の教育に、元教育者を選んだ。
選手は毎日、日誌をつけ、自分と向き合う。シーズン中は2度、長期目標設定用紙を記入。寮の部屋だけではなく、ロッカールームにも貼る。 人に見られることで、目標達成への責任を持たせる。 そうやって、プロの自覚を促していった。
今年は日本舞踊の花柳芳次郎さんや、元陸上選手の為末大さんを招いた。本村教育ディレクターは「その道のプロの話を聞くことで、意識が高まる」と狙いを説明する。 感想文の提出も必須なのだそうだ。
日本ハムの支配下登録選手は今季65人。育成選手はおらず、陣容は12球団で最少だ。 少数精鋭だと出場機会が増え、実践で鍛えられる。
練習では「1球目の大切さ」を重視。 ノックの1球目を捕らないと、打撃練習の1球目を打たないと、グラウンドから出されることもある。
1球目に厳しくなったのは、01年から。
当時2軍監督の白井一幸・内野守備塁コーチ兼作戦担当は、「1球目は1日に1回しかない。それを打てるか、ストライクになるか、アウトにできるかで、試合に臨む気持ちが変わる」と説く。
寮内や球場ベンチには、「常に全力」 「最後まであきらめるな」 と書かれた貼り紙がある。
球団が札幌に移転した04年から、自然発生的にチームのスローガンになったという。 「高校生から育てると、球団の一貫した方針や文化を継承できる」と大渕隆・スカウトディレクター。
鎌ケ谷で学び、鍛えられた選手たちがシーズンの最大11.5差、日本シリーズは第1戦から2連敗を覆した。
プロとして最後まで粘りを見せて戦った精神も、育成の成果の一つだろう。 (山下弘展)